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ドラマ『沈まぬ太陽』を観て。

■ホリエモンが涙した謎が解けた

 WOWOW開局25周年記念作品として製作されたドラマ『沈まぬ太陽』全20話を観てみた。
 『沈まぬ太陽』と言えば、故山崎豊子氏の「最高傑作」との呼び声も高い小説だが、何年か前にホリエモンが獄中で読んで涙した小説としても話題になった作品だ。私はこれまで小説も未読で、渡辺 謙が主演した映画の方も観ていなかったので、なぜ、ホリエモンが涙したのか謎だったのだが、本作を観て、ああなるほどな…と納得した。

 おそらく、堀江氏は、信念を貫くことで島流しの如く海外の僻地をたらい回しにされる主人公の不器用な生き方に、自らの姿をオーバーラップしたのだろうと思う。信念を貫いたことで執行猶予を蹴り、刑務所に収監されることになったホリエモンの姿は、本ドラマの主人公、恩地 元と確かにダブって見えた。間違っていたら申し訳ないが、多分そういうことなのだろうと思う。

■『沈まぬ太陽』に見る過労自殺問題の因子

 内容的には、日航機の墜落事故をモチーフに描かれたドラマなので、時代的にも昭和の空気が感じ取れる作品だった。“元アカ”の労働組合委員長が主人公という設定は、現代人の感覚からすると時代遅れな感じもするのだが、実直で正義感の強い主人公に感情移入することができたので、徐々に違和感は無くなり、面白く観ることができた。

 経営陣から危険分子として疎まれている主人公は「石の上にも3年」ならぬ「石の上にも10年」間、海外僻地への赴任辞令を何度も言い渡されるのだが、それでも辞めない。
 これも、現代人の感覚からすると、「普通、辞めるよね」とか「なぜ辞めないの?」と思ってしまうのだが、懲罰的な左遷人事に耐える主人公の姿は、どこか隷属的な感じがして妙な違和感を覚えた。
 昭和的価値観の為せる業なのか、大企業だから為せる業なのか、「辞令を断るとクビになる」という台詞が印象的だったが、本ドラマの主人公の場合、責任感と忍耐力のある硬派な人物なので、嫌でも辞めるわけにはいかないということになってしまう。
 少し毛色が違うとはいえ、責任感が有り過ぎるために過労死や過労自殺に至るビジネスマンは案外多いのかもしれない。現代の日本社会にも残存している過労自殺問題を考える意味でも参考になるドラマだった。

■小説の映像化における理想と現実

 WOWOWのオリジナルドラマは、通常5〜6話のものが多く、1冊の小説のテレビドラマ化に4〜5時間程度を費やしている。小説の分量に応じて臨機応変にじっくり製作できるため、小説の内容を端折らずに忠実に描くことができる。このメリットは実に大きい。小説を実写化した映画は、内容を端折り過ぎて、原作のイメージを損ないブーイングが出ることが多々あるが、これは物理的に仕方のないことなのだろうと思う。1冊の小説を120分(〜150分)程度の映画に収めるのは土台無理がある。渡辺 謙版の『沈まぬ太陽』は200分もある長編映画だが、それでもかなり端折られているらしい。映画版の『沈まぬ太陽』では前編のアフリカ篇があまり描かれていないらしいが、「沈まぬ太陽」という言葉の意味を実感するには、アフリカ篇を詳細に描かない限り、難しいのではないかと思う。

 長編小説の映画化(最近の例で言えば『64-ロクヨン』)となると、前編・後編に分かれたりするが、本作『沈まぬ太陽』のような3篇もある長編小説を映画化するにはハリウッドのヤングアダルト小説の映画化のように前編・中編・後編に分ける位が理想なのだろうと思う。
 しかし、SFアクション映画でもない限り、流石にそれは難しい。映画料金を考えても、2本立て、3本立てとなると、値が嵩むので観客動員数も伸びなくなる可能性がある。映画3本で鑑賞料5000円以上もかかるとなると、観る気を失くしてしまう人も出てくる。映画というのは、投資ビジネスでもあるので、そこまでのリスクを冒して投資資金が回収できなければ映画化する意味が無くなってしまう。

 今後、小説の映像化の主流は、映画ではなくテレビドラマに移っていくのではないかと思う。映画には映画の良さがあるとはいえ、物理(時間)的な制約が有るため、小説の微妙なニュアンスを伝えきれず内容自体も中途半端に成りがちだ。

 しかし、本作のような骨太なドラマは、民放のドラマ枠ではスポンサーの目を気にして製作できないだろうし、放送もできない。WOWOWのようなスポンサーに依存しない民間企業であればこそ製作できるドラマだと言える。
 昨年話題になった民放の『下町ロケット』も元々はWOWOWで製作されたドラマだし、他にも見応えのあるドラマが多くある。

 個人的に観たオススメドラマを新しい順に書いておくと、

 『誤断』(主演:玉山鉄二)
 『テミスの求刑』(主演:仲 里依紗)
 『天使のナイフ』(主演:小出恵介)
 『株価暴落』(主演:織田裕二)
 『マグマ』(主演:尾野真千子)
 『空飛ぶタイヤ』(主演:仲村トオル)
 『パンドラ』(主演:三上博史)

 最後に話を『沈まぬ太陽』に戻そう。本ドラマはWOWOWドラマの集大成的なドラマであり、WOWOWオールスターキャストとも言える豪華なドラマに仕上がっている。民放では観れない骨太で重厚な社会派ドラマであることはもとより、勇ましく荘厳なメインテーマ曲が実に素晴らしい。
 この年末年始に多くの人に観ていただきたいと思う。

 − 沈まぬ太陽 MAIN TITLEを聴きながら −

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