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サンフランシスコの明と暗、ホームレスが増加する理由  - 土方細秩子

 今年も米ハウジング・都市開発省による年間のホームレスレポートが議会に提出された。それによると2016年のどこかの時点でホームレスだった人口は54万9928人。うちシェルターに入っていない、いわゆる路上生活者は32%を占める。

 ホームレス人口そのものは緩やかな減少傾向にある。2007年の不況時には年間のホームレスは64万7258人だったから、9年間で15%減少したことになる。しかし問題は大都市圏ではむしろ増加している、という点だ。米国のホームレスは1位がカリフォルニア州の11万8142人、2位がニューヨーク州の8万6352人、3位がフロリダ州の3万3559人。この3つの州ではホームレスが全人口の6%以上となっている。

 最大の問題はやはりカリフォルニア州だ。ここではシェルターに入っていないホームレスが66.4%と圧倒的多数となる。同じくホームレス人口の多いニューヨークではシェルターが充実しているため4.2%にとどまっているだけに、この差は大きい。しかもカリフォルニア州のホームレスは前年比で2404人の増加となっている。

 都市別ではニューヨーク市が7万3523人と最も多く、次がロサンゼルス市の4万3854人。トップ10にはこのほかサンディエゴ、サンフランシスコ、サンノゼとカリフォルニア州の都市が4つも入る。

 カリフォルニア州のホームレス増加が最も実感できるのはサンフランシスコ市だ。同市のユニオン・スクエアは一流ホテル、ショッピングセンター、ビジネス街などが融合した同市でも指折りの繁華街だが、ホームレスの数が半端ではない。ほとんど1ブロックごとにホームレスに遭遇、この辺りを歩いていると1日に最低5回は金銭やタバコをねだられたり、ファストフード店の前では「何か食べ物を買ってほしい」と頼まれる。ロサンゼルスも確かにホームレスは多いが、スキッド・ロウと呼ばれる地域に集中しており、ビジネス街でこれほどのホームレスに遭遇することはない。

 筆者はユニオンスクエア近辺のホテルに11月初旬滞在したが、ほとんどのホテルでドアマンを置く、もしくは客の出入りのたびに入口をロックする、などしてホームレスの侵入を防いでいた。「一度中に入られると追い出すのはとても難しい」とホテルフロントは語っていた。

 もちろん市当局でも手をこまねいているわけではない。同市広報によると、サンフランシスコ市は年間に2億4100万ドルのホームレス予算を持ち、市の8つの部局、76の非営利市民団体などがこの問題に対処している。それでもサンフランシスコのホームレスが目立つのは、市の面積対ホームレスの比率にある。1平方スクエア(1.6X1.6キロ)あたりのホームレス人口は149人と、ロサンゼルスの114人を上回る。

 この実情に、今年2月シリコンバレーの企業家らが声をあげた。「きちんと働き高収入を得ている人々は、市に居住する権利がある。彼らは教育を受け、熱心に働きその地位を得た。そうした人々が仕事の行き帰りごとにホームレスの苦しむ姿を目にしなくてはならないのは公正ではない」(Commando.io社CEOジャスティン・ケラー氏)。

 この声明の裏にあるのは、「高収入のIT企業が家賃を釣り上げた結果、もともと市内で賃貸をしていた人々が家賃を払えなくなりホームレス化している」という批判だ。初任給でも年収10万ドル平均、というシリコンバレーの労働者たちは、こと住宅問題では批判の的となる。彼らの多くがサンフランシスコに居住、その通勤には有名なグーグル・バスなど、企業が「エアコン、WiFi完備で無料」の交通手段を用意している。怒れる市民がグーグルバスの前にバリケードを張って抗議活動を行ったのも記憶に新しい。  

世帯収入を上回る一人当たりのホームレス支援資金

 実際、市では地価高騰のためホームレスシェルターを閉鎖せざるを得ない事態も起きている。同市によると1人のホームレスをシェルター、食事、職業訓練などで支えるために市が支出する額は年間8万ドルにも及ぶという。これはサンフランシスコ市の平均世帯収入を上回る数字だ。

 今回の大統領選挙とともに行われた住民投票でサンフランシスコ市は「路上テントの撤廃」を賛成多数で可決した。しかしホームレス保護団体からは「十分なシェルターがない状況でホームレスのテントを除去するのは人道に悖る行為」と批判の声が上がっている。

 ホームレス対策は全米の大都市にとって頭の痛い問題だ。しかし予算と現実との兼ね合いがあり、解決策はない。さらに高騰するサンフランシスコの地価(同市の平均的な賃貸価格は1ベッドルームで2600ドルを超える)が問題をさらに複雑にしている。

 筆者はユニオンスクエア近くのドラッグストアで商品価格をチェックしたが、ここではタバコ1箱が12ドルで売られていた。同じ銘柄でロサンゼルスでは6ドル前後だ。なぜこんなに高いのか、と聞くと「家賃が高いからそれくらい取らないと商売できない」という返答だった。他の商品も推して知るべし、だ。シリコンバレーの高所得者には問題ないのかもしれないが、サンフランシスコは庶民の住める場所ではなくなりつつあるのかもしれない。

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