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20万社超!「パナマ文書」に日本企業はどこまで関わっているか

呉 承鎬=構成

欧米で常識化する「税金逃れ」の手口

 「パナマ文書」の流出で、企業や富裕層による国際的な税金逃れの手口に注目が集まっています。そこで重要なのが「タックスヘイブン」です。タックスヘイブンとは、法人税や所得税が低い、あるいは、まったくない国や地域のこと。ヘイブンとは「回避地(haven)」を意味します。南国の楽園を想起する人もいますが、「天国(heaven)」ではありません。

 実は、タックスヘイブンへの入り口は先進国にあります。たとえばイギリスの金融街シティはグローバルな金融取引を呼び込む目的で規制緩和や減税措置がとられた行政特区です。また、アメリカのデラウェア州やネバダ州も会社法などが企業にとって有利に定められています。事実上ウォール街とシティはタックスヘイブンへの世界最大の入り口です。

 その特徴は、企業活動の実体がない「ペーパーカンパニー」が多数あることです。架空の取引を通じてペーパーカンパニーに利益を移すことで、本国での利益を少なくみせかけ、法人税を逃れることが狙いです。

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タックスヘイブンは富裕層の「税金逃れ」に悪用されている

 「パナマ文書」に20万社超という膨大な数の企業名があったのは、ビジネスを海外展開していれば、脱税の意思の有無にかかわらず、タックスヘイブンとのやりとりを避けられないからです。たとえば取引相手からタックスヘイブンの銀行口座を振込先に指定されれば、それを断ることは難しいでしょう。そのため企業規模の大小はあまり関係がありません。売上高10億円程度の企業でも海外取引があれば、タックスヘイブンとの関わりを完全に避けるのは至難です。

 こうした租税回避は、コスト削減の観点から、株主から「なぜやらないのか」と求められることもあります。その傾向が最も顕著なのが株主至上主義の国アメリカです。

 非営利団体CTJ(Citizens for Tax Justice)が2008年から12年に継続して収益性が高かった米国の大企業288社を調査したところ、それらの企業の法人税の実質負担率は19.4%でした。調査時点でのアメリカの法人税の法定税率は35%ですから、多くの企業が税務上の優遇策だけでなく租税回避を行っています。なかでもボーイングやGEなど26社は、5年間まったく法人税を支払っていなかったのです。

 租税回避は違法とは限りません。2010年、東京国税局は、日本IBMの持ち株会社が企業グループ内の損益を合算する制度を利用して約4000億円の申告漏れを行ったと指摘しました。ところが、今年2月、最高裁で国の敗訴が確定し、課税処分は取り消されました。課税の取り消しが1200億円にも及ぶ国側の敗訴は異例です。

 国税当局と当事者の2項対立で考えても問題は解決しません。いまや租税回避を検討しない企業は、市場から「株主還元を怠っている」と非難されます。しかし国家が税収不足で公共サービスを提供しなければ、満足な企業活動は行えません。多くの企業はその点を理解しているはずですが、経営のためには税金逃れをやめられないのです。

 グローバル企業に各国が個別に対抗策を講じても限界があります。「国際課税」が必要です。いまこそ政治家のリーダーシップが求められています。

深見浩一郎(ふかみ・こういちろう)
公認会計士・税理士。1956年生まれ。著書に『<税金逃れ>の衝撃 国家を蝕む脱法者たち』(講談社現代新書)、『IFRSの会計 「国際会計基準の潮流を読む」』(光文社新書)がある。

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