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トランプ・ラリーはひとまず終了 ―最もインパクトを受けた日本経済(金融日記 Weekly 2016/11/18-11/25)

TOPIX: 1464.53, +2.5% (1w), -5.3% (YTD)
Nikkei225: 18381.22, +2.3% (1w), -3.4% (YTD)
S&P500: 2213.35, +1.4% (1w), +8.3% (YTD)
USD/JPY: 113.06, +2.0% (1w), -5.9% (YTD)
EUR/JPY: 119.75, +1.9% (1w), -8.3% (YTD)
Oil(WTI Futures): 46.06, +0.8% (1w), +24.4% (YTD)

  11月第4週の日経平均株価は週間で2.3%高の1万8381円と3週連続で上昇。日経平均株価は7連騰、TOPIXは11連騰である。為替相場も円が主要通貨に対して更に下げ、1ドル=111円前後だったドル円相場は113円台まで円安が進んだ。まさにトランプ・ラリーであり、じつはこのマクロ経済環境の変化から最も大きなインパクトを受けたのが日本経済であった。
 このことは直感的にはわかりにくいが、教科書的なマクロ経済学の枠組みの中で綺麗に説明できる。

●トランプ・リスクに備えよ!(金融日記 Weekly 2016/10/28-11/4)
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/cat_50027977.html

●トランプ・ラリーに飛び乗れ!(金融日記 Weekly 2016/11/4-11/11)
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52095224.html

●ドル金利上昇で息を吹き返したアベノミクス(金融日記 Weekly 2016/11/11-11/18)
http://blog.livedoor.jp/kazu_fujisawa/archives/52095756.html

 トランプ氏が当確するまでは、市場は暴言を繰り返す彼の政策を見極めかねていた。また、当選確率もさほど高いものとは思っていなかった。つまり、トランプ大統領誕生は、単に大きなリスク要因として認識されていた。あからさまな保護主義を打ち出し、日本や中国の通貨が安すぎることを非難した。よって、トランプ氏の経済政策は、どちらかというとドル安、株安につながると解釈されていたが、実際のところ、大多数の市場参加者は深く考えていたわけではなかった。

 しかし、トランプ氏が当確確実となると、市場参加者たちの目が突如として覚めることになった。メキシコとの国境に壁を作る、イスラム教徒の入国を禁止するなどは、とうてい実現されない。実現可能な政策として残るのは、大規模減税、インフラ投資などの財政政策である。また、減税を志向する共和党が上院・下院とも過半数を取り、プロビジネスな政権になると期待されるようになった。この期待は、当確後に速やかに行われたトランプ氏の受諾演説で決定的となった。これまでの暴言が嘘のように、アメリカ国民と一緒になって国を良くしていきたいと真摯に語り、まともな好人物という印象を世界の投資家に与えたのだ。ここからの市場の動きは、まさに教科書どおりであった。

 ポイントは3つだ。まずは、トランプ大統領の拡張的な財政政策。次にFRBの金融引き締め。そして、主要国で最も低い日本の経済成長率である。これらですべてが綺麗に説明できる。

 トランプ大統領は国債を発行して(市場からドルを吸収して)減税やインフラ投資をすることになる。これはドル高要因だ。さらに、FRBは利上げのタイミングを見計らっており量的緩和の出口戦略に動いている。トランプ氏もウォール街を利する金融緩和をたびたび非難していたので、大統領就任後もFRBの金融引締めの方向は変わらないだろう。つまり、中央銀行もドルを吸収するのであり、これもドル高要因だ。財政政策、金融政策ともに、強烈なドル高を示唆していた。将来の資金需要の見通しからドル金利が急上昇し、教科書通りにドル高になったのだ。

 そして、ドル金利が上昇することで、一番助かるのはじつは日本経済なのだ。なぜならば、日本の経済成長率は主要国の中で最低であるからだ。日本の成長率が低いのは構造改革が進まないことと少子高齢化が原因である。いずれにしても、日本は成長率が低いことで、ずっと苦しんできた。金融緩和は金利を成長率より下げることであるが、成長率がゼロ近傍の日本経済は、ゼロ金利の制約で恒常的に意図せざる金融引締めになっており、20年以上もデフレ経済に苦しんでいる。また、グローバル化が進んだ経済では、金利は他国との相対的なものである。ドルの金利が低いということは、日本にさらなるデフレ圧力を加えることになる。

 アメリカの金利が急激に上昇したことは、日本経済にとってまさに恵みの雨となろう。円の水準を決める主要ドライバーでもある日米金利差が拡大し、急速に円安が進んだのだ。世界最大の経済であるアメリカのドルとの比較で、ゼロ金利制約で最も苦しんでいた円が、主要通貨の中で最も下落したのは偶然ではないのだ。

 さらに、開放経済ではマンデル=フレミング・モデルにより財政政策は効きにくいとされている。財政政策の原資は国債発行で集められるが、その際に流通する通貨が吸収されるため自国通貨が上昇してしまい、景気浮揚効果が打ち消されるからだ。さらに、FRBは金融引締めの方向である。マクロ経済学の教科書に従えば、トランプ氏の財政政策の景気浮揚効果はさらに世界に漏れ出し、日本もその恩恵を受けることになるのだ。これは日本株の上昇要因となろう。

 以上のことが、トランプ氏が当確したあとに、世界の市場で起こったことであり、すでに十分に織り込まれたと言っていいだろう。この二週間あまりは、トランプ大統領誕生がトリガーとなった世界的なマクロ経済環境のシフトを消化する時間であったのだ。
 そして、今週からは、再び相場は方向感を失うことになるということである。良くも悪くも、トランプ次期大統領のちょっとした発言に世界の投資家が注目し、彼の一挙手一投足に相場は振り回されることになりそうだ。

『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』 http://goo.gl/0xv1Q

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