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「グアム戦跡完全ガイド」を読む

 この夏に出た新刊「グアム戦跡完全ガイド」(小西誠・社会批評社)を読みました。「観光案内にない戦争の傷跡」と副題がついています。日本から一番近いアメリカの観光地として知られているグアムですが、サイパン、テニアンのすぐ近くにある島で、戦闘もほぼ同時です。この本は、先に紹介した同じ著者と出版社による「サイパン&テニアン戦跡完全ガイド・玉砕と自決の島を歩く」の姉妹編なのです。

 著者が実際に現地調査したガイドブックですから、案内は具体的で写真も豊富です。沖縄のアメリカ軍基地の移転先としても気になる島であり、その実態を知っておくことは、今後の日米関係を考える上でも有益と思いました。
 
 グアムは古くはチャモロ人の島であり、最初に植民地化したのはスペインでした。それが米西戦争の結果としてアメリカ領となり基地が置かれるのですが、現地人はアメリカの統治になじんでいました。太平洋戦争が勃発すると、グアムは最初の攻撃目標として日本軍の攻撃を受け、非力の守備隊はほとんど抵抗せずに降伏しました。そして島の名も「大宮島」と変えられたのです。

 つまりグアムはマリアナ諸島の中でも、唯一敵性住民のいる島として、日本軍の「皇民化」政策による支配を受けることになったのです。日本軍が占領していた期間は戦時下の2年半でしたから、食料の徴発や陣地構築の使役など、住民は大きな犠牲を強いられました。米軍上陸の間際には、陣地の秘密を守るためとして、組織的な住民虐殺も行われたとのことです。そのチャモロ人が、今も島の人口の半分近くを占めています。

 グアム島での戦闘はサイパン、テニアンと酷似していますが、マリアナ放棄が決定した後だけに、さらに絶望的でした。水際作戦の壊滅から始まってバンザイ突撃で終るまで、日米軍の戦死者数の比率は、ほぼ20対1でした。

 総じてマリアナ諸島には、現地自治体とアメリカの政策もあって、戦跡が比較的よく保存されています。確かにここで戦争があったことを伝える資料として、もっと若い世代に見て欲しいと著者は語っています。観光地のすぐ横に、それらは眠っているのですから。

 さらに、今のグアムは基地拡張工事に沸いているとのことです。原子力空母や原潜の基地であり、強襲占領作戦の兵站基地でもあります。もちろんそれらがすべての現地人に歓迎されているわけではありません。グアムと沖縄の未来は、アメリカの世界支配戦略からの自由という、共通の課題で結ばれているのです。

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