記事

トランプ氏の勝利 8年前のオバマ氏当選と「本質的に変わっていない」

出張先の中国・重慶で9日、最初にその情報に接したとき、文字通り腰を抜かすほど驚いた。とても暗い気分になった。米国大統領選挙でのトランプ氏の勝利のことだ。国際関係や世界経済に甚大な影響が生じ、世界が一変してしまうと心底心配した。

 

ただ、少し時間がたち、冷静になって思うが、事の本質は変わっていない気がしている。8年前のオバマ氏の勝利も今回のトランプ氏の圧勝も、本質的には大差ない。要は、最近の大統領は、大衆受けを狙って実現できないことを夢のように語って当選はするが、次第に現実的になる、というだけのことである。

核廃絶を情熱的に訴え、ノーベル平和賞まで取ったオバマ氏だが、8年の任期の間に、大国間で核廃絶に向けた画期的な合意ができたわけではなく、アメリカ一国ですら「核のない世界」からはほど遠い。政策実現力には疑問符がつくが、広島訪問や印象的なスピーチなど、パフォーマンスはとても上手だ。

 

そして、手法やターゲット層は異なるが、やはり、パフォーマーとしての能力がとても高いのがトランプ氏である。オバマ氏の「核廃絶」同様、トランプ氏の移民排斥なども、徐々に「現実化」していくだけのことであろう。現に、エッジの立った諸施策案もかなりトーンダウンしている印象だ。

そう。本質は変わってない。「多数を取る」ため、大衆の感情を刺激すべく、「ウソも方便」と派手な言動、パフォーマンスに走る候補が勝つというだけだ。媒体(メディア)の主流が、テレビからネットに移行しつつある中、この傾向が強まり、例えば、かつてのブッシュ氏(父)のような「正直で」「真面目な」感じの候補は勝ちにくくなったのが現実だ。

 

あえてオバマ氏とトランプ氏の違いを書けば、オバマ氏は人間の「美しい感情」を刺激して夢を見させる傾向が強いが、トランプ氏は「ヒト(や外国)のせいにする」という汚い感情を刺激する。そして残酷な現実だが、怒りの感情を引き出す方が、より直接的、効果的であることは自明であり、この流れは当分変わりそうもない。

 

民主主義の未来に冷静に絶望しつつ、ふと、バスの窓から外を眺めると、とても美しい夜景が広がっている。この長江に映る重慶の夜景は、香港や上海よりも、あるいはニューヨークよりも美しいのではないか。滝の流れを表現するビルもあれば、電気の明滅が花火のように見えるビルもある。各ビルが個性を発揮しながらも全体の調和が取れていて、すこぶる美しい。各ビルの宣伝はほぼ皆無だ。確証はないが、同行した中国人は「恐らく、政府の指導ですよ」と言う。「電気代をかけて、企業宣伝なしの電飾パフォーマンスを自主的にやるわけがない」とのこと。思わず、全体主義の美しい側面に少しだけひかれそうになる。「民」の字は、字源によると、斜めの線が針を示すなど、目をつぶされた奴隷を指すそうだ。大衆の目を覆って「指導」する「人民共和国」で夜景を眺めながら、民主主義を悲観するのもわれながら滑稽だ。

その共産党も、債務爆弾の破裂などでひとたび恐慌になれば、トランプ氏よろしく、「人のせいにする」汚い感情への訴えをして目くらましを図るであろう。対外的な安全保障の危機をあおり立てるなどして。その際、真っ先に標的になる可能性が高いのがわが日本である。

 

そのとき、中国の人民が、まさに目をつぶされた奴隷的な状態で扇動されるのか、目を見開いて現実を見つめるのか。一人一人が社会を引き受ける覚悟のある選良として、ルソーの言うところの共和主義的に「人民共和国」社会を支えるのか。

 

ふと思い出したが、トランプ氏は「共和」党であった。

あわせて読みたい

「ドナルド・トランプ」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    朝日が仏大統領発言でっち上げか

    西村博之/ひろゆき

  2. 2

    内閣改造で消えた小池・野田新党

    PRESIDENT Online

  3. 3

    米国が12月以降に北朝鮮を攻撃か

    高英起

  4. 4

    信用なくてもツキはある安倍首相

    文春オンライン

  5. 5

    議員秘書が明かす蓮舫氏の悪評

    fujipon

  6. 6

    「米軍に勝てない」北幹部が動揺

    高英起

  7. 7

    姜尚中氏語る「戦争回避」の道筋

    亀松太郎

  8. 8

    小林麻耶が海老蔵の家を出た事情

    NEWSポストセブン

  9. 9

    安室奈美恵の引退に衝撃受けるな

    常見陽平

  10. 10

    アラフィフの後悔 1位は「勉強」

    キャリコネニュース

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。