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「吉野林業は世界一」は危険な言葉

先日、奈良森林総合監理士会の主催で、「NEXT奈良の森」というイベントが開かれた。

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その基調講演に、泉英二・愛媛大学副学長が立った。テーマは、「吉野林業の発展過程に学ぶこれからの吉野林業」。

内容は、前降りの世界文明発展理論が半分くらい占めたのだが(^o^)、後半の吉野林業のところで幾度も繰り返されたのは、「吉野林業は世界一」という言葉である。

江戸時代という経済社会の停滞期に吉野林業は精緻なシステムを作り上げ、決して街の大資本に飲み込まれることなく、むしろ手玉に取りつつ、山村民が利益を守った、また森林環境も持続的に維持してきた……というのである。少なくても18世紀19世紀の吉野林業は、世界的に見ても類を見ない林業として自慢できるという。

私も長年吉野林業に触れてきて、また学んできたことと比べても大きなずれはなく、吉野に生れた世界にも稀で精緻な林業システムの意義は納得している。そして、持続的な林業経営を考えるうえで、かつての吉野システムを探ると大いにヒントになる。

が、同時に危険な言葉だと感じる。

というのは、私が学生時代から何かと「日本の林業は世界一」的な言われ方をしてきて、その源流が吉野林業だった。私もそれを信じていことがあったからである。

が、残念ながら吉野を離れると、まったく別の林業に出会う。そして、その内容は「システムのない林業」である。その場その場の都合で動く林業。吉野以外はほとんど同じだった。

吉野は、決して日本林業の代表ではなく、孤立した峰、特異で孤独な林業地ではなかったか。江戸時代から明治、そして昭和まで吉野を見本にしようと多くの視察と研究が行われ、政策的な誘導も行われたが、どこも真似することはできなかった。

個別に育林技術がどうの、搬送技術やルートがどうの、と言えば頑張った地域や人は存在するのだが、地域経済と結びついて十分に機能したシステムにはなれなかった。

もっとも吉野自体も、戦後は巨大な社会のパラダイムの転換の中で長年築いたシステムが崩れていき、今はさんさんたる有り様だ。崩れた当初は、逆に木材バブルを生み出して大儲けしたのだが、それが改革気運さえ潰してしまった。

現在の日本林業は世界的に見ても遅れている、と言わざるを得ない。

それなのに「吉野林業は世界一」が「日本林業は優れている」に転用され、いまだに一人歩きしている。あげくに、日本の木工技術が優れているだの、日本の伝統建築は世界一だの、何の裏付けもなく語られている。なんかこの手の「日本スゴイ」という言葉は、聞いているとミジメさが漂う

私自身は、もはや林業自体が必要かどうかさえ疑問に感じている。

頭をひねって林業を持続的にしようとガラス細工のようなシステムを考えるのではなく、今そこに木があるうちは伐って使い、なくなったら使うのをあきらめて、自然が森を取り戻すまで禁伐にする……という単純でおバカなシステムに頼るのが人間には似合っているのではないか? だいたい森林の歴史を追うと、世界中でずっとそんな繰り返しだったのだから。

精緻なシステムは、必ず壊れる。単純なシステムほど強い。人の時間に樹木を合わせようとするのではなく、樹木の時間に人が隷属すればよいのだ。

かつては木材というマテリアルは最重要だったが、今は代替品がいろいろあるから、消費者はそんなに困らないだろう。

……とまあ、「持続的開発」を唱える世間に喧嘩を売ってみたくなったのだった(笑)。

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