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韓国の大学入試騒ぎに見る「学歴偏重社会」 - 崔 碩栄

秋の風物詩「受験生緊急護送作戦」 受験中は飛行機着陸禁止?

 11月17日、韓国では日本の大学入試センター試験にあたる「修学能力試験」が実施された。一般的に「修能」と呼ばれるこの試験は、韓国で小学校から高校までの過程を修了した学生が12年間学んだすべての知識を注ぐ「最後の関門」であり、受験日は「決戦」の日でもある。

 日本以上の学歴社会といわれる韓国で修学能力試験の当日に見られる光景は、外国人の目には不思議に映るに違いない。例えば試験に遅刻しそうな学生を乗せてサイレンを鳴らしながら試験場まで疾走する警察の白バイやパトカー、受験生が試験場に移動する時間帯に合わせて増便運行する電車、交通の混雑を避けるため出勤時間を午前10時に変更する役所などがそれである。

 中でも驚かされるのは飛行機の着陸まで「一時停止」させるということではないだろうか。修学能力試験には英語のリスニングテストが含まれているが、飛行機の離着陸時に発生する騒音が受験生に支障を与えるという理由から、リスニングテストが行われる約30分間は、都心に近い空港や軍空港の離着陸が禁止される。外国人から見ると、「そこまでやるか?」と思われるかも知れないが、これらの姿は数十年前から完全に韓国の風物詩として定着してしまった。

一日で人生が決まる、根強い学歴偏重社会

 もちろん、他国においても大学入学試験というのは大学受験生にとって非常に重要な意味を持つに違いない。それにしても韓国の入試騒ぎは異常と言えるレベルである。なぜか?理由は単純だ。出身大学、つまり学歴がすべてを決める韓国で修学能力試験日は、まさに「人生が決まる一日」であるからだ。韓国で学歴は就職、収入、結婚において非常にメリットが多いため、それが決まる入試には受験生も家族もみんな必死になる。受験生にとってそのプレッシャーはかなり重く、毎年入試に失敗した受験生が自殺したというニュースが集中するのもこの時期だ。

 もちろん、大学に進学しなくても、自分の才能を活かし各分野で成功している若者もいる。そして、一流大学の卒業ではないが優れた実力で認められて成功する人もいる。政府や教育界でも色々な改革を行い、最近では「成績」ではなく「適性」と「能力」に合わせたコース、専攻を選択するように誘導して、ある程度の成果を得ている。 にもかかわらず毎年このような騒動が起こるということは、まだそれらはレアケースであって大学という看板が韓国社会で成功するための最も重要な「道具」であるという現実を韓国人はよく分かっているからである。

「甘やかしすぎ」との批判も 受験生なら何でも許す社会的雰囲気に疑問

 修学能力試験日の朝にパトカーや白バイを動員して、受験生を試験場まで運ぶことに対する批判論もある。「時間に合わせて試験場に行くのも試験の一部である」、「責任というのを学ぶべき学生を甘やかしてる」といった意見である。いつまでも甘やかしていたら、まだ若い学生たちは政府や社会が自分たちの面倒をみることを当たり前だと思うようになり、大人になっても全てを政府や社会に頼る人間、あるいは、何でも政府のせいにする大人になりかねないと懸念する声だ。

 このような自己責任論が少なくないにもかかわらず、受験生の「甘え」を容認しているのは、やはりまだ韓国社会で「大学」という看板がまだ大きな力を発揮していることを物語っている。
ところで、TVニュースを見ていると、警察の白バイの後部座席の学生がヘルメットを着用しないまま走行している姿も見られる。交通法を厳しく遵守しなければならない警察が「受験生護送」という「目的」のため法律や安全という「ルール」を無視すること、そして社会的にそれを容認することが正しいと思っているのだろうか。見る度になさけなく思う。「目的」(利益)のために「ルール」(安全)を無視して大きな犠牲を払った「セウォル号沈没事件」の悲劇から韓国が学んだのは一体何だったのか。

「これぞ最高の翻訳!」韓国ネットユーザーが感心した翻訳「私は人生を失った(I lost my life)」

 

 今年の秋、Googleは翻訳システムにAI(人工知能)機能を適用、精度を大幅に向上させたバージョンを発表し話題となったが、その翻訳システムを利用した翻訳文が最近韓国で話題になっている。それはまさに「修学能力試験ボロボロだった」という韓国語を入力して、英語で変えれば「私は人生を失った」(I lost my life)という文章に翻訳されるというものである。

 Googleの翻訳システムはユーザーがより正確な翻訳を提案し、翻訳システムがそれを確認、学習する機能があり、誰かが人為的にそのような結果が出るようにいたずらをした可能性もある。しかし、入試に失敗したことを「私は人生を失った」に翻訳したのは、韓国社会の背景と雰囲気まで熟知した人にしかできない最高の翻訳だと多くの韓国人たちの共感を得ている。他の国であれば、「大げさな表現」、「機械翻訳もまだまだ」という評価を受けるかもしれないが、韓国で絶賛を受けているのは、韓国社会の特異さの問題と嘆くべきか、それとも素直にGoogleの人工知能を賞賛すべきだろうか。

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