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安倍首相の側近が語る「トランプはビジネスマン」説の意味〜田原総一朗インタビュー

米国の大統領選は、大方の予想に反して、共和党のドナルド・トランプ候補が民主党のヒラリー・クリントン候補に勝利した。選挙戦で過激な発言を繰り返してきたトランプ氏が当選したことで、世界に激震が走った。「トランプ大統領」の誕生は世界や日本にどのような影響を与えるのだろうか。田原総一朗さんに聞いた。【田野幸伸(編集部)、亀松太郎】

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■「在日米軍の引き上げはない」


トランプが選挙戦で打ち出した公約は、一言で言えば、経済面では「グローバリズム」に反対し、外交面では「世界の警察」をやめるというものだ。トランプは「アメリカを変える」と言った。その主張に、多くのアメリカ人が乗ったということだ。

グローバリズムの影響で、アメリカ社会の格差は拡大している。生活に苦しむアメリカの白人中間層が変化を期待して、トランプに投票した。マスコミが把握しきれなかった「隠れトランプ支持者」たちが、トランプを大統領の座に押し上げた。

問題は「トランプ後の世界」がどうなるか。これには2つの可能性がある。

1つは、トランプが掲げてきた「グローバリズムに反対する」という公約をそのまま実行し、アメリカが保護貿易に傾斜していくという方向だ。

トランプはこれまで「TPPをやめる」と宣言し、中国からの輸出に対して大幅な関税をかけるべきだと主張。保護貿易を強く打ち出す姿勢を示してきた。もしその公約が本当に実行されれば、世界経済は大きな混乱に陥る可能性がある。

だが、トランプはそこまで極端な政策を実施しないのではないかという見方もある。トランプの側近が来日したとき、自民党の幹部が会談した。その幹部によると「トランプはビジネスマン」というのだ。

不動産王として知られるトランプはやり手のビジネスマンだから、交渉術に長けている。最初は極端なことを言っておいて、その後、現実的な交渉を仕掛けてくるのではないか、というわけだ。

また、ビジネスの世界で生きてきた人間なので、TPPのような多国間協議は苦手で、二国間協議を好むのだという。トランプがTPPに反対するのは、二国間協議でやりたいからだ、と。そう考えると、TPPも交渉の余地があるのではないかという見方がある。

もう1つ、日米同盟の行方も気になるところだ。この点、トランプは、アメリカの負担を軽減するために、日本から駐留米軍を引き上げるべきだという考えを示したことがある。

しかし、自民党の幹部によれば「それはない」ということだ。

実は、以前のトランプは、日本が駐留米軍のために多額の「思いやり予算」を出していることを知らなかったらしい。ところが、現在は日本が費用を負担していることを知っているので、「在日米軍を引き上げる」とか「日本に駐留米軍の費用をもっと出せ」とは言わないだろう、という見方だ。

■トランプは日露関係にどんな影響を与えるか


外交といえば、どうやらトランプは、ロシアのプーチン大統領と気が合いそうだ。トランプは、プーチンについて「オバマよりも指導力がある」と言っており、ロシアがクリミア半島を自分の範疇に入れたことについても認める姿勢を示しているからだ。

では、トランプと安倍首相はどうか。

大統領選の結果が出た直後、安倍首相はトランプと電話で会談した。安倍首相の側近から聞いた話では、安倍氏は気分良く話をして、「オバマよりもトランプのほうが話しやすい」と語っていたという。つまり、トランプ・安倍も化学反応が合いそうな気配がある。

そうなると、日本とロシアの今後の関係も、2つの可能性があると見ることができる。

1つは、プーチンとトランプの関係が良くなっていく結果、ロシアが日本に対して強気の姿勢を取るようになるという方向性だ。

これまでアメリカのオバマとロシアのプーチンの関係は最悪だった。ヨーロッパも、ウクライナ問題でプーチンに対して非常に批判的だった。つまりロシアは、アメリカやヨーロッパから孤立する状況に陥っていた。

その結果、プーチンは日本に接近してくる可能性が強まり、日本は対ロ交渉を進めやすくなったとみられていた。12月に日本で開催予定の安倍・プーチン会談では、北方領土問題について「ロシアが2島返還を提案してくる可能性も十分ある」と期待が高まっていたのだ。

ところが、アメリカとの関係改善によって、プーチンが強気になると、北方領土も日本の思惑通りにいかないかもしれない。そんな懸念が出てきているのだ。

もう1つの方向性は、トランプ・プーチンの関係が良くなるだけでなく、トランプ・安倍の関係も良くなって、結果として、アメリカ、ロシア、日本で「中国包囲網」を作る気運が出てくるかもしれないという見方だ。

ロシアと日本の関係については、どちらも可能性がある。12月半ばの首脳会談に向けて、国際情勢をしっかり注視していく必要があるだろう。

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