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海外MBA年収2000万円、国内MBA給与アップゼロの衝撃 - それでもなぜ、社会人たちはビジネススクールをめざすのか?

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2016年3月、「あと10年職に留まれば、1億円以上の年収が保証されている」と言われながら、早稲田大学ビジネススクール(WBS)教授を退任した戦略系コンサルファーム、ローランド・ベルガー日本法人会長の遠藤功氏。その驚くべき理由や、ビジネスリーダーがいますぐやるべきMBAと違う勉強法を『結論を言おう、日本人にMBAはいらない (角川新書)』で語られていますが、本稿では、その遠藤氏が、13年間の教員生活で体感した、アメリカと日本のMBAの違いを語ります。

海外トップスクールを出れば年収2000万円、一方、日本のビジネススクールを出ても給与アップはゼロ……。なぜ、これほどの差が生まれてしまうのでしょう?メリットがないのにどうして、社会人たちはビジネススクールをめざすのか?その知られざる構造が、明らかにされます。

飛び抜けた実績をもつハーバード・ビジネススクール

2016年3月、私は定年まで10年を残し、13年間教鞭を執った早稲田大学ビジネススクール(WBS)教授を退任した。「あと10年、職に留まれば1億円以上の年収が保証されている。どうしてそんな恵まれたポストを手放すのか」という声も聞こえたが、ビジネススクールという仕組みでは、未来のビジネスリーダーを育てることはできない、ならば去るしかない、と判断したのだ。

その経緯やMBAに代わってビジネスパーソンがいますぐやるべき本当の勉強法については、著書をぜひ、参照してほしい。本稿で私が伝えたいのは、アメリカにおけるMBAと、日本のMBAの違いだ。それらはもはや、同じMBAと呼ぶことができないほど異なるものである。まずはじめに言っておこう、アメリカのトップスクールでMBAをとれば、年収2000万円も夢ではない。一方、日本のビジネススクールでMBAをとっても、給与アップはほぼゼロだ。

米国でMBAはいまや、キャリアアップしたいビジネスパーソンにとって必須のものとなっている。米国でMBAが一般化し、それなりに認知される背景には、労働流動性の高さと熾烈な競争がある。米国においてビジネスで成功しようと思えば、転職を繰り返し、キャリアアップするのが一般的である。

よい企業でよいポストを得ることをめざし、他の人たちと「差別化」するためには、ビジネススクールでMBAを取得し、「箔をつける」ことが重要となる。評判のよいビジネススクールでMBAを取得し、自らの「市場価値」を高めなければ、チャンスさえ与えてもらえない。

  世界のトップ500企業「FT500(フィナンシャル・タイムズ・グローバル500)」(時価総額ベース、2015年)の最高経営責任者(CEO)の31%は、MBA取得者である。そして、その約半分に当たる72社のCEOは、特定のビジネススクール10校に集中している。最も多くCEOを輩出しているのは、ハーバードの22人。前年の28人からは減少しているが、それでもダントツの1位である。ハーバード・ビジネススクール(HBS)のブランドと実績は、飛び抜けている。

ハーバードに続くのは、フランスのINSEAD8人、スタンフォード、ペンシルバニア大ウォートン校各7人、コロンビア6人、シカゴ、ニューヨーク大スターン校各5人など。掃いて捨てるほどビジネススクールがある米国でも、ほんとうの経営トップに上り詰めることをめざすなら、特定のトップスクールを卒業しなければチャンスは手に入らない。

たった2年在籍しただけで、年収は一気に3倍!

だから、野心溢れる上昇志向の強いビジネスパーソンたちは、自分に多額の投資をして、評価の高いトップスクールをめざす。米国のトップスクールの学費は、日本に比べるとはるかに高額である。米国のビジネススクールトップ10(ブルームバーグ発行の雑誌『ビジネスウィーク』2010年度)の平均の学費は、10万1424ドル。日本円に換算すると、1000万円を超える。

それに対し、日本の私立大学のビジネススクールの学費は200万~400万円程度とはるかに安い。平均すれば、米国におけるトップスクールの3分の1以下だ。学費の面だけをみれば、同じMBAとはとても呼べないほど歴然とした差がある。

しかし、米国ではたとえ学費が高額でも、リターンも大きい。トップ10ビジネススクールを卒業した学生の初任給の平均は、10万8572ドル。投資をわずか1年で回収してしまうほど「市場価値」が高まるのだ。

近年評価の高いINSEADの修了生(2012年卒業)が、卒業後3年間に得た平均年間給与は、約16万7000ドルにも上る。冒頭で述べたように、MBAを取得すれば、年収2000万円が約束されているのである。

投資回収性の高さは、欧米に限らない。私が客員教授として教えていた中国の長江商学院(Cheung Kong Graduate School of Business)のフルタイムMBAの修了生は、MBA取得後6年間で給与が最大263%増加し、平均年収は70万9630元、日本円に換算すると、1000万円を超えている。

だから、トップスクールには人が殺到する。トップ10スクールの合格率はわずか16.3%。7人に1人しか合格できない「狭き門」だ。ほぼ全入に近い日本のビジネススクールとは雲泥の差である。

一般的な日本人の感覚では、1年や2年ビジネススクールに在籍し、MBAを取得しただけで、年収が2倍にも3倍にもなるというのはおかしいと思うだろう。それはそれでまっとうな感覚だと思う。しかし、飛び抜けて優秀な人材は世界中の企業が狙っている。その獲得競争がますます熾烈になっているのも、現実なのである。

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