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「キンコン西野の絵本は自分で描いてない」という批判は間違い

藤本貴之[東洋大学 准教授・博士(学術)/メディア学者]

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絵本作家として活動するキングコング・西野亮廣氏がクリエイターおよそ35人を擁して分業制で制作した新作絵本『えんとつ町のプペル』(幻冬舎)。絵本としては異例の7万部を売り上げ、しかも、その絵が1000万円で売れた、ということが話題になっている。

その一方で、分業制であることから、「1000万円で売れた絵は、自分で描いていない」「絵本の絵はほぼ他人の作品」「上手だと思ったけど、自分で描いてないと知り残念」といった批判も出ている。

しかし、絵本『えんとつ町のプペル』の制作経緯をちょっと知れば、これらの批判があまりに的を射ていない、愚かな批判であることがわかる。

まず、絵本『えんとつ町のプペル』はそもそも、企画自体が「絵本だって映画みたいにチームで作っても良いはずだ」というコンセプトのもと、「クラウンドファウンディングで広く制作資金を集め、トップクリエイターを集めて制作する」ということから始まっていることは周知のことだ。

むしろ、絵本が話題にとなった最大の理由のひとつが、その「企画」の部分にあるといっても過言ではない。例えば、西野氏は企画が走り始めた当初から、頻繁に「クラウドファウンディングで制作資金を集め、分業制で高クオリティの絵本を作る」と発言していた。分業制で絵本を作る企画が主目的と言っても良いぐらいだ。

もちろん、クラウドファウンディングで資金を集めるためには、企画に注目を集め、関心を持ってもらうことが不可欠である。西野氏も熱心に情報発信をしていたので、その経緯自体が少なからず話題となった。
(「<制作費はクラウドファンディング>キングコング西野4作目の絵本はトップクリエイターとの完全分業制」2015年6月5日 http://mediagong.jp/?p=10004

一方で、その試みに対しての批判は当初からあった。その代表的なものは、作家・岡田斗司夫氏による「ちょっと待ってちょっと待って、キングコング西野さん」2015年6月8日(http://linkis.com/www.tanteifile.com/d/RcvMu)という批判コラムだ。

岡田氏はキンコン西野氏による「分業による絵本制作」を次の様に批判していた。

1.絵本を分業制で作る試みは、すでたくさんにある。

2.乗り物や昆虫などの子ども向け図鑑は1人の作家が作る方が珍しい。

3.大手出版社が量産する「アニメっぽい絵本」は完全分業制が当たり前。

それに対する「岡田の西野批判への批判」もあった。その一発目は筆者による「岡田斗司夫さんの『キングコング西野さんのクラウドファンディングで絵本作りは間違っている』は間違っている」2015年6月9日(http://mediagong.jp/?p=10100)という記事だろう。

しかも、この岡田氏と筆者による「場外乱闘」に対して、西野氏本人もネット記事やSNSで参戦してきた(「岡田斗司夫さんはクラウドファンディングと完全分業制で絵本を作るという西野亮廣がハナについたのだ」2015年6月11日 http://mediagong.jp/?p=10147)ことも話題になった。

これら西野氏による情報発信の多くは、読んでもわかるとおり、絵本分業制のコンセプトや趣旨を説明しているだけの、炎上商法とは無縁の記事だ。

もちろん、筆者の関わったことなどは氷山の一角で、それ以外の場面・人でも多くの話題になっていた。「西野 絵本」「西野 分業」などと検索すれば、それこそ山の様に『えんとつ町のプペル』に関するニュースや情報が出てくる。

ちなみに、筆者も岡田氏も西野氏に依頼されて「場外乱闘」をしたわけでも、炎上商法な記事で自作自演をしたわけでもない。この「場外乱闘」をきっかけに岡田氏と西野氏は交流するようになったようだが、これもまったくの「初めまして」であったと聞いている。なお、筆者も岡田氏からLINEをもらったが、その後、何ら交流が進展することなくうやむやになっているがそれもご愛嬌だ。

つまり、ちょっと調べてみればわかるとおり、絵本『えんとつ町のプペル』の分業制は、西野氏の当初からの企画である。どう考えてもそれは批判の対象にはなりえないのだ。そもそも「それ自体が企画」であって、むしろ、絵本の「核」だ。しかも、第三者の場外乱闘や勝手な炎上を利用しつつ、丁寧な説明を繰り返してきた点なども抜かりがない。

絵本分業制に関しては、絵本制作やコンテンツ制作の手法論レベルで、すでに散々議論されてきたことですらある。「批判」を批判をした筆者が言うのもなんだが、岡田氏も実に鋭い批判をしていた。

むしろ今さら出てきた、「他人に描かせたのに、自分で描いたようなフリして消費者を騙している」などといった類の批判は、「ゴジラは着ぐるみなのに、本当にゴジラがいるようなフリをして消費者を騙している」といって、庵野秀明を批判しているようなものだ。

さらに言えば、「クラウドファウンディング&分業制」でなければ、ここまで注目も集まらなかったのではないか。つまり、『えんとつ町のプペル』とは、「クラウドファウンディング&分業制」という制作手法を含めて、ひとつの作品であるわけだ。

そして何よりも、これが批判や炎上(?)という形であれ話題になるということ自体、プランナーとしての西野亮廣の作戦勝ちを意味している。

なお、念のため付記するが本稿は、西野亮廣擁護を依頼されて書いたものではない。

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