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トランプ効果で日本の長期金利がプラスに転じる

 16日に10年国債の利回り(長期金利)がプラス0.005%を付けた。日本の10年債利回りがプラスとなったのは、9月21日に日銀が「長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策」を決定したことを受けて一時的に10年債利回りがプラス0.005%に跳ね上がって以来となる。

 9月21日に瞬間的にプラスに転じた10年債利回りはその後、日銀のイールドカーブコントロールの居所を探るような展開となった。長短金利操作に関して日銀は「10年物国債金利が概ね現状程度(ゼロ%程度)で推移するよう、長期国債の買入れを行う」としていたが、「概ね」ということで市場ではそれはある程度のレンジを想定しているとし、その下限を探りにいった。

 なぜ下限を探りに行ったのかといえば、日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策」ではイールドカーブコントロールとともに、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の「物価安定の目標」を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続するという「オーバーシュート型コミットメント」が加わっていたためである。

 足元の消費者物価上昇率は前年比マイナスの状態が続いており、日銀の目標値を大きく下回っている。目標達成時期も先送りせざるを得ない状況で、いずれ日銀は追加緩和をせざるをえないのではとの見方も一部にあり、金利のバイアスとしては下方に働きやすかった。その結果、10年債利回りは下がったが、マイナス0.1%が下限として意識された。その後、ゼロ%からマイナス0.1%の間でのレンジ内相場が続いた。その地合を変化させたのが、トランプ氏の米大統領選の勝利をきっかけとした米国の長期金利の上昇であった。

 米国の10年債利回りは大統領選挙前は1.8%近辺にあったが、大統領選挙でのトランプ氏の勝利を受けて、あっさりと2%を超えて上昇した。14日には一時2.3%台をつけてきた。これは欧州の債券市場にも大きな影響を与え、ドイツや英国だけでなく、イタリアやスペインなどを含めて国債の利回りが大きく上昇した。ドイツやフランス、英国の長期金利上昇はトランプ氏の勝利をきっかけとした米長期金利に連動した面が大きいのに対し、南欧諸国の国債利回りはイタリアの12月の国民投票に対してトランプ勝利の影響が危惧された面も大きかった。

 米長期金利の上昇を受けて、外為市場ではドルも上昇した。ドル円は16日に109円台をつけた。円安によって東京株式市場は上昇し、日経平均は18000円に迫る勢いとなっている。

 債券市場は日銀の顔色をうかがいながらの動きが続いていたが、さすがにこの外部環境の変化を受け、ここにきてイールドカーブ全体が水準訂正を行ってきた。トランプ氏の登場で米国の物価が上昇し、日本にも波及するというようなシナリオに沿ったものというより、米金利上昇と円安株高に反応した面が大きいと言える。さらに日銀のシナリオからみて10年債利回りもゼロ%はまさに目標値であり、ここで日銀が金利上昇抑制の動きに出ることも考えづらい。問題はここからである。

 トランプ効果による米長期金利の上昇とドルの上昇がどこまで行くのか。米長期金利の目処としては2013年末につけた3%あたりとなる。ドル円は目先110円が意識されよう。米長期金利上昇の背景には12月のFOMCでの利上げ観測の再燃もある。しかし、前回の昨年12月から1年も費やしてやっと追加利上げができたとしても、さらなる追加緩和は容易ではない。このあたりトランプ大統領の就任後の政策を見極め、それが本当に物価上昇に結びつくのかを検証する必要がある。

 日本の長期金利は日銀の想定する下限ではなく、今度は上限を探る展開となることが予想される。そうなるとプラス0.1%あたりが想定されよう。そのあたりまでの金利上昇であれば許容範囲内となるのではなかろうか。ただし、生保などの投資家は、超長期債の利回りが1%あたりまでの上昇を望んでいると思われ、多少利回りが上昇したところで、積極的に買い進むという地合でもない。いまのところはまだ日本の長期金利は日銀の手のひらのうちにある。あくまで「いまのところは」であるが。

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