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部下を潰して、勝ち誇る上司 - 吉田典史

 今回は、コンサルティング会社・トランストラクチャの代表取締役で、ベテランの人事コンサルタントである森大哉氏に取材を試みた。

 20数年のキャリアで、数百を超える企業の人事制度や組織改革などに関わった。全国各地での講演やセミナーにも飛び回る。

 大企業から中堅、外資、ベンチャー企業までの多数の現場をみてきた、敏腕コンサルタントの目に映る、「使えない部下・使えない上司」とは……。

「なぜ、自分はこんなにダメなのだろう」

 上司が部下を育成する際、少なくとも2つのタイプがあると思います。1つは、重箱の隅をつつくかのごとく、実に細かいところにまで仕事の指示・命令をするタイプです。もう1つは、プレイング・マネージャーとして部下の育成・指導をするものの、プレイヤーとしての仕事が一杯となり、部下の育成に手が回らない人たちです。

 前者のタイプは、たとえば、部下が考えた企画の論理の矛盾を指摘し、返答ができないようにして追い詰めていくのです。部下が何もいえなくなると、勝ち誇ったようになる人もいます。「これはダメだ」「あれもダメ」と回答の出口を1つずつ防ぎ、反論ができないようにすることもあります。

 幸いなことに、私は部下の頃、こういう上司とは巡り合いませんでした。ほかの部署には、このタイプの上司がいましたが、部下が精神的に滅入り、つぶれてしまうのです。「なぜ、自分はダメなのだろう」と自信をなくし、辞めていきます。

 コンサルタント業界にも、部下を潰してしまう管理職はいます。コンサルタントとして仕事をするうえで必須ともいえる「論理性」を鍛える思考訓練をしているつもりでも、部下の考えの矛盾を指摘するのがゆきすぎるあまり、精神的に追い詰めてしまうのです。

 これは、困り者ですね。私は現在、コンサルティング会社を経営する身ですが、こういう管理職がたくさんいると、部下が育たたないから、会社が成り立たなくなります。

 部下に向けて発する言葉の語尾を聞いていると、部下を本気で育てようとしているかどうかは、察しがつきます。たとえば、ある上司は企画書をみて「ここが問題じゃないか? どこがいけないと思う?」と投げかけています。部下に、考える余地を残しているのです。

 部下を理詰めにするタイプは、「それは違う」「これも違う」と出口を防いだうえに、「どうするんだよ!」「誰が責任をとるんだ!?」と追及することがあります。これでは、部下は答えようがないでしょう。

管理職として機能していない上司たち 


トランストラクチャ代表取締役の森大哉氏

 もう1つのタイプは、プレイヤーとして仕事をたくさん抱え、部下の育成ができない上司です。今は、このタイプの管理職が増えています。

 人事評価の「360度評価」のセミナーでのことです。部下たちが、上司である次長について評価するシートの自由記述欄にこう書いていました。「1つずつの仕事の背景と目的などを伝えてくれます。尊敬しています」。

 裏を返すと、こういう上司は少ないのかもしれませんね。つまり、仕事の背景や目的を伝え、双方で共有しようとしない。「これをするように」と命じ、それぞれの部下に業務の分配をするだけの管理職です。

 目的などがきちんと共有できていると、信頼関係が出来上がり、ある程度のことを乗り越えられうるのです。目的や背景は、部下に1、2度伝えるだけでは不十分です。何度でも話し合い、伝えないといけない。ところが、これができない管理職が増えているのです。

 仕事の目的や背景を丁寧に伝えようとしない理由の1つには、自信がないからなのかもしれませんね。課長が部長から仕事の指示を受けたとき、「この目的や背景は何ですか?」と聞いていない場合があります。部長が何も説明しないまま命令をして、課長も確認しないまま、部下たちに指示をしているのです。ともに管理職として機能していないのです。

とんがったものをもっている人は成長していく

 管理職が独自の判断で仕事の目的や背景を考え、部下に説明をしないのは、それらが外れてしまい、混乱が生じることを恐れるからかもしれません。管理職としての権限の裁量があいまいであることも影響をしているでしょう。このフレキシビリティーは一長一短がありますから、一概には言い切れないものがありますが。

 上司が目的を伝えないと、部下も、目的を考えることをしなくなります。目的を持ち、それに沿って幅広い視野で柔軟に、自律的に考え、いくつもの提案をもっているのが、「仕事のできる部下」だと思います。

 こういう意識の人は、与えられたミッションよりも深く考えるものです。ときに、上司と意見を闘わせ、ぶつかってしまうことになる場合もありますが、殻をやぶろうとする意欲をもっているからこそ、たてついてしまうのでしょう。

 そのような部下をつぶしてしまう上司もいます。私は成長意欲をもっているならば、少々、とんがっていても構わないと思います。管理職と、会社を経営する立場としての考えの違いなのかもしれませんね。

 日本企業の大きな問題の1つは、管理職のレベルです。多くの会社では、プレイヤーとしての実績をある程度残した人に対し、ポストで報います。だから、マネージャーとしての教育や訓練を受けていない人が課長などになり、部下を持つのです。新任管理職研修をしているケースもありますが、その内容を見ると、十分とはいえませんね。

 社長や役員と接すると、「実績のある人を昇格させたから、公平な人事をしている」と思い込んでいる場合もあります。社長や役員は、「部下の育成は大切」と管理職にいっているのかもしれません。私には、育成やOJTの意味や中身までを深く考えているとは思えないこともあるのです。これでは、現場にいる部下たちも育たないでしょうね。

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