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個人型確定拠出年金はNISAよりお得 - 塚崎公義(大学教授)

NISAという制度は、専用口座で株式投資などを行なった場合、配当や売買益などが非課税になる、というもので、比較的広く知られていますし、利用者も多いようです。しかし、これよりお得な個人型確定拠出年金という制度は、あまり知られておらず、利用者も非常に少ないようです。今般の法律改正で、20歳以上60歳未満なら原則として誰でも2017年から使えるようになったので、選択肢として検討してみては如何でしょうか?

■個人型確定拠出年金は、官製の「貯金」

確定拠出年金という制度には、企業型と個人型がありますが、両者は全く違うものなので、本稿では個人型に絞って記すこととします。個人型確定拠出年金(本稿ではiDeCoと記載します)は、官製の「貯金」です。毎月政府(正確には国民年金基金連合会。実際の窓口業務は運用管理機関である銀行や証券会社などが行なう)に一定額を預け、それを60歳以降に(年金または一時金の形で)受け取る、というものです。

一度預けたお金は、60歳まで引き出すことが出来ません。これは、万が一の時を考えるとデメリットですが、それを上回るメリットがあると考えられています。じつは、これは意思が弱くて老後の蓄えができない人に対する政府の「親心」なのです。

人間は意思の弱い動物です。小学校の夏休みの最終日に泣きながら宿題と格闘するのも、ダイエットや禁煙が難しいのも、人間が意思が弱いからなのです。そう考えると、60歳まで引き出せないというのは老後の生活を安定させる「メリット」と考えるべきでしょう。

引き出すことは出来ませんが、自分のお金ですから、運用は自分自身で行ないます。投資信託を買っても保険を買っても銀行に預金しておいても構いません。当然ですが、運用は自己責任ですから、運用して増えたり減ったりすれば、その成果物をそのまま受け取ることになります。

■運用益が非課税なのはNISAと同様

NISAのメリットは、運用益(配当や売買益)が非課税な事です。iDeCoにも、同じメリットがあります。NISAとの違いは、NISAが年間120万円の5年間で一人当たり最高600万円の枠であるのに対し、iDeCoは毎月の拠出額が積上って行く、という点にあります。

拠出額の上限は、サラリーマン等の厚生年金対象者(2017年以降、月額1.2万円から2.3万円)より自営業者等の厚生年金非対象者(国民年金基金と合算して月額6.8万円)の方が大きくなっています。これは、自営業者等に厚生年金が無い分を補う機会を提供している、というものです。

資産運用に際しては、リスク資産(株式のように、値上がりするか値下がりするかわからない資産)と無リスク資産(銀行預金など、値下がりリスクの無い資産)をバランス良く持つことが望ましいと言われています。その場合には、リスク資産をNISAやiDeCoに置き、安全資産をNISAやiDeCo以外で持つと良いでしょう。

リスク資産が値上がりした場合について考えてみましょう。リスク資産がNISAやiDeCoに置いてあれば、値上がり益は非課税です。しかし、NISAやiDeCoで安全資産を、それ以外でリスク資産を持っていた場合には、値上がり益が課税されてしまいます。したがって、「リスク資産をNISAやiDeCoで持っていて良かった」という事になります。 

一方で、リスク資産が値下がりしたとします。この場合には、いずれにしても課税されないので、「NISAやiDeCoでリスク資産を持っていて失敗だった」という事にはならないのです。つまり、リスク資産をNISAやiDeCoで持っていれば、「値上がりしても値下がりしても問題無し」なのです。

■iDeCoはNISAと異なり、掛け金が所得税等の所得控除対象

NISAは、得た所得に対して所得税を支払った後、手取り額の中から投資を行ないますが、iDeCoは所得から拠出額を支払い、残りの額に税率を乗じて所得税額を算出します。つまり、所得税の計算に際しては、iDeCoの拠出金は「所得では無かった」という扱いになるのです(所得控除)。

税金がまったく課されないという事ではなく、この分は、60歳を過ぎて一時金または年金を受け取る際に所得として扱われるのですが、その際の税金の計算は通常の所得税よりも大幅に優遇(一時金は退職所得控除、年金は公的年金等控除が適用)されている、というわけです。

これは、比較的所得が高く、所得税率が高い人には重要なポイントです。中高年のサラリーマンにとっては、見逃せないポイントだと思われます。

iDeCoがNISAよりメリットが大きいと言われる今ひとつの点は、投資信託を保有している期間の運用管理費用(信託報酬とも呼ばれる、年会費のような費用で、毎年資産残高の一定割合を徴収される)が安いものが多い、ということです。

毎年の徴収割合はそれほど大きくないとしても、年金受け取りが終了するまでの長期間運用することになるのですから、「年会費」は最終的な運用成果を考える際の重要な要因なのです。

■原則として誰でも加入できるから、手続きをチェックしよう

現在は、加入資格が制限されているため、公務員や専業主婦などは加入出来ませんが、2017年からは、原則として20歳から60歳までは全員が加入資格を持つようになります。

厚生年金の対象者は毎月の積立限度額が非対象者より少ないですが(非対象者は月額6.8万円、来年1月以降、対象者は同1.2万円から2.3万円)、それでもメリットは大きいですから、選択肢として検討してみましょう。

なお、自営業者には、国民年金基金という制度も用意されています。納付限度額は、上記のiDeCoと合計で月額6.8万円です。インフレへの備えにはなりませんが、国民年金の任意加入者であれば65歳になるまで納付出来ます。

年金ではありませんが、自営業者には、小規模企業共済制度もあります。これも税制上のメリットが大きいので、加入資格のある読者にとっては、有力な選択肢となるでしょう。

【参考記事】
■老後の生活は1億円必用だが、普通のサラリーマンは何とかなる (塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/49185650-20160728.html
■今の若者たちも、年金保険料を払った方が得な理由(塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/49711266-20161012.html
■少子高齢化による労働力不足で日本経済は黄金時代へ(塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/49220219-20160809.html
■労働力不足でインフレの時代が来る (塚崎公義 大学教授)
http://sharescafe.net/49018387-20160708.html
■国債暴落シミュレーション:日銀の債務超過(塚崎公義 大学教授)
http://ameblo.jp/kimiyoshi-tsukasaki/entry-12199547792.html

塚崎公義 久留米大学商学部教授

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