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「不公平だ!」発言、トランプにも一理あり - 土方細秩子 (ジャーナリスト)

トランプ氏の大統領就任が確定して2日、全米各地では抗議デモが繰り広げられ、オレゴン州ポートランドなどではデモが車や建物に放火するなど、暴動と化しつつある。そんな中、トランプ氏は「オープンで大成功だった大統領選挙を終えたところだ。なのにメディアに焚きつけられたプロの抗議屋が行動している。不公平だ!」とツイート、騒動にさらに火を付けている。

今にはじまったことではない不公平

 しかし、トランプ氏の言うことにも一理はある。トランプ大統領を選んだのは米国人自身だからだ。抗議をするなら選挙戦中にするべきだっただろう。さらに言えば不公平は今に始まったことではない。今回の大統領選挙は最初から最後まで不公平のオンパレードだった。

 米メディアでは「なぜヒラリーが負けたのか」の検証が始まっているが、その中でポツポツと「サンダースなら勝てただろう」という論調も見られる。しかし、同じメディアがどれだけサンダース氏に対し不公平な扱いをしていたのかは明らかだった。予備選の最後の方ではニューヨークタイムズでさえ「勝てる見込みはないのだからサンダースは直ちに選挙を辞めるべき。継続することで民主党の結束が揺らぎ、トランプに利することになる」という内容の記事を掲載したほどだ。それだけ巨大メディアに後押しされたヒラリーが負けたのだから、ヒラリーの敗北よりはメディア自身の姿勢を総括すべきだろう。

ソーシャルメディアによるニュースフィードが既存のメディアを上回った

 今回の選挙は「ソーシャルメディアによるニュースフィードが既存のメディアを上回った」初めてのケース、と言われる。米国人の44%がフェイスブックから選挙戦の情報を得ていた、という。そのフェイスブックのニュースと言えば、例えばFBIのコミー長官が選挙直前にヒラリー氏のメール問題を蒸し返し、その後「やはり刑事訴追はない」と結論づけた時にトランプ支持者から出たものが象徴的だ。それはコミー長官の顔写真に「ヒラリーは真っ黒。でも、私は突然のミステリアスな死を迎えたくない」と書かれたものだった。

現在抗議デモが行われているのも、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスといった大都市、つまり民主党の牙城が中心だ。今回の選挙は米国の分断ぶりを象徴するものだったが、その分断の凄さを見せる2つの地図がある。



 この地図は選挙結果を州ごとに集計したもの。ほぼ中央部が真っ赤、つまりトランプ支持だったことがわかる。

しかし、この地図ではどうだろう。



 これはさらに細かく、州内の自治体ごとに集計したものだ。実際にヒラリー勝利だったニューヨーク、ヴァージニア、ワシントン、オレゴン、ミネソタ、イリノイを見ても、地図上では赤の面積が圧倒的に多い。つまりヒラリーの支持母体は人口が集中する大都市部に限られていたことを意味する。大都市部に住む、比較的裕福な層と、田舎で貧しい暮らしを送る人々。その差が今回の選挙に大きく影響した。

「トランプに協力する用意がある」とサンダース

 そんな中、バーニー・サンダース氏はいち早く「トランプ大統領に協力する用意がある」という姿勢を明らかにした。

 サンダース氏はヴァーモント州バーリントンの市長に立候補した時から今日まで「一度もネガティブキャンペーンをしたことがない」ので有名だ。米国の選挙では相手を貶めて得票を狙うのが常套手段だが、民主党予備選の時もヒラリー氏のメール問題に触れることはなかった。支持者からは「メール問題を追及していれば勝てた」との声もあったが、「選挙は政策で」というのがサンダース氏の持論だ。

 そのサンダース氏ですら、「ドナルド・トランプを大統領にしてはならない。彼は近代の歴史の中で最も危険な大統領候補だ」と訴えるほどに、かなりトランプ氏には批判的だった。それがなぜ協力を申し出たのか。

 一つには米国の分断をこれ以上進めてはならない、という気持ちからだろう。そしてもう一つは自身が声明で明らかにしたが「トランプ氏は中流からすべり落ちようとしている人々の怒りを共鳴させた。長時間働きわずかな給与しか得られない人々が増え、かつての仕事は今や中国や他の労働コストの安い国に流れている。億万長者は税金を払わず、低所得層は子供を大学にもやれない国に、人々は疲れ果てている」という点において、自分とトランプ氏の主張には共通点がある、と考えたからだ。

 トランプ氏がワーキングクラス家庭の暮らしの向上のための政策を進めるならば、進んで協力する。ただし「不法移民の排斥、人種差別などを助長する政策を打ち出すならば、自分はトランプ氏にとって最悪の悪夢となる」と釘を刺すことも忘れていない。

 サンダース氏は「ワーキングクラスの人々がこぞってトランプに投票したのは民主党にとって恥ずべきこと」と語る。米国では民主党はワーキングクラスの代弁者、という位置付けだったはずなのに、今回の選挙では「エリート」ヒラリーがエスタブリッシュメントの代表、「大富豪」トランプが貧しく怒れる人々の代表、という奇妙なねじれがあった。自らがワーキングクラス出身で国内の格差是正を強く訴えていたサンダース氏にとっては非常に歯がゆい展開だったかもしれない。

 ここに来て噴出する「サンダースなら勝てたのでは」という議論に対し、サンダース氏は「今そんなことを言うのは無意味だ」とコメントを控えた。しかし奇妙なほどに湧き出る「2020年の大統領選挙への待望論」に対し、「まず2018年に上院選を控えた身だから」としつつも、否定はしなかった。4年間のトランプ政権で国が荒廃すれば、79歳という高齢になっているにもかかわらず、再び怒れるサンダース旋風が吹き荒れるかもしれない。

 今政治家に求められるのは、非生産的な抗議行動を止め、「トランプ政権の元でも国は安泰だ」という安心感を国民に与えることだ。その意味でサンダース氏が政権への協力を申し出たことの意味は大きい。もとも極右と極左でありながら、主張には共通する点も多かったトランプ氏とサンダース氏。協力関係になれば意外に良いコンビになるのかも。

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