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パリのテロから一年が経って

昨年の11月13日、金曜日の夜に、パリにおける連続テロ事件が起きた。本日は、それから一周年になる。
(昨年の日記)
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朝から、オランド大統領が、テロの現場となった各地を回り、それぞれの場所で、犠牲者を追悼する記念碑の序幕、献花、黙祷が行われる。そして最後に、130名の犠牲者の大半である90名が亡くなったバタクラン劇場前で式典が行われた。各現場の式典では、犠牲者全員の名前が読み上げられたが、このバタクランでは、延々と読み上げられる名前の数自体が事件の重さ、異常さを物語っている。なお、バタクラン劇場はこの前日、一年ぶりに営業を再開し、再開初演としてイギリスのアーティストStingのコンサートが行われた。

バタクラン劇場前での式典に臨むオランド大統領と、パリ市長アンヌ・イダルゴ氏


あれから早くも一年が経ったのかという思いがあるが、振り返ってみれば、その間、フランスで、また世界で、様々な出来事があった。今年3月22日にはブリュッセルで、そして7月14日には、南仏ニースで、革命記念日を祝う最中にテロが発生する。このニースの事件は、Promenade des Anglaisという、ニースを象徴する海岸通りで起きた。自分達もその2ヶ月ほど前に滞在し、満喫した場所だったので、このニュースは特に衝撃的だった。

パリのテロは、ヨーロッパで移民問題が燃え盛る最中に起きたが、移民問題の解決の目途は立っていない。イギリスとの国境の街であるカレーの周辺には、イギリス行きを目指す移民のテントが立ち並び、「ジャングル」と呼ばれる集落が形成されていたが、この「ジャングル」もついに撤去された。だが、そこにいた人々達の定住先ができたわけではない。

こうした中で、今年6月のBrexit、そして先日のトランプ米大統領選出と、世界の政治を大きく揺るがす出来事が相次いでいる。これらの動きと、テロ、そして移民問題は、それぞれ別個に論じられるべきものであるが、それでもその根底には、欧米の経済と民主主義社会の閉塞・緊張が横たわっているように感じられる。

パリに住んでいると、しばしば、日本の知人から、物騒なので気を付けて下さい、との励ましの言葉をいただく。気遣いをいただくのは大変ありがたいのだが、正直、やや違和感を覚えることもある。悲惨なテロが起きたのは事実だが、日常的にそれを意識することは少ないし、日々の暮らしは淡々と続いているからだ。シャンゼリゼ通りには今日も、クリスマス・マーケットを楽しむ世界中の観光客が溢れている。おそらく、日本には報道を通してのみ状況が伝わるため、危険なイメージが誇張されている部分もあるのだろう。テロの後、パリへの日本人観光客はほぼ半減したらしいが、この減少の度合いは日本人が最も甚だしいようである。

もっとも、テロを受けて発せられた非常事態宣言がまだ続いているのは事実だ。美術館などの公共施設や、大きなデパートに入るときには、ほぼ常に入口で荷物チェックがある(その大半は形ばかりのものだが)が、これはもはや挨拶のように自然なものとなっている。テロ後、フランス社会の空気がどこかで変わったことは否めない。

来年春には大統領選を控えており、まもなく、共和党、社会党の二大政党における予備選が行われる。現在の左派社会党政権よりも、より移民対策や治安維持に関して強硬な路線をとる右派共和党の方が優位であるとの見方が多い。さらにそれを越えて、極右の国民戦線を率いるマリーヌ・ルペン氏が、大統領選の決選投票に進むのみならず、実際に大統領に選出される可能性さえ、先日のトランプ氏の当選を見ると否定できなくなってきた。

経済と社会の閉塞が、さらに極端な方向へと人々を動かしていくことになるのか。テロから一年を経て、フランス、そして欧州の不透明感がさらに増していることを感じる。

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