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【グレン・フクシマの分析】

きょう出たThe Economistの表紙はThe Trump era=トランプの時代。まさにそうなるのでしょうね。

そんな中、Glen Fukushimaさんのお話を日本記者クラブでお聞きしました。会場に入ってきた段階だから、何だか元気ありませんでした。

グレンさんは民主党政権でのアメリカ通商代表部の高官を務めた日系アメリカ人で、今回ヒラリーを応援していただけに心中お察しします。

選挙結果の分析や今後の日米関係について語りました。以下、メモです。

大統領選挙の結果について

私にとっては驚きだった。アメリカの現状に不満な有権者が予想以上に大きかった

・経済への不満

・グローバル化への不満

・伝統的なワシントン政治への不満

ヒラリーは既成政治・現状維持の代表というレッテルを貼られ、トランプが変化の代表だった。2008年のオバマ勝利の時と同じ構図だ。

教育水準が高くない白人男性は伝統的に民主党支持だったが、2040年に白人が全米でマイノリティになり、非白人、女性ばかりにベネフィットがあり、自分にはないとして、不満・不安を強めていた。そこに不満の代弁者であり、自分の代表として期待できるトランプが現れた。

言語学者によるとトランプは小学校2年生にも理解できる単語しか使わず、コミュニケーションが上手。ある意味、政治家らしい候補者だった。 Make America Great Againというスローガンも分かりやすかった。

世論調査会社とマスコミの役割だが、各種世論調査は大きく外した。マスコミはトランプが出馬した去年 6 月からことし春までの1年半、おもしろおかしく取り上げ、政策の中身を追求しなかった。トランプが視聴率を取れることを指して CBS テレビの会長が2月に「トランプはアメリカにとって良くないが、CBSにとっては神さまだ」と述べたことが象徴的。

ほとんどの主要紙が社説でヒラリー支持を打ち出した。インテリ層と教育レベルが比較的低い有権者との間にギャップが生じた。

地図を見ると明らかだ。東海岸、西海岸、都市部ではヒラリーが勝ち、中西部や南部~ペンシルベニア、オハイオ、ノースカロライナ、フロリダなどの下苦戦州を含む~をトランプが取った。

メール問題をめぐるFBIの対応が選挙結果を左右した。 10月28日にコーミー長官が私用メールサーバーについて議会に書簡を送った。それまでは民主党が上院を奪還するばかりか下院も奪還できるのではないかというくらいに勢いが高まっていたが、この日を境に雰囲気ががらりと変わった。 11月6日にコーミー長官が訴追をしないという会見をしたが、 FBIの中立性に疑問がついた。それは民主党だけでなく、共和党も。選挙前の60 日前以降は、選挙に影響しそうなことはしないという暗黙のルールがあるので。

■今後の見通し

11月8 日から来年1 20 の10週間が政権の「移行期間」となる。4000 人近くのポリティカルアポインティーが任命される。このうち、閣僚・副長官・次官・次官補・大使の約1000 人は議会の承認が必要だ。議会の承認とホワイトハウスの調査(いわゆる身体検査)も必要で、普通は1 20 の政権発足時までに閣僚は終わる。

副長官、次官、次官補は3月から 5月までに任命され、その後大使という順番。駐日大使でもっとも早く赴任したのがシーファー大使の2005 年 4月。フォーリ-大使は1997 年 11月、ケネディ大使は2013 年 11月と遅かった。ルース大使は2009 年 8月だった。

政党の異なる政権への交代なので、政府が機能するには時間がかかる。さらに、トランプは政治経験もなければワシントンの経験もない。ニュート・ギングリッチ、クリス・クリスティ、ルーディ・ジュリアーニ、ジェフ・セッション、マイク・ペンスあたりが中心になるだろう。

■政策

現状批判ばかりをしていて、具体策がないのでよく分からない。

法人税率を35%から15%に引き下げること、所得税を減税すること、インフラ投資を進めることは明確にしている。一方、TPP,NAFTA については「廃止、あるいは再交渉」としか言っていない。

今後の焦点は▼何を優先課題にするのか、▼議会、最高裁、マスコミ、各国、国際機関がある中で、それを実行できるのか

中国製品に対する関税を35%課すと言ってみたり、 75%と言ってみたり。また日本に対しても、日本がアメリカ産牛肉の輸入に38 %の関税をかけているためアメリカは日本車に 38%の関税を課すと言っている。優先順位なのか実行可能なのか不透明だ。

■日米関係

そもそもトランプの対日観は30年間変わっていない。 1987年に9万 5000 ドルを払って、The Washington Post, The New York Times, Boston Globeに日本に対する批判の広告を出している。

▼円安に誘導して自動車の輸出を有利にしている、▼安全保障でただ乗りしているというのが柱。その後、 Opra Whinfreyのインタビューに対して、さらに雑誌Playboy のインタビューでも同じことを言っている。

11 17 に安倍首相がトランプとニューヨークで会談するということだが、以下の4点を質問するべきである。

①TPPの何が不安で、どこを修正したいのか?

②日本について過去30年、貿易・雇用・為替の面から批判しているが、日本の自動車に 38%の関税を本当にかけるのか?

③沖縄の駐留米軍の役割について、日本がどこまで負担すればよく、仮に負担しないとしたら撤退するのか?

④対中関係の一環で尖閣諸島について、2014年にオバマ大統領は日本で米大統領として初めて「日米安全保障条約第 5条適用」と明言したが、トランプ政権でもこの立場を維持するのか?

この本音が分かれば、日米関係の今後がはっきりしてくる。

質疑応答

■議会の共和党の役割は?

□民主党は上院で2つの議席(イリノイとニューハンプシャー)を増やしたが、多数派を奪還できなかった。トランプはインフラ投資を増やすと主張しているが、共和党は財政規律に厳しいのでどこまで増やせるかは分からない。自由貿易をめぐっては、ビジネス界と対立することも予想される。

■アメリカ国内の分断と国際社会との分断をソフトランディングできるのか?

□女性蔑視、移民排除、LGBT軽視の発言を繰り返すトランプが本当のトランプなのか、勝利宣言をしたトランプが本当のトランプなのか、まだ分からない。ビジネスマンなので手の内を見せない方が良いと思っているようだが、国レベルではそうもいかず、本音なのか脅しなのか分からない。

■ヒラリーはなぜ、女性票を伸ばすことができなかったのか?

□世代間の問題が大きかった。50歳以上の女性は、民主・共和問わず、熱狂的なヒラリーファン。一方、若い女性は差別を受けた経験がなく十分に女性にアピールできなかった

また、好感度が低く、女性に限らず、黒人やヒスパニックの票も期待されたほどとれなかった。古いと見られ、資質も問われた。

■上下両院も共和党に握られ、民主党はどう再建するのか?

□共和党は2013年 3月に将来像に関する報告書を出した。民主党も反省が必要だ。あそこまで有能な候補で、組織があり、資金力があり、盤石名選挙体がありながら勝てなかった

トランプは2 期目はないと期待。 2020年を見据えると、ヒラリーや今のバイデン副首相は年齢的に無理。ティム・ケイン副大統領候補、カリフォルニアから今回上院議員になったカマラ・ハリス、メリーランドの元州知事のマーティン・オマイレーなどが次期候補になり得る。今の段階でリーダー的存在がいない。オバマ、トランプの躍進を見ると、実績がない人でも大統領になれることが分かったので、新しい人を発掘しないといけない。

■自由貿易は終わったか?

□理念が変わったとは思わない。実際、ペンス次期副大統領は推進者だ。ピュー研究所の調査を見ると、自由貿易を推進しているのは共和党ではなく民主党。トランプ政権の間に貿易を縮小してもアメリカ経済がよくならないと証明されると思う。中長期的には自由貿易に大きな変化があるとは思わない。ただし、一転付け加えるとサマーズ元財務長官がことし 7月、 Brexit投票の直後にFT にVoters deserve responsible nationalism not reflex globalism、 Washington Post にHow to Embrace Nationalism Responsiblyと書いたように、国のリーダーはグローバル化だけなく、責任あるナショナリズムを考えないといけない。言われていた自由貿易がよいことばかりないことも分かってきた。

■TPPはどうなるのか?

□議会のいわゆるレームダックセッションで批准されないのははっきりしてきた。TPPが今の形で残るのは不可能だ。日米の2国間 FTAを締結することに米産業界は賛成だろうが、むしろ日本側は農産物の問題で困難があると思う。トランプはそもそも貿易協定に価値を置いていない。商務長官、通商代表部の代表に誰を選ぶのか注目したい。

(参考)

https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/how-to-embrace-nationalism-responsibly/2016/07/10/faf7a100-4507-11e6-8856-f26de2537a9d_story.html

https://www.ft.com/content/15598db8-4456-11e6-9b66-0712b3873ae1

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