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トランプが煽った人種差別は米国の新たなリスク

米国は多様な国家です。多民族社会で、自由と平等を掲げ、移民にも寛容な国。しかし、それがすべてではありません。日本ではヘイトスピーチを叫ぶ人たちは極めてマイナーな存在ですが、米国には根深い人種差別が残っています。今回の大統領選はそのことを表にあぶり出し、しかも社会の裏側でくすぶっていた人種差別の種火に油を注いだのです。米国は半世紀ほど前までは人種差別の国でした。その差別に抗議し、キング牧師らの呼びかけで20万人以上の参加者を集めた1963年のワシントン大行進の映像は未だに記憶に残っています。そのときのキング牧師の演説『I have a dream』はきっとご存知のことと思います。

人種差別の終わりとなる公民権法が成立したのは1964年ですが、キング牧師はその4年後に貧困労働者階級の中でも特に貧しいアイルランド系の白人によって暗殺されます。  人種差別を法的に撤廃して半世紀といえば長いようですが、人びとの潜在意識に刷り込まれた意識はなかなか変わりませんし、また次の世代に引き継がれていきます。

だから、未だに白人の警官が黒人を平気で射殺する事件が頻発し罪に問われません。そして決して口にはださなくとも、白人以外は下等な人種だと思っている人びとも多い国です。米国に留学経験のある人のなかには、最初は親切で仲良くしてくれた白人が、成績で抜くととつぜん陰湿ないじめを始めるという経験を持つ人もいると思います。

そんな潜んでいた人種差別のパンドラの箱をトランプは開けてしまいました。いくら融和を呼びかけても、いまさらというかんじでしょうか。

現実は、今や、米国はそのマイノリティ、また移民が活力を生み出している国です。白人だけなら、もう人口が増えず、高齢化し、衰退していく運命を抱えている国ですが、マイノリティが米国の活力を支えているのです。

ニューヨークの金融街でも、イノベーションを生み出しつづけるシリコンバレーでもマイノリティなしには成り立ちません。

米国での国勢調査では、ヒスパニックやアフリカ系黒人などのマイノリティは2004年には米国住民の32.9%でしたが、2014年には37.9%にまで増加しています。出生率の差などから予測すると、2040年代の半ばには、マイノリティが半数を超える国になるとすらいわれています。

トランプはメキシコとの国境に壁をつくらせ、移民の流入を止めると叫んでいましたが、いまでは国境を超えて流れ込んできているからヒスパニックが増えているのではなく、米国でのヒスパニックの出生数が増えているので増えているのです。

そして先進国が抱える高齢化からも米国が逃れているのもマイノリティのおかげなのです。そして彼らがアメリカの活力を支えているのが現実です。米国は自国の状況すらわかっていない、偏見と先入観で物事を考えてしまうトランプを米国民は大統領に選んでしまいました。

詳しくはThe Economistのこちらの記事をどうぞ。 米国のヒスパニック:米国に活力を与える方法 | JBpress(日本ビジネスプレス) :

米国の各地で反トランプのデモが巻き起こっていますが、英国のEU離脱と決定的に異なるのは、英国は英国国民の主権とアイデンティティをEU官僚のから守ろうとした動きだったのに対して、トランプは今の米国の強みや今の米国のアイデンティティを否定することで、現状に不満を持つ白人のストレスを解消した一方で、米国国民に深い亀裂をつくってしまったのです。

そう見ると、トランプ大統領は、就任後も根深い国内問題を抱えることになります。国内問題を抱えた指導者は、仮想敵国を設定して、攻撃することで、問題をすり替えるというのが常で、かなり危険な道を選ぶことになりかねません。

日本がそれにまきこまれないようにと願うばかりです。 そのためにも自国のありかた、また将来は自ら考え、判断する国民意識が求められてきているのだと思います。民進党のように、トランプ候補がTPPを否定しているから、国会で承認するのは茶番だという主体性のない発想では、交渉に長けたトランプ大統領とは、駆け引きすらできないのではないでしょうか。

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