記事

テレワークだけで生産性は上がらない!働き方改革の肝は「時間対成果」へのパラダイムシフト

telework

先日、総務省と経団連が主催する「テレワークシンポジウム」にて、パネルディスカッションに登壇してきました。さすがに登壇される側も参加される側も大手のお堅い感じの企業さんが多かった印象です。

余談ですが、「テレワーク」と名の付くイベントと「リモートワーク」を冠するイベントでは、完全に客層が違っていますね。ただ個人の印象ですが、テレワークは旧来型の組織で危機感から取り組もうとしている感じ、リモートワークは新しい働き方への期待感から取り組もうとしている感じを受けています。

さて、本稿ではパネルディスカッションの中で出た話題、テレワークと生産性について。そこで私が答えた内容を整理して紹介します。

テレワークだけでは生産性が上がらない理由とは?

テレワークとは「ICTを活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」とあるが、柔軟に働くことがそのまま生産性には繋がる訳ではない。むしろオフィスに缶詰で時間を固定して働いた方が高い生産性を出せるかもしれない。

仕事量が減っている訳でも、仕事の中身が変わっている訳でもなければ、生産性は変わらないのだ。テレワークだからと言って、すぐに高い生産性が出せるなんてことはない。テレワークは生産性を高める魔法の特効薬ではないのだ。
(確かアジャイル開発の時も同じようなことを言っていたが…)

アンケートなどで「オフィスと違って無駄な電話や会議の割り込みがなくて集中できる」なんて書かれたりするが、それはテレワークの利点というよりも、そもそもの組織の問題が浮き彫りになっただけだ。テレワークの本質ではない。

無駄な会議や電話をなくすのは、テレワーク以前に組織で取り組む課題だ。テレワークでは、むしろコミュニケーションを重視して、オフィスにいるのと変わらないチームワークを実現することこそ目指す姿のはずである。

テレワークによって、それまで働けなかった人を採用できたり、地方に戻るために辞めていく社員の維持はできる。それは間違いない。しかし、本当に生産性を向上させたいならば、そのための効率的な働き方を実現しなければいけない。

テレワーク以前に取り組むべき「デジタルな働き方」

私たちの会社では、リモートワーク(テレワーク)を行うことが目的ではなく、働いている個々人の生産性を高めるため、より効率的に働けることを目指してきた。その結果、離れた場所でも支障のない働き方ができるようになったのだ。

例えば、ペーパレス。紙を扱う仕事なんて非効率だ。資料は電子ファイルで良いし、閲覧は画面共有すれば事足りる。電子データなら履歴もあって無くすこともない。

例えば、メールレス。社内でのやり取りにメールは使わない。メールに埋もれるのは非効率だし、チャットした方が手っ取り早い。掲示板を使えば履歴も共有できる。

例えば、サーバレス。電子ファイルでさえ交換が非効率だから全てクラウドで共有する。電子化されたデータやサーバはクラウドに用意すれば物理サーバは要らない。

そうした合理的な判断のもと、ITを活用して無駄をなくしていくことで、非常に高い生産性を発揮できる。そうした働き方のデジタル化をすれば、たとえ離れた場所にいても情報は共有できるし、コミュニケーションにも困らない。

このようにテレワークは外部から見える結果であって、組織のゴールでもなければスタートでもない。まず取り組むべきは、効率を重視した「デジタルな働き方」だ。

「時間と成果」から「時間対成果」へのパラダイムシフト

ただし、働き方を変えると言っても簡単なことではない。これまでの働き方を捨てて、新しい働き方に変えるには相当なエネルギーが必要となる。現場で働く人にとって、そうしてまで働き方を変えるモチベーションは強くはない。

私たちの会社では「時間対効果」を高めようとするカルチャーが最初からあり、それもマネジメントの前提にしているので、働き方を変えてきた訳ではない。難しいのは、そうしたカルチャーではない組織の話だ。

従来型の組織で働く人に対して、その働き方を変えさせるためには、やはり評価の仕組みから変えていく必要がある。評価は一定の動機付けになっているものだ。評価が変われば、自ずと働き方を変えざるを得なくなる。

では効率的な働き方が評価されるようにするにはどうすれば良いか。そのヒントは、これも先日に行ったテレワークの第一人者であり「在宅勤務が会社を救う」の著者でもある田澤さんと私の対談「“テレワーク”で生産性は上がるのか?」の中にあった。

一般的な評価基準は「成果」+「労働時間」でした。こうした評価基準だと長時間勤務できる人のほうが高く評価され、テレワークを必要とするような制約社員の評価はどうしても下がります。そこで評価基準を「成果」÷「時間」にして「時間あたりの生産性」にシフトする。(対談4ページ目)

確かに評価を「時間あたりの生産性」に変えれば、長く時間をかける方が評価が下がるのだから、無駄なことをやっている場合ではなくなる。エクセルの表を綺麗にしたり、印刷の体裁にこだわったり、そんなバカなことに時間をかけている場合ではないのだ。

「働いている時間」と「何をしているか」を同時に管理

「時間対成果」での評価に変えていくためには、きちんとした成果の定義と、何より働いている時間の計測が求められる。大事なことは限られた時間の中で成果を出すことで、時間をかけて成果を出すことではないからだ。

そもそも、どれくらい働けるか、どれくらい働くのか、そうした「働く時間」を意識することはオフィスだろうがテレワークだろうが関係ない。持ち時間を意識するからこそ集中して取り組めるということもあるだろう。

また、これまでマネージャはオフィスにいて、本当に「働く時間」を把握できていたのだろうか。パソコンを使った仕事になると、その画面の向こう側で何をしているかまで知る術はなかったはずだ。だから席にいるかどうかしか見てなかった。

私たちの会社でも、さすがに新卒で入った若者たちに、訓練や教育もせずにセルフマネジメントを任せてしまうことはしていない。まず、時間内に成果を出す意識付けをするためのマネジメントツールを導入している。

私たちが使っているのは、ソニックガーデンがテレワークマネジメント社と共同開発した『F-Chair+』だ。これは勤務時間を計測する機能に加えて、勤務時間中に不定期に自動で画面キャプチャを撮影し、クラウドに保存する機能がある。

fchair

仕事している画面を撮影するのは、えげつない感じだが、仕事で使うパソコンで撮影するのは仕事中だけなのだから、きちんと仕事をしていれば問題はないはずだ。マネージャも逐一すべて見る訳ではなく、互いに信頼して働くための担保となる。

このように「働いている時間」と「何をしているか」を同時に管理できる機能を備えたツールを使うなどすれば「時間対成果」への意識改革が実現できるだろう。

オフィスで「デジタルな働き方」と「時間対成果」を導入

多くの企業でテレワークが難しくて失敗してしまうのは、働き方を変えることの本質を捉えていないからだ。だから表面だけを真似してもうまくいかない。なぜ難しいのか。「効率的に働くこと」と「離れて働くこと」を同時にしようとするからだ。

そもそも効率的に働くためのデジタルな働き方が出来ていない状態からだと、まるで両足を同時に出して進もうとするようなものだ。まず取り組むべきはオフィスにいながらデジタルな働き方の実践である。テレワークは、その後の話だ。

ペーパレスに取り組み、メールをやめてチャットに移行し、サーバもクラウドに変える。そのままオフィスからいなくなってもコミュニケーションを成立させるために、例えばRemottyのようなバーチャルオフィスの仕組みを導入するのも良いだろう。

また、前述の『F-Chair+』などは、オフィスで使っても生産性向上の効果は出るだろう。それまでオフィスに来るだけで実際はサボっていた人がいたら、「時間対成果」になるともはや評価されなくなるのだから。

「時間対成果」の評価軸で限られた時間の中で成果を出す意識、そのために効率的な働き方を誰もが模索する組織。それが「デジタルな働き方」へのシフトを可能にし、さらにその先にあるテレワークへと繋がっていくのだ。

働き方改革の目指す先にある企業の生産性と個人の幸せ

働き方改革で目指すものはなんだろうか。「時間あたりの生産性」を高めていく、仕事の効率を求めていく結果、企業の生産性だけが高まるのでは意味がないし、社員たちが取り組むだけのモチベーションにはならない。

限られた時間で成果を出していくことで、自分が使える人生の時間を増やすこと、それによって、それまで出来なかったことに取り組めるようになること。家族と過ごす時間を増やしても良いし、好きな趣味に没頭しても良い、学びたい勉強をしても良いし、なんだったら副業なんかもできるかもしれない。

人生の時間が増えることは、個人の人生の選択肢を広げることに通じる。

せっかく高い生産性を発揮しても、空いた時間まで会社に拘束されてしまうなんてのはナンセンスだ。オフィスに通勤していると、そうしたことが起きてしまう。そこでテレワークが活きてくる。

テレワークは「時間対成果」を組み合わせることで、本当の働き方改革に繋がるのだ。そして、個人がもっと幸せに働くためにできることはまだまだある。それについてはまた別の機会に書くことにしよう。

あわせて読みたい

「雇用・労働」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    天皇退位の恩赦で大物議員復活か

    NEWSポストセブン

  2. 2

    新旧首相が会食 超豪華4ショット

    笹川陽平

  3. 3

    ネット社会を見誤ったヒカル氏

    藤川真一

  4. 4

    中国のご都合主義に飲まれる世界

    文春オンライン

  5. 5

    実はコンビニ限定でお得な定番品

    ビブリオン

  6. 6

    上原不倫NG 松本人志フジに苦言

    渡邉裕二

  7. 7

    ナチス賛美する高須氏は医師失格

    清 義明

  8. 8

    EVブームに乗り遅れた日本政府

    片山 修

  9. 9

    インスタで増加 脱ぐ女性の動機

    NEWSポストセブン

  10. 10

    死ぬまでSEX 現代高齢者の性事情

    PRESIDENT Online

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。