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トランプが背負わなければならない現実との板挟み

トランプ候補が勝利したことで、株式市場や為替市場が過敏な反応をしました。売った、買った、勝った、負けたの勝負の世界は、どう流れが動くか、相手がどうでるのかの読み合いで実にナーバスに動きます。ところが実体経済は金融経済ほど機敏には動けません。国際紛争、地域紛争などもそうだし、外交関係もそうです。トランプさんに待っているのはそんな世界の現実です。
選挙に勝つために、保護主義を強め、製造業を復活させると高らかにラッパを鳴らし、メキシコとの国境に壁をつくると豪語したトランプさんですが、これからトランプさんが向き合わなければならないのは経済や国際関係の現実です。

敵をつくりあげ、強く非難すればするほど受けます。いきすぎたポピュリズムの典型です。

しかし現実は、アメリカの製造業を衰退に追いやったのは日本や中国など、海外の国や企業ではなく、アメリカの経済の競争力を支えているアメリカの企業そのものです。

世界の小売業のトップをひた走り、今やグローバルなメガ小売業となったウォールマートが売る食品以外の商品の何割をアメリカの製造業が供給しているのでしょうか。メイドインアメリカの製品を売り場で見つけるのもさぞかし難しいでしょう。

時価総額でトップのアップルは何も製造していません。部品は日本や韓国などから調達し、製造は中国、その製造会社を経営しているのは台湾資本の鴻海です。グーグルもしかりです。 そういった典型的な例を除いても、歴史的に見れば、アメリカの企業は製造拠点をコストの安い海外に移してきました。つまり国内の製造業を弱めた原因は国内にあるのです。

しかし今は海外での人件費の高騰、またシェールガスの増産によるエネルギーコストの低下、また、品質管理の強化やリードタイムの短縮を求め、むしろ国内回帰が起こってきています。オバマ政権が付加価値の高い「先進製造業」を国内回帰させようとする政策の成果なのかもしれませんにが、むしろ企業が変化に適応した結果でしょう。

いずれにしても海外に敵がいるのではなくアメリカ自身が抱えている問題でもあるというのが現実です。

トランプさんの日本に対する見方は、まるで日米貿易摩擦が起こった1980年代そのものです。きっと日本の自動車はすべて日本から輸入していると勘違いしているのでしょう。

重要なのは、アメリカ経済が先進国のなかではいまだに強いのは、トランプさんが非難したグローバル経済を有利に取り込んでいるからです。もし保護主義に走れば、自らの強みを弱め、損をするのは目に見えています。付加価値の低い製造業を復活させれば国際競争力をさらに低下させてしまいます。

経済だけでなく、もともとアメリカが生み出した中東をどうするのかも不透明です。中東紛争の解決はロシアに任せるのでしょうか。アジアの安定と成長はアメリカの成長の源泉ともなっていますが、そのアジアの安定は中国に任せるというのでしょうか。

おそらく大統領に就任し、ブレーンがつけば、それなりの現実的な政策を打ち出してくるのでしょうが、それではトランプさんに、なにか今を変えてくれるという期待を寄せ、投票した人びとの満足を得ることは難しく、トランプ離れが起こってきます。

結構、政権運営には高度な舵取りが求められ、喧嘩と駆け引きの才能だけでは、現実の課題を解決していくことはできません。大きな変化をつくることは難しい、しかし大きな変化をつくらなければ支持者が離れる。よほどの才覚を見せない限り、トランプ政権は案外短い、そんな可能性を感じますが、アメリカが世界に、また日本に与える影響が大きいだけに、そんな読みを見事裏切ってくれることを願うばかりです。

ただ日本から見れば、先進国のなかで政権がもっとも安定している日本は、トランプ大統領との良好な関係をつくるための積極的な動きができることと、アメリカにおんぶにだっこではなく、自国のことは自国で考えるという流れがでてくるのでそれは歓迎すべきことではないでしょうか。

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