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したたかなドゥテルテ・フィリピン大統領と安倍首相の非公開会談、空白の70分に何が話し合われたのか?

フィリピンのドゥテルテ大統領が来日した。安倍晋三首相と会談するためだ。

ドゥテルテ大統領は今年6月にフィリピン大統領に就任した。彼は、選挙期間中から麻薬犯罪に対して厳しい取り組みを表明してきた。実際に大統領に就任すると、麻薬撲滅を掲げた。そして、現在までの数カ月の間に殺された麻薬の売人や常習者は3500人以上とも言われている。

当然、このやり方は国際的な非難を浴びた。オバマ大統領も人権的に問題だと抗議した。これに対してドゥテルテ大統領は、「何様のつもりだ、くそやろう」「地獄に落ちろ」など、タガログ語で口汚くオバマ大統領を罵ったという。そのため、ASEANの関係会合に合わせて、9月にラオスで予定されていた両者の会談は流れてしまった。

こうした話を聞くと、なんと粗暴で外交下手な大統領だと僕は思ってしまう。ところが、フィリピンでは86%もの支持率を誇っている。国際的には相当な悪評で、「独裁者」とまで指摘されている一方、フィリピン国内では「英雄」とも表現されているそうなのだ。今回、来日した際も、ドゥテルテ大統領が宿泊するホテルの前などに数百人の在日フィリピン人が集まった。彼を歓迎するためだ。

フィリピンは長い間、欧米諸国の植民地だった。そもそも国名の「フィリピン」は、16世紀のスペイン皇太子フェリペの名にちなむ。とくにアメリカの植民地であった時代が長く、独立後も見下された扱いをされ続け、対米従属的な関係であった。やはりドゥテルテ人気の根底には、反米感情があるのだろう。

10月20日、ドゥテルテ大統領は、日本より先に中国を訪問した。習近平主席と会談したのだ。フィリピンと中国の間には南シナ海があり、その領有権をめぐって両国が争っている。実は、フィリピンはアキノ前大統領時代に、ハーグの常設仲裁裁判所に訴えていた。そして、今年7月に「中国の領有権を認めない」という判決が下されているのだ。しかし、中国はその判決を無視している。

ドゥテルテ大統領は、習近平主席との会談で「判決に従うべし」と強く主張してもよかった。ところが彼は、南シナ海問題には一切触れなかった。代わりに、中国からフィリピンへ、日本円にして総額約2兆5000億円もの援助を決めたのだ。

しかも、同時にドゥテルテ大統領はなんと、「軍事的にも経済的にも米国と決別する」などと言ったものだから、世界中は大騒動になった。その後、発言は撤回されたが、またもや、「2年以内にフィリピン国内の米軍基地を撤退させる」「合同軍事演習はしない」と述べている。彼の行動を見ていると、南シナ海を売り渡し、「反米」をエサに中国からの支援を引き出したと言われても仕方あるまい。

だが、その後、南シナ海問題について、「いずれ協議をする時が来る。決定が消えるわけではない」という発言もしている。

どうやらドゥテルテ大統領は、そんな単純な人間ではないようだ。母国での人気の要因も、「反米感情」によるものだけではないのかもしれない。かなりしたたかな政治家だ、と僕は見る。非常に複雑な政治情勢にあるASEANでうまくやっていくには、このようなしたたかさが必要なのだろう。

さて、そんなドゥテルテ大統領と安倍首相はどう付き合っていくべきか。少なくとも今回の会談で日本は、2つのことをきっちりと言わねばならなかった。ひとつは、南シナ海の問題は法にのっとり、平和的な解決をはかるべきだということ。もうひとつは、東アジア情勢の安定のためには、アメリカの存在は不可欠だということ。このことをしっかり言うべきなのだ。

会談の内容は、公開された部分しかわからない。だが、南シナ海問題について、ドゥテルテ大統領は「平和裏に解決するという価値観をもとに、日本と緊密に協力する」と語っているようだ。また、日本からフィリピンへの経済支援も決まった。一方、その後、70分間にわたって行われた、少人数での会談内容は一切、公開されていない。

なぜ公開できないのか。したたかなドゥテルテ大統領のことである。おそらく、日本側の思惑通りにはいかなかったのではないか、交渉ベタな日本が翻弄されたのではないか、と、その内容が僕は非常に気になる。それにしても、なんとも興味深い政治家が、アジアに登場したものだ。このことに、僕は感動すらしている。

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