記事

モスル周辺の生存者が証言:イスラム国の残虐性

By BEN KESLING and TAMER EL-GHOBASHY

 過激派組織「イスラム国(IS)」が2年以上にわたって厳しい支配を続けていたイラク北部の村ファジリヤ。最近解放された住民らは、絶望感が恐怖感を凌駕(りょうが)していたと話す。

 ISにとってイラク最大の拠点モスルに近いファジリヤを支配していたのは、数十人の戦闘員だという。生き残った住民らによると、IS戦闘員らは拷問や恐怖、官僚体制を通じて現地を支配していた。英語を話すモスル大学卒業生のムハンマド・アユブ氏は、この小さなIS集団が武器を手にしていた唯一の集団だったため、7000人の住民に法外な権力を行使できたのだと語った。

 またアサド・アリ・ハッサン氏(45)は「彼らの一人が自爆ベルトをまとって村にふと姿を現し、自爆することもあった」と証言。自爆行為を説明できる理由についてハッサン氏は、人々に恐怖を確実に植え付けておくこと以外にはないだろうと述べた。

 モスル周辺にある幾つかの村の生存者たちは、IS戦闘員がどのようにして住民を疲弊させ、恐怖におののかせ続けたかを詳細に語った。頻繁に罰金を科し、子供たちに親の情報を密告させ、生活必需品を「カリフ国」に確実に依存させるなど、官僚体制で住民の生活を押しつぶしていたようだ。

 モスルは、依然としてISの支配下にあるが、現地からの報告によれば、市内にいるIS戦闘員たちはますます残虐になっている。例えば、イラク治安部隊に内通していると疑われる数十人を処刑したほか、何千世帯にも上る家族を「人間の盾」として駆り立てているという。

イラク北部の村ファジリヤで見つかったイスラム国が使っていたトンネル
イラク北部の村ファジリヤで見つかったイスラム国が使っていたトンネル
Photo: Ben Kesling/The Wall Street Journal


 ファジリヤをはじめ、周辺地域の住民は主としてスンニ派だ。同じスンニ派のISが宣言した「カリフ国」という新体制の下にとどまり生活していたが、その後、戦闘員たちが残虐な顔を見せ、数多くの規制を強制していったためISへの信頼を失った。

 ハッサン氏は、横にいる幼い息子に目をやり、「彼らは小さな子供をけしかけて、公共の場で大人たちをむち打ちの刑にするのだ」と語った。「彼らはペンを(大人たちの)あごひげに差し込む。ひげが十分に長くなくてペンがずり落ちると、むち打ちの刑にされるのだ」という。

 女性たちはこれとは異なる痛みを伴う刑を受けていた。かみつかれたのだ。例えば、ある女性が「ふしだら」とみなされると、ISの女性戦闘員が緊急裁判を取り仕切り、刑を執行する。その女性は逮捕前、人前で手を隠さず、あらわにしていたという。その場合、略式判決のあと、戦闘員が女性の手にかみつくのだという。

 ハッサン氏は、携帯電話使用の罪で死刑を宣告されるリスクを抱えながら、2014年に村から逃げていた弟のリファド氏(40)に電話をかけ始めた。ハッサン氏はISの陣地情報を弟に伝え、弟はその情報をクルド人の情報機関に回した。

 ファジリヤは、モスルに向かって進軍してきたクルド人部隊の手で今月27日に解放された。兄弟は翌28日、ファジリヤで涙の再会を果たした。

 ファジリヤ解放の数日後、ある女性は自宅のクローゼットを開き、真っ黒なニカブ(イズラム女性がかぶるベール)を取り出してきた。顔全体を覆い、目すら隠すものだ。そして黒い手袋も出した。

イスラム国によって2年以上にわたり着用を強いられていたニカブを身にまとった女性
イスラム国によって2年以上にわたり着用を強いられていたニカブを身にまとった女性
Photo: Erin Trieb for The Wall Street Journal


 女性の着衣は、ISが村にやって来る前に着ていたというカラフルな服に戻っていた。2年以上にわたって着用を強いられていたニカブを身にまとって黒一色になると、幼い娘たちが泣き始めた。「2年間以上もこれを着なければならなかったなんて信じられない」と言うと女性は素早くニカブを脱ぎ、「以前の服装を再び着られるようになったことも信じられない」とも語った。

ハッサン氏と弟のリファド氏
ハッサン氏と弟のリファド氏
Photo: Ben Kesling/The Wall Street Journal


 ユスフ・ムスリム氏(33)は、クルド自治政府のメンバーだとしてIS戦闘員から非難され、拘置所で2日間過ごした経験を語った。ムスリム氏の自宅で標準的なクルド人身分証明書を発見したIS戦闘員たちは、同氏を目隠しして車に押し込め、モスルに向かった。IS戦闘員は2日間続いた尋問中、常にカラシニコフ銃の銃口を同氏に向けていたという。

 2週間前、クルド人民兵部隊「ペシュメルガ」がモスル東方の前線で地上戦の攻勢を開始すると、IS戦闘員たちは戦闘準備に集中し、住民たちの拷問にはあまり専心しなくなった。その後、主要攻撃のわずか2日前、IS戦闘員は住民15人を拘束した。ペシュメルガに電話するため携帯を使ったとの理由からだ。15人の消息はその後不明だ。

あわせて読みたい

「ISIL」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    ミヤネ屋インチキ医療特集に称賛

    中村ゆきつぐ

  2. 2

    山尾議員の不倫相手は恥だと思え

    小林よしのり

  3. 3

    よしのり氏 山尾氏の謝罪に苦言

    小林よしのり

  4. 4

    定年後は蕎麦打ち職人になるな

    内藤忍

  5. 5

    高須氏「衆院解散は正しい戦略」

    NEWSポストセブン

  6. 6

    海老蔵と麻耶 歌舞伎界の非常識

    NEWSポストセブン

  7. 7

    豊田・山尾問題は孤独が原因か

    幻冬舎plus

  8. 8

    豊田議員あと一歩で逃げ切り逃す

    文化通信特報版

  9. 9

    今度こそ北朝鮮の崩壊は秒読みか

    自由人

  10. 10

    共産の要求激化で選挙協力崩壊か

    猪野 亨

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。