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セブンも危機感! 百貨店、スーパー、コンビニのサバイバルマッチ

経済ジャーナリスト 水月仁史=文 撮影=宇佐美利明

百貨店、スーパー大量閉店の悲鳴

流通業界が風雲急を告げている。かつては小売業の主役だった百貨店に再び淘汰の嵐が吹き込み、総合スーパーは大量閉店を余儀なくされている。稼ぎ頭のコンビニエンスストアも「3強」それぞれに経営面で激動期を迎え、覇権争いは一段の熾烈化が予想される。出口の見えない袋小路に迷い込んだ消費不振のただ中で、構造改革は時間との勝負となってきた。

風雲急の流通業界を決定付けたのは、盟主、セブン&アイ・ホールディングスだった。5月の株主総会を前に、鈴木敏文会長(当時)がコンビニ子会社、セブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長(同)に退任を迫り、取締役会で否決されたのを機に、自ら経営から身を引いた。米国から輸入したコンビニを日本独自のスタイルに育て上げ、セブン&アイを牽引してきたカリスマ経営者の退陣に激震が走ったのは言うまでもない。

5月26日に同社社長に就いた井阪氏に課せられたのは、鈴木路線の聖域なき見直しだった。既に立て直しの途上にあった百貨店事業で8月、傘下のそごう・西武の西武八尾店(大阪府八尾市)、西武筑波店(茨城県つくば市)の2店舗を来年2月に閉鎖することを決めた。今年2月に西武春日部店(埼玉県春日部市)、9月末には西武旭川店(北海道旭川市)、そごう柏店(千葉県柏市)を閉店しており、不採算事業のてこ入れを急いだ。

百貨店業界は訪日中国人観光客による「爆買い」が鳴りを潜め、アベノミクスによる資産効果で一時膨らんだ富裕層の購買意欲も萎え、都心旗艦店が収益を支える構図は崩れ、不採算の郊外・地方店を切り捨て出した。実際、三越伊勢丹ホールディングス傘下の三越伊勢丹は、三越千葉店(千葉市)と三越多摩センター店(東京都多摩市)の営業を17年3月に終了し、エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)傘下の阪急阪神百貨店も同年7月に堺北花田阪急(堺市)を閉店する。

小売り主要3事業は歴史的な変革期

セブン&アイはさらに踏み込んだ。井阪社長は10日6日、H2Oと資本・業務提携し、そごう神戸店(神戸市)、西武高槻店(大阪市高槻市)、そごう西神店(神戸市)の3店舗を譲渡すると発表した。再び構造不況に見舞われる百貨店事業で「選択と集中という新しい軸」(井阪社長)を経営に採り入れる姿勢を打ち出し、2005年前後に起きた百貨店の合従連衡の再来をも想起させた。

半面、米投資ファンド、サード・ポイントによる百貨店事業のグループからの全面切り離しの要求とはほど遠い。さらに、祖業の総合スーパー、イトーヨーカ堂の閉鎖店舗も40店舗と従来計画から踏み込まず、聖域なき構造改革は道半ばとの印象は拭えなかった。ライバルのイオンも総合スーパー事業の不振で3~8月期決算は7年ぶりの最終赤字に陥り、「買うものがない」と消費者からそっぽを向かれた総合スーパー事業の立て直しは一筋縄でいかない。

一方、コンビニ事業は、9月にファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスが経営統合して誕生したユニー・ファミリーマートホールディングスが国内コンビニ第2位に浮上し、店舗数でセブン-イレブンを追い上げる。また、3位に落ちたローソンは9月に筆頭株主である三菱商事がてこ入れのため子会社とすると発表し、「セブン-イレブン包囲網」を形成しつつあり、王者といえども決して安泰とは言い切れない。

小売りの主要3事業が揃って激変に見舞われる流通業界は、その意味で、歴史的な変革期を迎えており、生き残りに向けて待ったなしの引き返せない道を歩み出したと言えそうだ。

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