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石油輸出国機構(OPEC)の減産交渉は頓挫 サウジの単独減産しか無い?

金曜日にウイーンで開かれた石油輸出国機構(OPEC)の事務レベルの打ち合わせは、イラクとイランが減産の際の基準となる生産データを巡り12時間に渡って対立し、結局、物別れに終わりました。

これで11月30日のOPEC総会で協調減産が発表される可能性は極めて低くなりました。

これは予想通りの展開です。

さて、僕は「OPECの協調減産は不可能」という考えですが、来年、「サウジの単独減産はありうる」と思っています。

この二つは、一見同じようで、全然異なります。なぜなら、サウジの単独減産は、同国の一存で出来る事であり、誰と歩調を合わせる必要も無いからです。

それではなぜサウジが単独減産すると考えるか? ですが、それは「そろばん」です。つまりサウジにとって、そのほうが得だから

下は国際エネルギー機関(IEA)の世界の原油市場の中期予想です。IEAは経済協力開発機構(OECD)の下部機関です。

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去年の世界の原油需要は1日当たり9470万バレルでした。一方供給は1日当たり9640万バレルでした。2014年夏以降、原油価格は半値以下になりました。しかし需要を見ると減っていません。だから原油相場が崩れた原因は世界の景気後退からくる需要の減退ではありません。むしろ供給の増加が問題なのです。

供給はアメリカのシェールの増産がきっかけで増えました。いまアメリカのリグ・カウント、つまり油井の数は激減しています。だから今年から来年にかけては、生産が少し減ると予想されます。

一方、マーケットシェアを維持するため、OPECも増産しました。皆が増産したので需給バランスが崩れたのです。

世界には3大産油国があります。それらは米国、ロシア、サウジアラビアです。

下はOPEC各国とロシアの生産高です。

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ロシアは6月の時点で1100万バレル/日のペースで生産しています。サウジは8月に1060万バレル/日のペースで生産しました。イランは8月に365万バレル/日、イラクは8月に435万バレル/日で生産しました。

つまり何だかんだ言ってサウジ、ロシア、アメリカの三カ国が世界の原油市場に与える影響力は最も大きいのです。

アメリカの生産はシェール業者の採算ラインと密接にリンクしているので、市場価格に左右されやすいです。

ロシアの油田は含水率が極めて高く、おいそれと減産できません。

するとサウジだけが為政者の肚ひとつで増産や減産できる立場に居るわけです。

先述のIEAは現在の原油市場の供給過剰をきれいに除去するには90万バレルの減産が必要だとしています。その90万バレルの減産を、一体、誰がするのか? それについてIEAは三つのシナリオを持っています。それが下の表です。

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シナリオ1では当然、サウジだけが損をします。シナリオ2では他のOPEC諸国と痛みを分かち合うケース。シナリオ3ではロシアまで含めて削減した場合を示しています。

減産すれば、原油価格は上昇します。しかし原油価格が騰がると、需要はある程度減退します。それが需要の価格弾力性と呼ばれる現象です。この両方のファクターを加味して、それぞれのシナリオがサウジの財政赤字をどれだけ加速させるかをGDPの%で示したのが下の表です。

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目をひくのは、楽観的シナリオではサウジの財政赤字は悪化するどころか逆に改善すると言う点です。サウジのGDPは6460億ドルです。するとこの表の中で最大の損は「-1%」であり、その場合の金額は64.6億ドルになります。最大の得は「+2%」のシナリオであり、その場合の金額は129.2億ドルになります。

サウジは国庫の収入のかなりの部分を石油売却代金に頼っているため、このところの原油安で国家の収入と支出のバランスは崩れています。

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具体的にどこから収入が上がっていて、支出は何に消えて行っているのかをグラフにしてみました。

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言うまでも無くサウジは財政赤字に転落しています。

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経常収支も赤字です。

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それらの赤字を、外貨準備を取り崩すことで帳尻を合わせています。サウジの現在の外貨準備額は5429億ドルです。

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サウジは「ビジョン2030」という構想を打ち出しています。これは人的資源をもっと活用し、環境にやさしいサステイナブルな社会を築き、家族を基礎とした強固な社会を建設しようというイニシアチブです。経済を多様化・デジタル化し、老若男女全ての国民に雇用機会をどんどん創ってゆく考えです。

そのためには国有石油会社、サウジ・アラムコを新規株式公開(IPO)しなければいけません。

サウジ・アラムコの規模をイメージしやすいために、現在世界最大の上場石油会社であるエクソン・モービルと比較してみましょう。まず確認埋蔵量ベースでは10倍以上です。

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次に生産高では2倍程度です。

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原油生産高から単純に割り出したサウジ・アラムコの時価総額は8,410億ドルになります。

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いまアップルの時価総額は6,300億ドルですから、世界最大の上場会社が誕生することがわかると思います。いまサウジ・アラムコの10%をIPOしたとして、840億ドルの調達になります。過去最大のIPOはアリババで250億ドルでした。その3.4倍の計算になるわけです。

さて、原油価格が上昇する局面では、投資家は含み価値に注目します。それはつまり確認埋蔵量ということです。

すると原油高を演出すればバリュエーション的に不利な生産高を基準とした値決めではなく、確認埋蔵量を基準に売出価格を決めることもできるでしょう。

その場合、時価総額は8,410億ドルではなく、1兆ドルを超え、1.5兆ドルになってもおかしくありません。その10%がIPOされるとすると1,500億ドルが転がり込むわけです。

その場合、最も保守的なIPOの調達金額の見積もりとの差は660億ドルにもなります

すると先ほど見たいろいろな減産シナリオで、最大の損は「-1%」であり、その場合の金額は64.6億ドルといいましたが、その10倍近い超過利益を「減産→原油価格高を演出」することでサウジは手にすることが出来るのです。

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