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オンライン専門に転換、半年で黒字化した英全国”紙”

英国の4大高級紙とされたインディペンデント(Independent)紙が、経営難から「紙」の印刷を止め、オンライン専門に転換したのは今年の3月25日でした。

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それから半年あまり。プリント広告の減少に苦しむ世界中の新聞関係者は、インディペンデントの成り行きを注目していたと思われますが、フィナンシャルタイムズ(FT)は、インディペンデントのオーナー、エフゲニー・ベレゾフ氏の言として「23年ぶりに黒字化した」と報じました

日本の全国紙とは部数で比べ物にはなりませんが、一応、世界的にも名の知られていた英国の一般紙が、オンライン専門になって生き残りの可能性を示したことは、それなりに意義のあることのように思います。でも、日本では全く報じられていませんので、その問題点も含めてまとめてみます。

本来なら、2016年の収支報告は来年に出るはずですが、ベレゾフ氏ら同社関係者の話では、デジタル広告収入が45%伸びていて、今年の総額は約2000万ポンド(約26億円)に達する見込みだということです。

ベレゾフ氏はFTに対し自信満々で説明しています。「オンラインオンリーになったことで、我々は自らを自由にし、よりフレキシブルになれた」「まだ、初期段階だが、より身軽になり、デジタルにフォーカスすることで、我々の新しい、より多くのオーディエンスによりよく貢献できることを、この6ヶ月の成果が示している」「この23年間で初めての黒字だ。これは新しい状況をもたらしている」

しかし、ベレゾフ氏の言は紹介するものの、諸手を挙げて賞賛しているわけではありません。

自信満々の発言の直後にこう続けています。「デジタル・インディペンデントが、(紙の新聞時代にあった)特色のある意見や評判を、そのスタッフを攪拌した後でも、相当の期間にわたって保持できるかどうかは不透明だ」

2010年に、負債を引き受ける代わりに、1ポンドでインディペンデント紙を買収したのはベレゾフ氏の父親で、KGB出身の富豪アレクサンドル氏でした。その後、様々な改革を試みましたが、負債は増える一方だったようです。2015年の収支報告書では、税引き前損失が700万ポンド、純負債は6,900万ポンドで、会計士が事業の存続に警鐘を鳴らし、ベレゾフ親子が融資して、なんとか存続している状況でした。

廃刊する道もあったかもしれませんが、インディペンデント紙はオンラインに活路を見出すべく、大胆なリストラを断行してオンライン専業を選んだわけです。

これで印刷コスト、配達コストをゼロにした上、編集局の規模も半減させました。FTの記事によると、200人いた編集スタッフのうち110人が去り、新たにデジタル編集要員として10人が採用されたので、現在は100人体制です。

人数だけが減ったわけではないのです。半年前の当ブログでも紹介しましたが、ライバル紙ガーディアンは3月に、「デジタル専門になるのに伴い、インディペンデント紙のジャーナリストは、現在のサラリーの半額カットを受け入れるかどうかを要求されている」と伝えていました。

また、最近のNieman Labの記事で、メディアアナリストのKen Doctor氏は、この時、編集局を去った記者の中には「経験豊富な(そして高給な)スタッフがたくさん含まれていた」と記しています。

つまり、FTが言っているのは、人員が半分になった上、サラリーを大幅に削減された若い記者中心の体制で、記事の質は保たれるのかという疑念です。もちろん、インディペンデントの現編集長が「真面目なジャーナリズムを追求し続ける。現に、従来からいるbigname(著名記者)も保持し続けている」という発言も紹介していますが。

ただ、ある記者は匿名で「儲かってるかもしれない。しかしコストはどうなんだ」「昔とはなんの関係のないものを生み出している」と語ったとか。一枚岩ではないようです。

先のKen Doctor氏も、「儲かったという新しい数字には惹かれるが、そこにトレードオフを見る」と言います。「黒字の反面、従前からの本質を保持できているのかが、重要な点だ」と。

とは言え、世界共通の事情として、プリント広告の落ち込みは続き、英国では、今年も15%の減少が予想されています。各新聞社にとって、インディペンデントのオンライン専門への転換は「明日は我が身」になるかもしれないだけに、その品質も含めての成否は注目の的なのです。

FTもKen Doctor氏も、「目に見える『紙』を失うことは、新聞としての影響力を失うことだ」と指摘してはいるのですが。

(ただし、インディペンデントのサイトは、写真やビデオ満載のグラフィカルな構成で、一見すると、とても魅力的な作りになっているのは事実です。後続する新聞社サイトとネットワークを組んでうまく展開させれば、高級紙のテイストを持ったHuffingtonPost的な存在になれるかもしれないというのが、個人的な感想です)

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