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欧米の金利上昇とそれによる日本国債への影響

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 欧米市場の地合いが明らかに変わりつつある。米国市場では発表される経済指標が予想を上回るものも多くなり、12月のFOMCでの追加緩和観測が高まっている。市場の7割程度が追加緩和をすると予想してくると、政策変更の可能性が高まるとも言われているが、その数字に近づいている。11月の米大統領選が近づいているが、クリントン候補が優位となっていることで、いわゆるトランプショックに備える必要性も後退しつつある。

 米長期金利は27日に1.87%まで上昇してきた。12月に利上げが実施されるとの見込みがさらに強まれば、米長期金利は2%台をつけてくることも十分予想される。

 欧州の長期金利も上昇している。これは米利上げ観測とそれによる米長期金利の上昇に影響されている側面もあるが、イングランド銀行のカーニー総裁の発言も影響している。ポンド安による物価への影響を無視できなくなり、イングランド銀行の追加緩和観測が後退し、場合によると出口を探る方向に向きを帰る可能性も出てきた。27日に発表された英国の7~9月GDPは前期比プラス0.5%と予想を上回る伸びとなり、これも英国債の利回りの上昇要因となった。

 英国の長期金利も8月につけた0.5%あたりから上昇しており、27日に1.25%をつけている。英国のEU離脱による金融市場の混乱もあって英国債は一時、相関の強かった米国債とは違った動きをしていたが、再び米国債と似たような動きとなりつつある。

 ECBのドラギ総裁も追加緩和一辺倒の姿勢に変化が見られるようになってきた。ECBは日銀の金融政策についてかなり研究しているとされるが、今年に入ってから、ころころと変わる日銀の政策の原因やその効果等も認識しているとすれば、そのような結果が出たとしても不思議ではない。

 ドイツの10年債利回りも一時のマイナスからプラス0.17%まで上昇してきた。

 この欧米の金利上昇の背景には、市場の物価への見方の変化もある。そのひとつの要因が原油価格の動向である。OPECの減産合意などを受けてWTIは50ドルを突破して52ドル台まで上昇した。ただし、ここにきてOPECの足並みが揃うのかとの疑念も生じ、WTIは目先ダブルトップを形成し、戻り売りが出やすい状況にある。果たしてこのまま原油価格が上昇し続けることができるのかはいまのところ不透明であるものの、再び30ドル台に戻るようなことも考えづらい。

 英国のEU離脱による経済や金融市場の混乱は一時的なものとなり、米国大統領選挙も波乱要因とならず、英国を中心にデフレへの懸念もいったん後退しつつある。すでに異常な金融政策を続ける理由もなくなってきており、それがカーニー総裁だけでなくドラギ総裁の発言からもにじみ出てきている。

 実は日銀もすでに積極的な緩和姿勢からは変化してきている。正確には変化せざるをえなかったわけではあるが、それでもECBやイングランド銀行に先んじて、金融緩和の深掘りに躊躇し始めた。ただし、その結果としてイールドカーブコントロールという不可思議な政策が取られることになり、日本の国債市場の流動性はさらに低下した。このため日本の長期金利はいかにも誘導されているかに見える。しかし、外部環境が変化の度合いを増してきた際に、果たして日本の長期金利がおとなしいままとなるのかどうか。本当の意味での日銀のイールドカーブコントロールがこれから試される。

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