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AT&Tとタイムワーナーはつまらない買収劇

アメリカの通信大手、AT&Tがエンタテイメント、コンテンツの雄、タイムワーナーを買収するそうです。その金額、おおよそ9兆円。ドキドキさせないM&Aとはこういうことを言うのでしょう。アメリカらしい話ですが、個人的にはちょっと違う気がします。

この話を聞いたとき、この買収案がどのような背景を持つのか、考えてみました。かつてコンテンツを作る会社はそれを映画館で放映し、稼ぎました。次いでテレビの一般放送、そして、ケーブルテレビ、有料放送、ビデオオンディマンドとなりますが、この辺りはすべてテレビを媒介としています。つまり、コンテンツとテレビは相性が良かったわけです。

時代は変わります。パソコンでユーチューブを見て作って投稿する時代になりました。日本ではワンセグで電車の中でもテレビを見るようになりました。つまり、コンテンツを持ち運びできるようになった大きな進化がそこに見られます。AT&Tが見た絵面とは持ち運びできるコンテンツを自社の携帯に誘導することで顧客の囲い込みを行う作戦とみました。

そこに9兆円も払う論理性があるかどうか、私には疑問です。なぜならそのコンテンツをどこで見るのか、という疑問があるからです。アメリカの多くの人は通勤はクルマ。もちろんNYのような大都市は公共の交通機関を使いますが、そこまでしてテレビを見たいかは私にはわかりません。アメリカのホテルに泊まりフィットネスに行くとトレッドミルに大きな画面の個人用テレビがついています。初めは物珍しさも手伝ってそれを見ながら走っていたのですが、コマーシャルばかりのアメリカのテレビに辟易として結局スマホで音楽を聴くことに切り替えてしまいました。

個人的にはAT&Tの今回の戦略は成熟産業になった携帯電話事業から次の成長を目指すために熟れて甘みが増すタイムワーナーを欲したという感じに見えます。

今世紀初頭のころ、IT関連でIPOを目指す起業者はいつかは誰かに買ってもらえるという億万長者への夢を持っていました。ユーチューブなどはその典型でありましょう。グーグルが買収を決めたとき、市場はネガティブでした。この会社とグーグルとどういう相乗効果があるのか、と。しかし、今、ユーチューブの生み出す価値は計り知れないものとなっています。つまり、当時の買収は買い手がまだ熟していない青い果実を自分の手で栽培して実りあるものにすることでウィンウィンの関係を築いたとも言えます。

ツィッター社が苦境に陥っており、身売りをしたいと手を振っています。セールスフォースなど多くの企業がその買収を真剣に検討しましたが、結局どこもその手を下ろしてしまいました。かつてツィッターが世に出回った時、日本では政治家までそれに狂い、猛烈な盛り上がりを見せましたが、急速に冷めた理由はフェイスブックにとってかわられたところが大きいかと思います。アメリカのヤフーも通信大手ベライゾンが買収することになっていますが、その後ヤフーで大量顧客情報流出の不祥事が発覚し、その買収は遅延するのではないかとみられています。ツィッターもヤフーも成熟企業で買収金額が高いか、買収後にどのようにドライブするのか、この辺りが難しいところなのだろうと思います。

とすれば、タイムワーナーはどうなのか、といえばAOLと2000年に一緒になり、2009年に「離婚」しています。成熟企業であればあるほど根付いた企業文化が強く出やすいということもあるでしょう。その点では今回の買収はAT&Tがタイムワーナーをコントロールできるか、それにかかっています。

個人的にはこんな買収は野暮だと思っています。金の力が全てでしょう。それでは世の中のすべてのビジネスはどんどん寡占化してしまうともいえ、資本が全てになってしまいます。世界が特徴のない一つのサービスに同質化させられ、顧客はそれに振り回されることになります。

ところで日経ビジネスにアステラス製薬の畑中社長の編集長インタビューがありました。同社は日本の製薬会社では絶好調で一目を置く会社です。その社長が「我々は世界で18-20位ぐらいに留まりますが、この順位を上げないと将来がないわけではありません」とお答えになっています。更に「例えば移植関連と泌尿器疾患ではすでに世界のリーディングカンパニーだと考えています。」と答えられています。これを読んでこの会社は食われやすい状況にあると直感しました。世界レベルでは中堅どころ、だけどきらりと光るものがある会社ほどおいしいものはないのです。

以前、弱肉強食の時代と題したブログを書きました。金利が下がって金融コストが極めて安い今、その買収金額はかつて考えられなかったような「兆」円レベルがごく当たり前になってきています。しかし、金の力に任せてなんでもかんでも食い尽くすような今のスタイルはやっぱりおかしいと思うのは私だけではないと思います。

では今日はこのぐらいで。

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