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男を出世させる良妻、ダメにする悪妻

サーチファームジャパン社長 武元康明 岡村繁雄=取材・構成

夫の仕事に影響を与える「妻の存在」

ヘッドハントでの転職もそうですが、仕事を変わるというのは、人生における大きな出来事です。その決断にいたるまでのプロセスは人さまざまでしょうが、そこでの家族、とりわけ妻の役割は小さくありません。いわば「内助の功」を発揮できるかどうかということです。私がヘッドハンターとして関わった人たちを振り返ってもそうです。夫の仕事そのものに、とても大きな影響力を持っています。

私のスカウト活動の経験でも、「ああ、この奥さまだとちょっと難しいかな」と思えるケースもありました。例えば、妻方の実家あるいは妻を中心に家庭が回っている場合です。そこには候補者自身の真の意味での選択権がありません。交渉が終盤に差しかかり、彼の奥さまも賛同してくれて、「じゃあ、お話のあった会社に行けば」という結論になったとしても、これではリスクが高く、当方としては受けたくないというのが本音です。逆に、夫がワンマンで「いいから、俺に文句をいうな!」というケースも好ましくありません。

やはり、本人の意思と奥さまの考え、両方バランスよく、どちらにも偏っていないというのが理想です。つまり、夫婦間のコミュニケーションが図れているかどうかということになります。一般的に、その家の主人を立てるタイプの家庭というのは、だいたいにおいて明るい。それは、奥さまに会えばおおよそ判断できます。

私がいま接点を持っている候補者は、企業の最前線で活躍しているので、プライベートの時間も自己投資に時間を割いている人が多くいます。そうした夫の仕事にかける情熱や意気込みは、一番身近にいる奥様が理解しているでしょうし、職場の悩みとか、人間関係の悩みとかを、奥さまに相談することもあるわけです。すると、奥さまの理解もより深いといっていいでしよう。転職に際しての、奥さまを含めた面談でも冷静な意見を述べてくれます。

夫の転職となると、奥さまの生い立ちや結婚までの社会人生活が影響します。まず、彼女に会社勤めの経験があるかないか。学校を出てから数年間であったとしても、会社という文化のなかに身を置いていれば、そこがどのような原理で動いているのかは理解しているはずです。夫が「いざ、転職」となったら、自身の経験から適切なアドバイスができる可能性は高いと思います。もし、職場結婚なら、より説得力があるのではないでしょうか。

次に妻の実家が、何か商売をしているかどうかということ。よく中小企業の経営者が「実家が小さくても商売をやっていたところの子息は比較的フットワークがいい」といいます。確かに、彼、彼女たちは考え方が柔軟で創造的思考力を必要とする営業職やマーケティング、開発には向いています。一方、公務員の家庭で育った場合だと、既に構築された仕事を着実にこなしていくというよさがあります。

「内助の功」が夫のフォロワーを生む

「内助の功」というと多くの方が、戦国時代に活躍し、土佐一国の領主となった山内一豊の妻・千代を思い浮かべるのではないでしょうか。有名な逸話として、千代は嫁入りの持参金で、夫が欲しがった栗毛の名馬を購入したといいます。主君である織田信長の馬揃えの際に、その馬が信長の目に留まり、それがもとで一豊は加増されました。織田信長の性格を知っていての夫へのバックアップでした。

司馬遼太郎の『功名が辻』は、良妻賢母である千代を主人公に、一豊がいくつもの武勲を上げ国持ち大名になっていく出世物語です。ビジネスの世界では出世がすべてということはありません。けれども、個人主義というよりは家族主義的な日本企業にあっては、千代のような奥さまがいないと、すぐれたリーダーにはなりにくいのもまた事実です。

リーダーには、その人物を支えてくれるフォロワーがいるかどうかも重要な要素になるからです。優秀なスタッフが彼の周りを固めていることによって、個人としてもチームとしても、いい仕事ができ、好業績を出すことにつながります。最近はあまり聞かなくなりましたが、家に部下を呼んで、団結を深めることもあるでしょう。

そんな場合に、奥さまが温かくもてなしてくれると、参加した人たちの意気は大いに盛り上がります。まだ日本にも、そんなつき合いが残っています。奥さまが「わが家は別」では、フォロワーがついてきません。夫も上司として肩身の狭い思いをしてしまいます。

弊社における2015年度のスカウト実績の男女比率は、男性85%、女性15%でした。これからは女性活躍が求められる時代です。弊社によせられる女性スカウトの依頼も、2013年の9%から、2014年13%、2015年15%と確実に増加傾向にあります。近い将来、「妻を出世させる夫」がテーマとなる日も遠くないのではないでしょうか。

武元康明(たけもと・やすあき)
サーチファームジャパン社長
1968年生まれ。石川県出身。日系、外資系、双方の企業(航空業界)を経て約18年の人材サーチキャリアを持つ。経済界と医師業界における世界有数のトップヘッドハンター。日本型経営と西洋型の違いを経験・理解し、それを企業と人材の マッチングに活かすよう心掛けている。クライアント対応から候補者インタビューを手がけるため、 驚異的なペースで 飛び回る毎日。2003年10月サーチファーム・ジャパン設立、常務。08年1月代表取締役社長、半蔵門パートナーズ代表取締役を兼任。

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