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より危険な存在となって復活しつつあるアルカイダ - 岡崎研究所

 エコノミスト誌9月17号掲載の解説記事が、ISにイスラム過激派のお株を奪われたアルカイダだが、過去の経験に学び、より現実主義的な、従って、より危険な存在となって復活しつつあるかもしれない、と警告しています。要旨、次の通り。

危険なのは、彼らが人々の支持を集めていること

 アフガニスタンを追われ、シリアやイラクでは分派のイスラム国(IS)のために影が薄くなったアルカイダだが、脅威が消えたわけではなく、各地の支部は活発に動いている。むしろ、ISがラッカやモスル等の重要拠点を脅かされ、「カリフ国」解体の可能性が出て来たのに対し、アルカイダはアラブ世界での地盤確保の夢を実現しつつあるかもしれない。中でも、シリア支部のアルヌスラ戦線は、アサド政権との戦いで中心的役割を担っており、アルカイダは近くイスラム「首長国」を宣言するかもしれないとも言われている。

 アルヌスラはIS同様、出自はアルカイダだが、ISが反シーア派、ライバル組織の殲滅、これ見よがしの残虐性に傾き、厳格なイスラム法を強制、「カリフ国」を性急に樹立し、グローバルな対西側蜂起を呼びかけるのに対し、アルヌスラは、反乱穏健派と連携、イスラム法の拘束は軽く、戦いの重点をシリアに置く。カリフ国の樹立はあくまで長期の目標だ。

 アルヌスラは7月にレバント征服戦線(JFS)と名称を変え、アルカイダからの離脱を宣言、シリアの他の反乱組織との合流を目指している。しかし、名称を変えてもアルヌスラはアルカイダの不可分の一部だ、と専門家は指摘。危険なのは、彼らが人々の支持を集めていることで、「このまま拡大を続ければ、本物の大衆運動になりかねない」、「十分な支持を得れば、欧州との境界に首長国を樹立できる。そうなれば、根絶は難しい」、と言う。また、これまでアルヌスラが西側を攻撃しようとした形跡はないが、対テロ関係者は時間の問題だと懸念する。

 JFSはスンニ派反乱の突撃隊として行動、また、その自爆要員はアサド政権の防衛線突破に威力を発揮した。他の反乱組織はJFSと共闘するしか道はなく、今やJFSは戦士7千人を擁し、シリアの諸反乱組織の要のような存在になっている。

 ISと同様、JFSは支配地域では疑似政府として活動。道路建設、電線補修、水の供給、インフラ再建、市場のパトロール、食料補助、製粉所等の運営、イスラム教育や医療の提供などに携わっている。

 JFSは他の反乱組織より腐敗は少ないと思われており、また、人々の生活にはあまり介入しない。そうしたJFSを自分たちの財産を守れる唯一の反乱組織と見る者は多い。アルカイダの指導者、ザワヒリは、既に2013年の時点で戦士たちに節度を要請、重要なのは米国を叩くことで、地元政府(アフガニスタン、パキスタン、ソマリア、サウジアラビアを除く)との衝突、シーア派との闘争、非イスラム少数民族への介入は避けるよう言っている。

 不要な摩擦の回避から住民福祉への重点の移行は、アルカイダの現実主義の新たな段階を示すものだろう。

 米軍の攻撃に苦しめられ、地元の紛争に巻き込まれたイスラム過激派は、9.11以降、西側に大規模攻撃を仕掛けられずにいるが、この15年でテロ組織は世界中で数も行動もかつてなく拡大深化したと専門家は言う。

 そうした中、ISとアルカイダは役割が入れ替わるかもしれない。カリフ国が破壊されれば、ISは世界各地に散り、かつてのアルカイダのようにグローバル・ジハードを目指す可能性がある。一方、アルカイダは、シリア戦争が妥当な解決に至らなければ、シリアに一層深く根を下ろすだろう。将来、首長国を樹立するようなことがあれば、それは地元住民に強く支持され、従って、野蛮なISカリフ国よりも根絶は難しくなるかもしれない。

出典:‘The other jihadist state’(Economist, September 17-23, 2016)
http://www.economist.com/news/international/21707208-eclipsed-islamic-state-al-qaeda-may-be-making-comeback-more-pragmatic-and

 ISが本拠地のシリア、イラクで劣勢に立たされている間、アルカイダの各地の支部、特にシリア支部のアルヌスラ(最近レバント政府戦線〈JFS〉と名称を変えた由)は、活動を活発化させ、支配地域で疑似政府として活動しているとのことです。

 JFSには、ISとの対称が目立ちます。ISが残虐性で知られているのに対し、JFSについては、指導者のザワヒリが「節度」を要請しているといいます。ISが支配地域で厳格なイスラム法を強制しているのに対し、JFSは住民福祉を重視しています。上記記事にはありませんが、ISが中東、欧州などから広く戦闘員を募っているのに対し、JFSはそのような募集は行っていません。

住民の福祉を重視

 アルカイダ全体を見た場合、注目点が二つあります。一つはシリアです。シリアのアサド政権打倒は当面のアルカイダの最優先課題であり、JFSを通じ攻勢を強めています。JFSは反アサドの反乱グループの要のような存在になっており、今や他の反乱グループはJFSと共闘するしかありません。いま一つは、アルカイダがイスラム「首長国」を宣言するかもしれないという点です。アラブ世界で地盤を確保するのがザワヒリの夢とのことです。当面の重点はシリアでの戦いで、首長国の樹立は長期の目標であるとされており、おそらく今のシリアの支配地域での疑似政府の延長線上で考えているものと思われますが、首長国の樹立は領土を支配することを意味し、領土を持つことはISの例が示すように敵の攻撃を受けやすくなり、弱みになり得ます。

 JFSを中心とするアルカイダの勢力拡大は、米国をはじめとする西側にとって頭が痛いことです。シリアのアサド政権打倒ではJFSと米国の利害は一致しますが、JFSがシリアの反政府勢力の要になることは、穏健派反政府勢力を支持してきた米国にとって好ましくありません。米国がJFSを攻撃すれば、反政府グループの力を削ぐことになるでしょう。当面米国は目に見える敵であるIS掃討に全力を挙げていますが、究極的にはアルカイダも敵です。

 アルカイダの現在の重点はシリアですが、その源はイラクにおける米軍に対する聖戦でした。ザワヒリは米国を軍事的、経済的に叩きのめすことが最終目的である、と言っています。シリア情勢の混迷が続く限り、JFSはシリアで一層勢力を拡大するでしょう。ISと違って住民の福祉を重視しているので、住民の強い支持を得ています。それだけに米国にとっては手ごわい相手となるでしょう。

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