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そもそも金融政策で為替や物価を動かせるのか

 18日に発表された今年9月の英国の消費者物価指数は前年同月比1.0%の上昇となった。伸び率は8月の0.6%を上回り、2014年11月以来の高い水準となった。コア指数は前年比プラス1.5%となり、これも2年ぶりの高水準。英政府統計局はポンド安が消費者物価に大きく作用した明らかな兆候はみられないが、生産者物価に影響していると指摘したそうである。

 しかし、この物価の上昇は英国のEU離脱に伴うポンド安が影響したであろうことも確かではなかろうか。さらに原油価格の反発による影響もあったものとみられる。ここで注意したいのは、8月4日のイングランド銀行による包括緩和がどれだけ影響していたかとの点である。

 8月4日のイングランド銀行の金融政策委員会(Monetary Policy Committee; MPC)では、年0.5%と過去最低の水準となっている政策金利をさらに引き下げて年0.25%とするとともに、英国債を対象とする資産買入プログラムの規模を600億ポンド増額し4350億ポンドとし、さらに100億ポンド規模の投資適格級社債購入プログラムを決定した。利下げの効果を強固なものとするための金融機関向け低利融資制度を含めてパッケージされた、いわゆる包括緩和政策を決定した。

 金融政策と通貨安、そして通貨安による物価への波及効果については、日本にも事例がある。いわゆるアベノミクスである。これは日銀の金融政策が円安を招き、物価にも波及したとの見方もできなくはないが、円安は自民党が政権を奪え返すとの見方の強まりのなかでの安倍自民党総裁の輪転機発言がきっかけとなっている。

 大胆な金融緩和効果よりも、欧州信用不安によるリスク回避の反動が、ヘッジファンドの仕掛け的な動きにともなって急激な円安が起き、その円安で一時的な物価上昇が起きたといえる。この間、原油価格が高止まりしていたことも物価を押し上げた要因となっていた。さらに消費増税前の駆け込み需要も影響した。金融政策というよりも、円安と原油高などが物価を押し上げていたと言えよう。

 これは今回の英国も同様であろう。イングランド銀行の金融緩和でポンドが売られたというよりも、ポンド安の主因は英国のEU離脱であることは明らかである。

 18日には米国の9月の消費者物価指数も発表された。前月比で0.3%の上昇となり、前年同月比は1.5%の上昇と、2014年10月以来の上昇率になった。食品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.1%上昇、前年比では2.2%の上昇となっている。

 言うまでもなくFRBはすでに昨年12月に利上げを行っている。米国の物価上昇の背景にあるのはFRBの金融政策ではない。たしかにFRBのバランスシートは高水準に維持されており、追加利上げは行っていない。緩和的な環境が物価を押し上げたとする説明には無理がある。むしろ原油価格の反発による影響が大きかったとみるべきではなかろうか。

 金融政策がどの程度、通貨安に影響し、それが物価にどう波及してくるのかについては、具体的な検証も必要ではなかろうか。むしろ物価に対しては、いまのファンダメンタル等の外部環境と政策金利がほぼゼロ近辺となっているという状況下では、金融政策の効果よりも、通貨安や原油価格の動向に影響を受けやすいとの見方もできるのではなかろうか。さらに通貨安は、果たして中央銀行の金融政策でもたらすことが可能なのかという点についても疑問が残る。このあたり良い事例を日銀が残してくれたようにも思われる。

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