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先生、「世間が先生に遠慮している」ことを自覚しましょう~不登校の高止まり4(田中俊英)

■持続的にネガティブな社会現象

昨日僕のFacebookにたくさんリンクしているニュースのひとつを見ていたら(僕の場合、Facebookは「友だち」フォローはほぼやめて、ニュースビューワーとなっている)、不登校の原因として、教師と生徒の間に大きな乖離があるという調査結果記事が掲載されていた(不登校の理由は「先生」 学校と子どもの認識に16倍の開き)。

記事元は「業界紙」である「不登校新聞」だからある種のバイアスがかかるのは仕方ないとしても、ここで指摘される「16倍の開き」はたいしたものだ。

つまり、先生のみなさんの「自覚度」の低さは特筆モノで、生徒対応や組織(学校)内で苦労される現場の先生方と毎日のように接する僕などは幾分同情するものの、16倍は「そりゃないだろう」と思うと同時に、案外「あるある」だ。

不登校現象は、1人の生徒や1人の教師、あるいは特定の学校などの個別的事象ではなく、ある種の社会現象であり、大きな目で見ると「時代のパラダイム(その時代ごとの無意識的共通価値)が変更する際の具体的摩擦」であると、哲学者M.フーコーの議論なども紹介しながら当欄では触れてきた(「不登校の高止まり」は「学校」の終わり)。

また、人口動態の面から、「団塊ジュニア」の出現により日本の教育改革が先延ばしにされてしまっのではないか、という問題提起も行なった(「不登校の高止まり」の原因か~成長期モデルからの転換点と、団塊ジュニア)。

毎日起こる学校での事件や、不登校に対するカウンセリング的アプローチの提案などから、我々は油断すると不登校現象は「個別の問題」として位置づけてしまいがちになるが(カウンセリングは個々の問題点を重視する)、ここ20年以上に渡って10万人以上、子どもの人口減(1,400万人→1,000万人)を考えると割合的には高くなっている(H25年度で1.17%5 小・中学校の不登校)事実からすると、それは明らかに個別現象ではなく、持続的にネガティブな社会現象だ。

■貧困やSNS

そのような「社会現象としての不登校」の原因はたくさんあり、原因の特定は、現場で支援する僕のような立場のものからすると危険でもある。

当然、保護者の問題、友達の問題、学校の問題はあり、大きま社会背景(大学進学率が50%になったり、非正規雇用率が40%になったり)はある。

保護者の問題には貧困や虐待の連鎖といった社会問題が背景にあり、友達の問題にはスマホやSNSの普及といったコミュニケーションパターンの変化という問題もある。

このように、一つの問題は別の問題とつながり、それらは社会的背景をすべて背負う。だから、不登校の原因はこれだと断定することは、ある意味徒労であり、そのひとつの危険因子に偏った対応になるため総合的支援ができなくなる。

が、それにしても、この「16倍の開き」はスゴイ。

モンスター・ペアレントの問題や、硬直した学校組織の問題(教員の昇進システムの問題は先生、「名刺」を渡しましょう~不登校の高止まり3参照)があり、先生たちが現在非常に閉塞的職場環境に置かれているとはいえ、この自覚の低さは、この意識の持ち方自体が現在の一つの教育問題であるとも言える。

■「普通の」保護者たちは、先生にあらかじめ遠慮し諦める

このような意識の乖離はどこから来ているのだろうか。

ひとつは、教育に関する世間の批判がまずは「先生」に向かうため、先生たちは自己防衛していると僕は解釈している。

もうひとつは、実際に現場で毎日子どもと接していると上に書いたように不登校の原因は特定できないことから、「原因は学校か」と聞かれた場合、そこまで断定できないだろうと判断してしまうという思考傾向があるのではないか。

もうひとつは、先生たち自身が抱く「教師という職業イメージ」と、世間が先生に対して抱くその職業イメージとの間に大きなギャップが存在しており、特に世間(保護者ほか)は学校/先生に対して「言いにくいこと」がたくさんあって、ものすご~く遠慮しているのではないか。

モンスター・ペアレントの場合は「それはそういう人だから」で済まされるものの、それ以外の大勢の人々が先生たちに遠慮している構図があるのではないか、と僕は疑っている。

その「先生への遠慮」が、見えない大きな壁、大きな情報格差となって学校とそれ以外の社会を隔てているように僕には思えてきた。

モンスター・ペアレントはクレームばかりだが、それよりも何十倍の「普通の」保護者たちは先生にあらかじめ諦め、最初からコミュニケーションを断っていると僕には思えるのだ。

保護者たちが、現場の先生たちをまさに「親の視点」から見守り、その親の視点に立つ人は「静かな多数派」としての保護者たちだけでなく、一般社会人も含めた大勢の人たちも一緒になって、「先生」という人々に同情し遠慮し諦めている。

その結果、学校と、保護者たち生徒たちの間、学校と、一般社会人の間に大きな壁ができてしまっている。その壁が、不登校の原因に関する大きな意識のズレとなっている。

■先生は「思春期の人」

さらに僕が関心あるのは、なぜ保護者たちや一般社会人がこのように「先生に諦めている」事態になったのか、ということだ。

それはもしかして、多くの先生たち自身がもつ特徴、具体的に言うと、「思春期の人々」として先生たちは捉えられているのではないか、という点だ。

多くの不登校児を抱える親御さんたちと話してきて僕が感じるのは、「思春期から脱することができない子どものような人々」として、保護者たちから先生たちは捉えられているように感じる。

思春期の人に、大人が行なうようなリアルなネゴシエーションはできない、だからはじめから諦め、毎日自分の子どもを預けているという負い目からも無難な表面上だけのコミュニケーションにおさめよう。

そうした、「大人判断」を保護者たちは行なっているように僕には思える(この点では貧困家庭も中流家庭もよく似ている)。

このように、「世間から遠慮される存在」になってしまったのかもしれない先生というあり方について、先生たちがまずは自覚的になることが「教育改革」に通じると僕は思います。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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