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日銀の原田審議委員は何故、新政策に賛成票を投じたのか

 日銀の原田審議委員は10月13日に松本市で講演を行った。リフレ派の代表格ともされる原田氏であっただけに、政策目標を量から金利に変えてしまった9月21日の金融政策決定会合での「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の議長案に賛成票を投じたのかという点が注目された。

 日銀の政策委員にはリフレ派とされる委員が少なくとも3名存在する。岩田副総裁と原田審議委員、そして櫻井審議委員である。岩田副総裁は執行部であり、立場上反対票を投じることは難しい(過去に執行部内で反対票が投じられた事例は存在するが)。そして櫻井委員は自らこの新しいフレームワークの変更をインタビューではじめて示唆した立場となっており、反対票は投じずらい状況にあった。しかし何故、残りの原田委員も賛成していたのかが注目されたのである。

 原田委員の講演と会見の内容が日銀のサイトにアップされているが、そこから量を見限って金利の政策に賛成票を投じた本当の理由を探ることは難しい。しかし、会見の内容からはある程度推測できる部分も存在した。

 「ポジティブなショックがあった時に、例えば10年物金利について考えると、当然金利が上がるわけです。金利が上がるようなショックがあった時に金利をゼロに止めようとすることは、良いことがあった時にそれを更に拡大するような金融政策を行うことになりますので、これは金融緩和の強化です」

 「良いことがあった時」とは景気や物価にとってプラスの材料が出て長期金利が上がっても、イールドカーブコントロールによって長期金利はゼロ%に維持されることで、緩和効果が強まるとの説明である。それでは「悪いことがあった時」に長期金利が上昇したらどうするのか。それが本当にコントロールできるのかは指摘されていない。

 「ネガティブなショックで金利が下がるケースを考えてみます。仮に日本の輸出を急減させるようなショックがあれば、何もしなければ金利は下がります。金利が下がる時にこれをゼロに止めようとすれば、買入額を減らすことになりますが、これは金融を引き締めることになります。そうではなく、ネガティブなショックがあった時には、技術的にちょうど80兆円のペースになるかは分かりませんが、80兆円をめどに買入れを進め、その結果、金利が下がってもそのままにするということです。」

 何かしら世界的なリスクが強まり長期金利がさらに低下してしまう際には、相応の買入額の減額はせずに「概ね」80兆円を維持させることで金利低下を食い止めることはせず、それを放置する。いずれにしても善し悪しにかかわらず何らかのショックがあっても、金融緩和はむしろ深掘りされることになり、それを原田委員は納得したために、賛成票を投じたとも言えるのか。どうやら日銀の実務面での執行部の説得が功を奏したといったように感じられる。さらに原田委員は次のような名言も残していた。

 「リフレ派は量を重視するのだから量を重視しないような政策には反対すべきだ、というご質問についてです。まず、リフレ派という言葉ですが、デフレから脱却して、日本経済を成長軌道に乗せるために、2%の「物価安定の目標」を設定し、その達成を目指すのがリフレ派であると私は考えています。その意味では日本銀行は皆リフレ派ですし、政府において経済政策に関係している方々も、全てリフレ派です。」

 「2%の「物価安定の目標」を達成する必要がないというご意見の方は、ごく少数であり、敢えて言えば、異端の経済政策を標榜している方々ではないかと思います。」

 ここで注意すべき言葉は「日本銀行は皆リフレ派」というところではなかろうか。量とかに関わらずインフレターゲット目標を達成するのがリフレ派というのであれば、日銀だけでなく欧米の中央銀行も政府も皆、確かにリフレ派といえる。

 しかし、問題はそのインフレターゲットをどのように達成するのかという「手段」であったはず。私も原田委員の言うところの異端の経済政策を標榜している者に含まれてしまうかも知れないが、少なくともフリーランチ政策で物価を上げることはできない。そのフリーランチ政策(減税含めた財政拡大と債務拡大対処のための日銀の国債引き受け等のミックス政策)の効果とともに、それによる国債や円の信用の毀損の可能性を危惧しているのが、原田委員の言うところの「異端者」となるのであろうか。

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