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「チェーン店の地方出店にはFC制導入を義務化してしまえ」という暴論をまじめに書いてみる (玉木潤一郎 経営者)

何かと元気な東京に比べ、地方経済の衰退が問題視されている。

中小零細企業の収益低下はもちろんのこと、シャッター街と化した商店街の寂れ具合は特に深刻だ。

それらは、新幹線が停車する程度のいわゆる中核都市に類する街にあっても同様で、商店街に残っている商店のほとんどが、駅前のチェーン店や郊外の大型店に完敗している状況だ。

地方で零細企業を経営する筆者としても、このまま地方経済が衰退すれば商売の継続に関わる切実な問題である。

■チェーン店の地方出店の実態
出張などで訪れる地方都市の風景は、今や全国どこへ行っても同じであることに気づく。

筆者の住む静岡市でも、駅前にはパルコや丸井などのファッションビルがあり、商店街にはスターバックスや吉野家、マクドナルド、サイゼリアなどのチェーン店が並ぶ。

また繁華街には、ドンキホーテやシダックス、居酒屋系チェーン店の看板が目立ち、郊外に出ればイオンなどのSC(ショッピング・センター)や、ユニクロなどの量販店、ファミレスなど全国チェーンの飲食店が幹線道路沿いに建ち並ぶ。

それらのチェーン店が、強力な販売力をもって地方の商店街から客を奪っているのは明らかである。各個店の経営努力にも期待したいところだが、品揃えや販売力の面では小舟で巨大戦艦に挑むくらいの差があるのが現実だ。

■商店街から客を奪うチェーン店の出店は規制できないのか
しかし、商店街の衰退につながるからといって、「チェーン店は地方に進出してくるな」と言うのは、消費者の利益を阻害する上、自由経済の精神にもとる。

実は、かつては売り場面積の大きい店舗に関してだけは、大規模小売店舗法(大店法)により出店が制限されていた。大型店舗は面積によって、地元の商業活動調整協議会(商調協)による審議が必要であった。商店街はそこで大型店の出店に反対する機会があったわけだが、何度かの改正を経て、1998年には大店法は廃止され、かわって「大規模小売店舗立地法」(大店立地法)が成立した。

大店立地法は、大型店と地域社会との融和の促進を図ることを目的としており、店舗面積等の量的な調整は行わないものであり、商店街はかつてのように商調教を通じて大型店の出店に反対する機会を失った。

しかし大店法廃止前であっても、コンビニやファミレス、ファストフードなど、中小規模の売り場面積に収まるチェーン店は地方への出店をどんどん加速しており、それらは商店街から文字通り客を奪い、関係する地元の企業をも衰退させていった。

そこに大型店の出店規制が緩くなった事で、更に地方の商店は客を奪われていくことになる。

■なぜチェーン店が増えると地方経済は衰退するのか
消費者にとっては便利になるメリットだけに思える地方へのチェーン店の波及だが、実は地方で働き、地方で暮らす人々にとって、深刻な問題もはらむ。

かつての金融ビッグバンをはじめとする業界再編で、企業の合併が相次ぎ、金融機関や商社はもちろんのこと、地方に本社機能を置いていた企業の多くが、東京に本社を移転した。

チェーン店を展開する会社も同様で、飲食業を始めとする各業種でも買収と吸収と合併を繰り返し、結果的に本社が東京にある会社が多い。

地方自治体の税収面も含め、地方の企業や商店、またそこで働く人にとっては、東京本社のチェーン店が地方を席巻することが、様々な側面から経済に影響をおよぼす。

まず、チェーン店の出店にあたって、資金調達を行うのは東京本社であるから、金融機関からの借入れを行なうとしたら、都内の取引銀行からとなる。
店舗の建築や内装も、ダイワハウスなどお抱えの大手建築会社を使うケースが多い。
事務機器、パソコンや通信機器などランニングコストがかかるものも本社の取引先から支給される。
食材や消耗品、什器備品も、ほとんどが本社から納品される。
そして、パートアルバイトは地元であっても、店長クラスの人材は本社の正社員がやってくる。

更に、地方で売り上げた利益は本社が吸い上げ、本社が再投資する。東京に本社があるチェーン店の売上は、要するに東京に集まるのだ。

■地方に経済的メリットのある出店とは
ところで、かつて酒類販売が距離で制限されていた頃、地方の幹線道路沿いの酒屋がいつの間にかコンビニエンスストアに変わっていた、という光景をよく目にしなかっただろうか。

これは、酒屋の商店主が、コンビニエンスストア本部とのフランチャイズ(FC)契約を締結し、加盟店オーナーとなってコンビニ経営を始めた場合が多い。

さてこの場合、先に述べた地方から東京への金の吸い上げは部分的に解消する。

実は筆者も地方で、居酒屋、雑貨店、介護施設、ファストフード、不動産店舗などのFC加盟店を経営しているが、FC本部によって差異があるものの、地元の加盟店が地元で回せる金は、直営店が出店する場合よりもはるかに多い。

資金調達は、加盟店企業と取引する地元の地方銀行や信金である。
建物の建築は、加盟店が地元の建築会社に発注できる。
設備、什器、備品なども地元の商社に頼める。
食材や消耗品も、一部は地元で調達できるケースが多い。
そして、店長クラスの人材も地元で雇用し、店舗数が増えていけばエリアマネージャーや事業部長クラスの管理職まで地元の人材が担う。

更に、加盟店が地方で売り上げた利益は、その地方で再投資されるケースが多いだろう。

■地方企業がFC出店するメリット
大手チェーン店が地方に出店するにあたり、本社の直営店であるか、地方企業のFC加盟店であるかで、地方経済に与える影響の違いは大きい。

さらには、副次的に解消する社会問題もある。たとえば最近大きな問題となったチェーン店の過剰労務も、地元の加盟店では起きにくい。すき家のワンオペ(深夜に店員1人で店を運営する事)や、自殺者まで出た和民のブラック勤務も、地方にあって本社経費が薄く、利益目標が低い地元の加盟店企業であれば、起きにくい問題である。

また、地方の企業がFC加盟する事で、経営者もレベルアップする。FC化できるほど良くできた商売の仕組みを、内部からつぶさに見ることができるからだ。それは筆者がFC加盟店として地方で運営する中で実感してきたことでもある。

例えばファストフード業態の某FCでは、QSC(クオリティ・サービス・クリーンリネス)に関する管理ノウハウが、個人店では到底構築できないほどハイレベルなもので、特にフードセイフティー(食材の鮮度管理)に対する本部の指導は、極めて厳しい。

また居酒屋業態の某FCでは、アルバイトでも一定の衛生管理ができるようにするためのオペレーションの仕組みや、シーズン毎の新規メニュー開発など、やはり筆者が個人店だとしたらやり切れないであろう仕事量を、本部の業務部門が担ってくれている。

そんなFCの仕組みの中で、地元の経営者は加盟店として人材教育と経営計数の管理に専念できる。企業が新規事業に取り組む際には、一定のリスクを想定する必要があるが、既に直営店で成功しているFCの加盟店なら、そのリスクは軽減すると言っていい。

■地方経済のための提案
商店街の衰退は、実は大手チェーン店に客を取られてしまった事だけが原因なのではない。実際には衰退した商店街の中にあっても、独自の経営努力で収益を確保している個店は存在するのだ。

消費者の選択肢が増え、得られる情報が膨大になった現在では、個店の独自性、更にはその経営力により高いものが望まれている。

チェーン店を嫌う商店街の商店主も、むしろ家業存続のためにも異業種(大抵のFC本部が、加盟店が同業種の競業店舗を経営する事を禁じているから)のFC加盟を思い切って試してみることをお勧めする。

そこで一定の収益を確保して、経営基盤を安定させた上で家業を追求すればいいし、場合によっては新しい事業展開に打って出るヒントが見つかるかもしれない。少なくとも現状に籠って衰退していくよりは、商売に広がりが出ることは疑いない。

この際、チェーン店の地方出店には、一定の割合でFC化を義務化してしまえば、経済の東京一極集中を解消する一助になると考える。

もちろんFC本部となる大手チェーンにとっても、加盟店による展開を推進することでメリットはある。FC募集を通じて出店速度を高めたり、ノウハウの構築にもつながる。

大手チェーンが地元のFC加盟店に地方出店を任せることで、地方企業の収益を向上させたり、衰退した商店街の商店主が新規事業にチャレンジする機会を得る。そこから得た収益を、雇用や納税、また新たな設備投資など、地元経済に再投資することが出来れば、地方経済の発展にも寄与する。

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