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長時間労働撲滅キャンペーンに半分賛成、半分反対

この記事の最後にあるリンク先の署名運動「長時間労働撲滅プロジェクト」への賛同および拡散を求めるメッセージをある方からいただきました。

メッセージをいただく前からこの活動については知っていました。「いいじゃないか!何をどう動かすのか?」と思いサイトを見ましたが、実は文面を読んで強いひっかかりを感じていました。この違和感を誰にどう伝えたら良いものかと考えていましたので、これをいい機会として下記の文章を書きました。

私はこの署名を呼びかける文章の内容に、半分賛成、半分反対です。私自身が署名すべきかどうかも迷っています。ですから、呼びかけ人の皆さんの善意は多くの人に知ってもらいたいとは思うものの、この署名活動自体を100%の賛同の意をもって拡散することができません。

そこで、以下の文面を付けて拡散することとします。以下の文面もご一読いただいたうえで、それぞれの人が署名運動に賛同するかどうかを判断すればいいと思います。

違和感の原因は2つ。

(1)何を訴える署名なのかが不明です。漠然と「長時間労働反対!」ではなく具体的にどういう規制をかけるのがいいのかまで提案すべきだと思います。要求が漠然としてしまっているのは、長時間労働に反対するのが、過労死を防ぐためなのか、経済施策としての一億総活躍のためなのか、似て非なる論点が混在してしまっているからだと思います。受け取った側がどうにでも解釈できる署名運動は署名運動とは言わないと思います。「戦争反対!」という署名活動がほとんど意味を成さないであろうことと同じです。

(2)宛名が内閣総理大臣であることに違和感を覚えます。厚生労働大臣にすべきではないでしょうか。長時間労働の規制については、野党連合が4月に労働基準法改正案を衆院に提出しているのですからそれをベースに審議にとりかかればいいはずです。国民の信を得て議員になった方々が具体的な改善案を提出しているのに、それを無視して首相宛のこのような活動が広まるのでは民主主義のあり方としておかしいと思います。しかもこのようなやり方では、この国の内閣総理大臣が法改正において万能であるような誤解を与えます。国家のあり方として非常に危険なことです。

以上。

もちろん長時間労働には私も反対ですが、この手の署名運動はなんでもやればいいというものではないと思います。ネットのおかげで署名運動も気軽にできるようになりましたが、なんでも署名運動に訴えるようになると、規模の大きな運動にばかり注目が集まり、小さな声が届きにくい世の中になるという危険性があります。署名運動は、それが最も効果的である場合にのみ戦略的に使用すべき、市民の大事な手段であると考えています。

しかし上記2つの観点から、この署名活動には「思いつき」のような印象を受けます。考え抜かれた戦略や具体的に何かを成し遂げたいという覚悟が感じられません。悲しい事件のせいで、今すでに、長時間労働については国中の注目が集まっています。現状において、誰も長時間労働の規制に反対はしないでしょう。問題はどう規制するかです。そこに触れずして漠然と長時間労働に反対するのでは、世論を形成し表現する活動ではなく、世論に乗っかる本末転倒な活動になりかねません。

より良い署名活動にするために、私からのこの指摘を呼びかけ人の皆様の間で共有していただき、ぜひ改善をご検討いただきたいと伝えました。改善が行われたのであれば無条件で拡散します。

とはいえ今から活動の趣旨や宛名を変えることは難しいかもしれません。であるならば、たとえば上記2点の指摘があったことを、署名を求める文面に追記するだけでも、多くの人にこの問題についてのより広い視野をもってもらうきっかけになると思います。そこから新たな問題意識が広まり、新しい議論が始まれば、より効果的に目的に近づくことができるのではないでしょうか。

「長時間労働撲滅プロジェクト」

※追記:10月15日夜にこの記事を書きましたが、10月16日お昼時点で見てみると、署名の宛先は内閣総理大臣だけではなく、厚生労働大臣と働き方改革担当大臣も加えた3名になっています。署名を呼びかける文面についても「残業上限規制の設定とインターバル規制の義務化が必要であることを伝える」と趣旨を一歩明確にしてありました。指摘を反映してくれたようです。ありがとうございます。そのような法改正案はすでに野党連合が衆院に届け出ており、審議待ちであることももっと世間に伝わるといいと思います。また、過労死を防ぐための長時間労働規制とワークライフバランスに配慮した長時間労働抑制は似て非なるものであるという指摘は私の考え方であり、それらをまとめて片付けてしまえばいいじゃないかという意見があることも理解はできます。私は別個に議論したほうがシンプルに話が進みやすいと思いますけれど。過労死を防ぐための法改正は厚労省主導でずばっと素早く対処し、経済施策としてのワークライフバランス・一億総活躍については働き方改革実現会議でじっくりと議論してほしいと私は思います。

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