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医療・介護は、今以上に国民が負担せざるを得なくなるのにそれを政治家が言い出さないのは絶対におかしい - 「賢人論。」第25回(前編)藤原和博氏

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「賢人論。」第25回(前編)藤原和博さん「医療・介護は、今以上に国民が負担せざるを得なくなるのに、それを政治家が言い出さないのは絶対におかしい」

リクルートに入社後、数々の事業を手がけ、47歳のときに東京都初の民間出身の校長として杉並区立和田中学校校長に就任した藤原和博先生。教育現場においても改革を推進しながら、執筆活動もさかんに行い、「処生術―生きるチカラが深まる本」 「人生の教科書 よのなかのルール」 「藤原先生、これからの働き方について教えてください。 100万人に1人の存在になる21世紀の働き方」 など著書は数十冊に及ぶ。現在は奈良市立一条高校の校長として教鞭をとる藤原先生から、ありがちな社会保障論へ警鐘を鳴らす言葉を伺うことができた。

取材・文/猪俣ゆみ子(編集部) 撮影/中井秀彦

“元気な高齢者”“経済的に恵まれている高齢者”と“弱者”を一緒くたにして論じるのはまるで意味がない

みんなの介護 今日は、年金制度をはじめとする日本の社会保障制度に関することで、先生がお感じになっている危機感のようなものはありますか?

藤原 私が思うのは、高齢者の医療や福祉について、おしなべて平均的な話をするのはまったくの無駄だということです。例えば、「高齢者」とはどのような人を指しているのか?ってね。

みんなの介護 「高齢者」といえば、一般的には65歳以上の人です。介護保険の第一号被保険者も65歳以上ですし。

藤原 今、団塊の世代の人が65〜70歳になっていますが、元気な人は本当に元気なんです。どれくらい元気かというと、私とテニスの打ち合いができるくらい。その人たちが法律上は「高齢者」ということになるんだけれど、中には大企業の社長を退任したあとに財団で理事をしていて、「年金もらっているんですか!?」とこちらが思ってしまうくらい、経済的に非常に豊かな人もいるじゃないですか。

みんなの介護 内閣府によれば、貯蓄額が4,000万円以上の高齢者世帯の割合は全世帯のうち18.3%というデータが出ています。

藤原 とにかく元気な人や経済的にも恵まれている人と、ある種の弱者の人を一緒くたに論じるのはまるで意味がないと思うし、元気な高齢者は全高齢者の半分以上いると思うんですよね。そういう人たちより、むしろ若者のほうが“介護”を必要とするんじゃないの?と思ってしまいます。

みんなの介護 それは所得から見て、の話ですか?

藤原 そうですね。もう、一般論では通じない世界になってきているんじゃないでしょうか。色分けをして議論をしないと、って思うんです。私の母は85歳ですが、今のところ、あらゆる福祉や介護はいらないくらい元気なんです。でも、今の70代、80代でそういう人ってたくさんいますよね。中には90代の人でも。そう思いません?

みんなの介護 おっしゃる通りです。健康寿命も毎年少しずつ伸びていますし。

藤原 負担するべき人が負担するという部分、つまり、ある年齢以上は負担しないのだ、という感じに線引きしてしまうと、財政が今そうなっているように破綻への道を歩むしかなくなってしまう気がするんですよね。

「賢人論。」第25回(前編)藤原和博さん「昭和30年生まれの私の世代以下は日本の制度が間に合わなかった。団塊世代の資産を相続する人は経済的なメリットが大きいはず」

若者が高齢者を支えるというよりも、むしろ若者が高齢者に支えてもらう傾向が強まっていく

みんなの介護 以前、先生が意見されていたことで「おじいちゃん、おばあちゃんのお金をそのまま若者たちに相続することで、高齢者は若者を支えているんじゃないか」といったことが印象に残っています。

藤原 福祉と言っていいかはわからないけれど、どちらかと言えば、今は若い人たちがお金に余裕のある高齢者に支援してもらっているんじゃないかと思います。家庭内での場合は、子どもの教育費、結婚、出産に関わる費用を祖父母から子や孫へ贈与するといったときに、1500万円までは非課税になった。これは非常にいい制度だと思いますよ。設計するのは大変だったと思うけどね。

よく“若者が何人で高齢者を支えている”なんていう図が出てきますよね。昔は“お神輿”だったのが“騎馬戦”になって、その次に“肩車”…というふうになっていく、という。人口としては確かにそうかもしれないけれど、お金がどこにあるか?という面で冷静に見ると、若者が支えてもらう傾向が強まると思うんです。

みんなの介護 これからは高齢者に支えてもらう若者が多くなっていく…と。

藤原 団塊の世代の前の人たち、大正から昭和初期の人たちは戦争を経験して非常に厳しい時代を耐えてきました。でもそれだけに、特に女性って、辛抱強いし尊敬できます。価値観がガラリと変わった時代を何度も経験してきて、ちょっとのことではあまり動じないというか。その世代の人たちの多くは100歳まで生きて、今の長寿社会を引っ張ってくれるんじゃないでしょうか。

みんなの介護 これからも日本人の平均寿命が伸びていきそうですね。

藤原 一方で、「団塊の世代の人たちは若いときに荒れた食生活をしていたので、どうだろう?」という説もあるんですよ。この世代が90歳、100歳までトレンドを伸ばしていくと医療費がさらに膨らんでしまう可能性があるわけだけれど、もしそうではなかった場合、今度は団塊ジュニアに対する家の相続が行われる。おそらく、団塊世代の人たちは家を持っている人が多くてローンも払い終わっているでしょう。退職金も、使い切ってはいないんじゃないかな。彼らは日本の雇用システムや制度的保障が間に合った世代なので。

私は昭和30年生まれで、自分の世代以下は日本の制度が間に合わなかったと思っていて。団塊の世代の人たちの資産が下の世代に相続された場合、団塊ジュニアとそのジュニアたちには経済的にかなりメリットがあるんじゃないかと思います。

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