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衆議院はなぜ、国民の苦情救済を放っておくのか? - 南部義典

憲法によって国家を縛り、その憲法に基づいて政治を行う。
民主主義国家の基盤ともいえるその原則が、近年、大きく揺らぎつつあります。
憲法違反の発言を繰り返す政治家、憲法を無視して暴走する国会…。
「日本の立憲政治は、崩壊の危機にある!」
そう警鐘を鳴らす南部義典さんが、現在進行形のさまざまな具体的事例を、
「憲法」の観点から検証していきます。

 平成28年度の第2次補正予算が、きのう成立しました。永田町の業界用語で「店開き」と言ったりしますが、衆議院、参議院では今週から、予算委員会以外の委員会が動き出します。まず、安倍内閣の閣僚に対して、その所信を聴き、すべての会派が一巡する質疑が行われます(所信質疑)。それが終わった後(次週辺りから)、各委員会に付託されている法案の審議が順次、進められていくことになります。
 この臨時国会は、11月30日の会期末まで、あと1カ月半を残すのみです。しかも衆議院議員の補欠選挙(東京10区、福岡6区)が行われる関係で、一定の政治休戦が見込まれることから、各委員会の実働時間は相当短くなります。ほとんどの委員会は定例日が決まっているので、審議の効率を上げることにも限界があります。TPP協定案、年金制度改革関連法案を除いて、残りの会期は実に、見どころが乏しくなると思います。

苦情受付の制度をご存知ですか?

 さて、本題です。読者のみなさんは、衆議院のホームページをご覧になったことがあるでしょうか。ご覧可能な環境にある方はぜひ、アクセスしてみて下さい。ホームページの左下隅に「行政に関する苦情受付窓口」と書かれたところがあります。クリックすると、こんな案内が表示されます。

行政に関する苦情受付窓口について

 衆議院決算行政監視委員会では、広く国民の皆様から行政に関する苦情を受け付けております。皆様が、日常接しておられる行政との関係において、様々な行政の在り方や行政の改善について、具体的な苦情をお寄せ下さい。

1.この制度は、国民の皆様から寄せられた行政に関する苦情を、本委員会が行政監視活動を行うための基礎的な資料・情報源のひとつとして国政調査を行う際に活用しようとするものです。委員会が受理する苦情の範囲は、行政制度・施策の改善、行政の運用によって被っている具体的不利益や行政機関等の不正等に関するものです。

2.この制度は、寄せられた苦情内容に沿って個人的、個別的に応えるものではありません。また、行政以外の立法や司法等に関する苦情を受け付けるものでもありません。
苦情の受付は次のとおりです。(以下略 ※ファクス、郵便、電子メールの送付先が案内されています)

 決算行政監視委による、行政苦情の受付窓口です。国民が寄せた「具体的な苦情」を、「国政調査を行う際に活用」しようとするものです。1998年に設置された受付窓口は、ことしで19年目に入っています。
 昨年まで、受付窓口にどれくらいの苦情が寄せられているか、次表をご覧下さい。

 1998年を最初のピーク、2006年を第二のピークとして、苦情の件数が、急速に減少していることがお分かりいただけるでしょうか。2015年は微増ですが、桁が違います。この間、国の行政サービスが格段に向上した、あるいは野党が様々な苦情を受け止めることに成功し、件数が減少したわけではないことは、すぐにご理解いただけると思います。完璧な政治、行政など、いつの時代にもありえません。
 例えば、沖縄県東村高江のヘリパッド建設工事に関する「具体的な苦情」は、ファクス、郵便、電子メールで、この受付窓口に寄せられているでしょうか。各地の原子力発電所の再稼働問題、さらに東日本大震災、熊本地震など、被災地の復旧、復興の問題はどうでしょうか。安保法制が施行され、危険な訓練に臨む自衛官本人、またはその家族からの苦情は届いているでしょうか…。
 この受付窓口は、国民への広報周知が不十分であり、制度として機能していません。何の改善策もないまま、長らく放置されていることは明らかです。

「採択0件」…苦情が、国政調査に活用されたこともない

 決算行政監視委は、国民から寄せられた「具体的な苦情」を、個人的、個別的に応えるものではないとしつつも、「国政調査を行う際に活用」しようとするものだと説明しています。決算行政監視委が、当該苦情を「国政調査を行う際に活用」しようとすれば、委員会で「採択」の議決をする必要があります。
 しかし、決算行政監視委は、現在までの19年間、苦情を一件も採択したことがありません。6,411件はすべて、窓口で受け付けられただけで、委員会として取り扱われる機会はなく、書類の山と化しているのです。
 決算行政監視委は、苦情に関する調査を行い、非違を是正するよう政府に対して「勧告」をする権限も認められているのですが(衆議院規則92条16号)、その「秘密兵器」ないし「必殺兵器」は、未だに使えずじまいになっています。議員はよくも、こんな運用を長期間、放ったらかしにしているものだと、私はつくづく思います。

与党議員が欠席すれば、決算行政監視委は開けない

 決算行政監視委の委員長は、初期の頃を除いて、野党から選出されるのが慣例となっています。現在は、民進党の玄葉光一郎議員です。
 委員会の運用に様々な課題があるのであれば、委員長が職権で委員会の開催を決め、諸件を議決していき、改善していけばいいのではないか、との考えもあるでしょう。しかし、委員数(委員長を含めて40名)の過半数は、与党議員が占めているために、職権で開催が決まった委員会にはみな、欠席し、開会できないようにしてしまうのです。いわゆる「定足数」という、委員会開会のハードルです。2012年9月、NHKが報じた「復興予算の流用問題」を決算行政監視委で取り扱おうとしたときも(当時は、野党・自民党の議員が委員長でした)、与党である民主党の委員が欠席の構えを見せたために、委員会の開催が見通せなくなったことがありました。決算行政監視委の開催は、与党議員の出席という、高いハードルを越えられるかが、常に条件となっているのです。

制度の改革を論ずべき

 受付に寄せられた6,411件の苦情は、決算行政監視委に預けられただけで、救済の道を絶たれてしまった案件です。運用の怠慢、非効率をこのまま放っておいては、国民は数年後、受付窓口の存在すら忘れてしまうかもしれません。不当な行政、税金の無駄づかい、公務員の不祥事は、与野党共通の敵であって、絶対に放逐しなければならないことを、いま一度、思い起こすべきです。
 国会改革を唱える政党はいくつもあります。巨大与党を動かすことは容易ではないと思いますが、野党第一党(民進党)も、第二党(日本維新の会)も、真の提案型政党の座を争っているわけですから、この臨時国会の間、競って与党を巻き込みながら、一定の結論を出す努力をすべきです。立憲政治の根幹であると言うと仰々しいですが、困っている人のために政治があるという原点に、与野党は常に立っていなければならないと思います。
 今回、「衆議院はなぜ、国民の苦情救済を放っておくのか?」というタイトルにしましたが、参議院の方でも、決して上手く運用されているわけではありません。機会を改めて、論及したいと思います。

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