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TPPが時代遅れな理由

日本の国会ではTPPがそろそろ俎上に載るかもしれません。民進党は反対の構えを見せていますが、日本はTPP交渉参加国の中では最も批准されやすい国であることは疑いの余地はありません。そして、日本が批准しなければTPPが発動されないテクニカルな理由が存在します。よって、アメリカうんぬんするなら、まずは日本が批准をしてそのやる気を見せる、というのが安倍首相のシナリオかもしれません。

が、アメリカが批准しなければ発動しないというテクニカルな理由も存在する中でそれが達成できるか、大きな疑問符がついていることはご承知の通りであります。

私は1年以上前からTPPは発効しないとほぼ断言し続けてきました。アメリカがぐずってカナダも主体性をなくしていることを知っていたこともありますが、TPPの本質について考えるとそのコンセプトの辻褄がどうしても合わないと考えているからです。多くのアメリカ人やカナダ人が反旗を翻すその訳は何処にあるのでしょうか?

今は流行らない「リカードの比較優位」という経済の原則があります。これはリカード教授が自由貿易の原始的発想を提供した古典であります。例えを出します。日本は自動車づくりが得意です。韓国はスマホづくりが得意です。ですが両方の国ともスマホ、自動車それぞれ作っています。この場合、比較優位に立てばお互いが得意なものだけを作ればより効率的であるという観点のもと、日本は自動車だけを、韓国はスマホだけを作ればよいとするのがこの古典的理論です。しかし、日本はスマホ生産を止めるでしょうか?韓国は自動車製造を止めるでしょうか?意地でもやめません。それは第三国の市場シェアもあるからです。

この理論が発表されたのは1817年です。今から200年も前の時代には物々交換という原始経済から進化はすれど国家間貿易ではまだインキュベーションな時代だったと思われます。20世紀後半になり、爆発的貿易が摩擦を生み、国家間で大きな障害となったことは若い方はご存じないかもしれません。繊維、鉄鋼、自動車など日本が対アメリカで経験した試練は国際貿易の進化過程そのものでありました。

国家は自国にない素材や製品を他国からの輸入に頼り内需を成長させますが、同時に自国内生産を育む国策が生まれます。これは外国から買っていたものを自国で生産する自国内製品購入運動と自分たちも輸出で稼ごうとする発展的で自然な展開です。かつてのアメリカや今の中国がその典型です。

また、今世紀に入り、情報が地球儀を一瞬にして駆け巡ることで途上国で加速度的な高性能製品の生産能力を取得することが可能になりました。例えば自動車は私の調べる限り世界51か国で作られています。

これは比較優位の論理を根本的に崩してしまったとも言えます。企業は企業の論理で世界中に進出しています。進出国で生産ノウハウを投資という形に変えて移転させてきたため、生産能力の差が薄れてきているとも言えます。そのためにTPPのように参加国同士が同じ色に染まるようなルール作りは企業にとって防衛策は十分に施されており、別になくてもよいとも言えます。

企業の輸出向け商品、製品はマーケティングの観点からその国の文化、社会、風習に見合ったものに変えるか、現地生産をするのが当たり前です。例えばコメですがアメリカからの輸出攻勢で日本のコメはダメになるのではないか、と言われますが、アメリカの主力はインディカ米で日本人が食べるジャポニカ米の生産は150万トン程度ですので日本市場を崩壊させるとは思えません。また日本のコメ生産者はお国自慢のコメ消費をしますので外国産コメの市場は飲食店向けなど割と狭いとみています。

ではアメリカはなぜ、TPPにシャカリキになっていたのか、これはオバマ大統領に聞いてみたいと思いますが、本来は対中国包囲網であったはずです。そのためにEUよりはるかに大きな自由市場を作り、中国単一マーケットに挑戦したのであります。ではEUはどうだったのか、といえば進んだのは格差ではなかったでしょうか?

今回のTPPが日本に有利と言われるのはもっともな話でEUにおけるドイツのようなポジションを取れるのが日本であります。地政学的にもアメリカより東南アジア諸国にはるかに近い日本は文化、歴史的にも連携しやすい背景があります。また技術移転や海外進出を通じた日本の東南アジア覇権が可能になるストーリーであります。つまりTPPはアメリカにとって何も面白くない話ではないでしょうか?

ではTPPがなければどうなるか、ですが、各国それなりに外資を受け入れ、内需振興に励みます。私はこれを経済のダイリュージョンと称したいと思いますが、要するにグローバル化が生んだ実質的なTPP化であります。よって今更国家がああでもない、こうでもないと議論しなくても企業レベルでは日夜最適計画を進めています。よって私は官主導のTPPは時代遅れだと強く感じております。

言い換えればあって邪魔にはならないけれどなくても別に困らないものです。むしろあると困るTPP参加国は多いと思います。民間レベルのグローバル化は漢方のようなもの、TPPのような国策推進型は西洋医学の抗生物質のようなもの、と例えたら怒られるかもしれません。

では今日はこのぐらいで。

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