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製薬会社との関係 急速に進む透明化-内側から見た米国医療29

(この記事は2015年8月号(vol119)「ロハス・メディカル」 およびロバスト・ヘルスhttp://robust-health.jp/ に掲載されたものです。)

米国ではここ最近、医師と製薬会社の利益相反が問題視され、その関係性が見直されています。

10年ほど前まで、米国の研修医や医学生が製薬会社主催の昼食会に参加したり、ペンなどの贈答品をもらったりするのは“普通”でした。彼らの多くがそれを問題視しておらず、むしろ教育の面ではある程度歓迎すべきものとさえ考えられていました。面白いことに彼らは、自分自身の考えや行動はそれらに影響されないと考える一方で、自分以外の人は影響を受けると考える傾向にありました。

数々の研究で、昼食会への参加や少額の贈答品は、医師の考えや処方行動に影響を及ぼすことが示されています。製薬会社に対して懐疑的でない医学生は、ペンやノートに印字された薬剤名を見るだけでも、(無意識的に)その薬剤に好ましい印象を持つようになります。医学生や研修医の時点で製薬会社と交流を持つことで、根拠に基づく処方行動が阻害される可能性も示唆されています。 

これらを受け、研修医や医学生が製薬会社の営業活動と接することを禁じる病院やメディカルスクールが増えました。その結果、最近では製薬会社との交流や勉強会に対して懐疑的な態度を取る学生や医師が多くなっています。学会で製薬会社主催の昼食会が開かれていたり、夕食が出る勉強会への招待が回って来たりということはありますが、実際に私が米国で医師として働いていて、製薬会社の方に病院やクリニック内で遭遇したことは一度もありません。

製薬会社の活動により医師の処方行動が不当な影響を受けると、それは巡り巡って患者の不利益になります。一方で、製薬会社が正確な情報に基づいて自社の製品を売り込むことは、正当な営業活動であり、至極当然の企業行動です。従って、社会全体としては、医師-製薬会社関係の透明性を高めることで、健全な企業活動を促し、患者の利益を最大化するという医師本来の職務の遂行を後押しすることが必要になります。そういった背景から、ごく少額の場合を除き、製薬会社が医師および教育病院に支払ったお金(昼食会、勉強会、講演謝礼、研究費など)のすべてを公表することが、2010年に法制化されました。 

翻って日本の現状はどうでしょうか。少なくとも私がいた頃は、(研修医医局も含め)医局の周辺に製薬会社の営業の方を数多く見かけました。日本から持ってきていた封筒や文房具の多くに、薬や会社の名前が印字されていたことに最近気づき、我ながら驚きました。また、ここ最近の臨床研究における利益相反の非開示や研究不正には、深い失望を覚えます。一方で、医師が受けとった謝礼が製薬会社側から公表されるなど、透明性を高める取り組みも始まっています。私自身、この傾向は望ましいと思っています。正しい活動をして得た報酬を、隠す必要はありません。今後は、医師と医師団体が主体となり、より社会に対して責任ある形で、製薬企業との関係性を改善していくべきだと思います。

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