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死刑廃止の提言 日弁連はもっと踏み込むべきだった

 日弁連は、人権擁護大会でようやく死刑廃止に向けた宣言を採択しました。
死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言

 日弁連こそ死刑廃止に向けた提言をすべきと思っていましたが、今、ようやくこの宣言にたどり着いたことは感慨深いものがあります。

 世界の潮流というだけでなく、国家が死刑制度を維持するということ自体が時代錯誤なのです。死刑は国家による国民支配のための手段ですから廃止以外あり得ないのです。

 反対派の主張は、どれをみても感情論だけです。
日弁連「死刑廃止宣言」批判的な意見相次ぐ「偽善者だ」「私たちのお金使わないで」」(弁護士ドットコム)
「被害者支援をおこなう87歳のある男性弁護士は、議長の再三の注意を受けていたが、15分以上に渡り、日弁連の宣言案についての批判を展開した。「死刑制度に反対したいなら、自分たちのお金で活動してほしい。私たちのお金(会費)を使わないでほしい」と訴えた。
 日弁連が過去に死刑相当事件裁判の被害者参加に否定的な見解を示していたことをあげ、「被害者支援はうそっぱちだ、あなたたちは偽善者だ」と声を荒げる弁護士もいた。」
 刑事裁判手続きの中で、元々被害者参加制度を導入したこと自体が誤りなのですが、日弁連はその点を妥協し、死刑相当事件では裁判員裁判であることを前提に有罪・無罪の結論が出ていない段階で、遺族感情を流入させることの問題点を指摘したものであり、これは刑事裁判である以上、当然のことなのです。しかし、この弁護士は全く刑事裁判手続きといものを理解できていないのですから、死刑については感情レベルでしか語れていないということです。

 日弁連の提言については、以前から終身刑導入には慎重姿勢でしたが、それは踏襲されています。

 終身刑を導入する場合であってもというように終身刑自体を提言したものではなく、仮に導入される場合であってもという前提で裁判所の判断で減刑できる制度となっており、不動の終身刑ではありません。

 終身刑といってもその後の立法改正等で「減刑」はあり得るのですから、一旦、生命を絶ってしまう死刑執行とは明らかに質的な差はあるわけです。

 さて、一番、重要なのは、宣言の中のこの指摘です。
「生まれながらの犯罪者」という人間がいるのだろうか。私たち弁護士は、刑事弁護とりわけ情状弁護の過程で、多くの事件で、罪を犯してしまう要因には、貧困、障がい、虐待、家庭の機能不全、教育からのドロップアウト等の様々な社会的疎外の影響を受けたこと等、複雑な過程が関わっていることを学んできた。」
 だから犯罪者としての処遇として検討すべきというのは、それ自体は間違いではありませんが、何故、幼児や少年がこのような境遇に置かれしまうのかということの方が重大です。幼児のときから過酷な状況に置かれ、まともな教育すらも受けることができず少年時代を過ごしてきたという悲惨な状況を、私たちが放置してきたんだという認識を持ち、社会全体が変わらなければならないことです。

 この点について提言では「更生」の観点からのみ語られていますが、もっと深く掘り下げるべきです。

 日弁連の宣言や意見書の中で、いつも私が問題だと思うのは次のような指摘です。
「今、犯罪そのものは減少しているにもかかわらず、再犯率が高い状況が続いている。この事実は、罪を犯した者に対する処遇が成功していないことを示している。」
 犯罪が減少していること自体は問題ではありません。少年法の分野でも同様に日弁連の少年法の厳罰化に反対する意見書は、少年犯罪が減少していることを根拠の1つにしていますが、それだけでは明らかに分析が不足しています。

 今、犯罪率が減少していることや再犯率の高さそのものが問題とされているよりも、すぐに殺人に結びつく短絡的な犯行であったり、動機が理解できない犯行が増えているということです。

 だから多くの国民が不安を覚え、怒りも増幅し、取り締まりだったり厳罰化という要求に結びついていくのです。

 このような現象も閉塞感が著しい現代社会が生み出したものであり、単に全体の発生率が下がっているというだけでは説明としては薄弱です。

 政治の在り方や経済政策も含め、社会全体が変えていかなければならないということに踏み込む必要があります。

 多くが幼少期に問題を抱えているわけですから、これを放置することは許されません。日弁連は、もっと深く掘り下げて提言すべきです。
少年犯罪に対する厳罰化は、少年を切り捨てるだけの社会

どの子も笑顔になれる社会の実現こそ(安倍自民党政権には絶対にできないこと)

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