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特集:米国経済の誤算と処方箋

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 米大統領選挙の投票日まで、いよいよ残り1か月となりました。今週末には2度目のテレビ討論会(タウンホール方式)も開かれます。
 ところが今年の選挙戦は政策論争が不足しています。両者ともに相手を批判するばかりで、議論を深めるという感じではありません。トランプ候補は現状を全否定するけれども、建設的な提案はほとんどない。クリントン候補は党内左派に配慮して、本来の主張からズレている。特に経済政策は、両者がともに大きな政府を指向し、反自由貿易の論陣を張っている。これでは対立軸も見えてこないというものです。  上記のような感想は、「木に拠りて魚を求むる」の類かもしれません。米国経済の現状とあるべき処方箋について、本誌なりの見解をまとめてみました。

●期待外れだった米国経済

 今週末はワシントンで世銀IMF総会が行われる。そうなると、WEOこと「世界経済見通し」(World Economic Outlook)も更新される。これまで年4回の改訂のたびに、下方修正を繰り返してきただけに、今回の評価がどうなっているか気になるところである。
 10月4日に公表された新バージョンは、”Subdued Demand: Symptom and Remedies” 「抑制された需要:その兆候と対策」という表題になっている1。主要部分は次頁をご覧願いたい。世界経済は、今年3.1%、来年3.4%という低成長シナリオになっている。つまり2012年以来続いている3%台前半という低水準が続く見込みである。



 ただし、これまでとはやや違う傾向も見られ始めた。今年4月分と比較してみると、以下のような違いに気がつく。

(プラス面)
1. 新興国経済が少しだけ上向いている。中国とインドが少し上向き、マイナス成長となっていたブラジルやロシアは最悪期を脱した模様。
2. 資源価格の下落に歯止めがかかり始めた。石油価格は来年には上昇に向かい、非燃料の資源価格もほぼ底打ちしたように見える。
3. 消費増税を先送りしたことにより、2017年の日本経済見通しは大きく改善された。

(マイナス面)
4. 米国経済は明らかに期待外れで、今年は1%台の成長にとどまる見込み。その結果、先進国全体も1%台の成長となってしまった。
5. 世界貿易量は2年連続でわずか2%台となり、世界経済の成長率を下回ることになりそうだ。10年くらい前には、2ケタ成長で成長率の2倍以上あったものだが…。

 まとめると、中国経済の減速懸念が一段落し、新興国経済がやや浮揚して資源価格の下落が止まったけれども、米国経済の弱さと「スロートレード」という伏兵によって帳消しにされた、といったところだろうか。
 年初の時点では、米国経済は世界経済を牽引する存在として期待されていた。しかるに3四半期を終了した現時点では、「期待を裏切る存在」であったと言わざるを得ない。いったいどこに誤算があったのだろう。

●7-9月期GDPは反転するのか

 昨年12月、米連銀は7年ぶりのゼロ金利解除、もしくは9年ぶりの利上げに踏み切った。わずか0.25%とはいえ、長らく続いた量的緩和政策からの「出口の入口」に到達したわけである。米国経済は他国に先駆けて、「危機対応の時代」に終止符を打った。そしてイエレン議長は、今後の利上げペースは”Gradual”に、意訳すれば「年4回程度」になると言っていた。

 ところが今年になってみると、ここまで6回行われたFOMCでの利上げ回数はゼロである。昨年のわずか1回の利上げが、景気の足を引っ張ってしまったのだろうか。特にGDP成長率は、3四半期連続で1%前後にとどまっている



 過去3年半を振り返ってみても、米国経済の成長率が2%を下回ったことは数えるほどしかない。2016年がいかに期待はずれであったかがよくわかる。特に寄与度で分解してみると、個人消費は堅調なのだが、設備投資が3四半期連続でマイナスになっていることが目を引く。企業部門の意欲が低下しているようだ。

 他方、在庫投資が5四半期連続でマイナスになっていることが、全体の足を引っ張っていることに気づく。在庫投資は長期ではかならずゼロにな るはずなので、次の7-9月期にはそろそろプラスに転じるのではないか。7-9月期のGDP速報値は10月28日に発表されるが、これが仮に3%程度の成長率になってくれるようなら、米国経済への過度な悲観も修正されるかもしれない。

●なぜ財政政策に期待が集まるのか

 とはいえ、「出口戦略」を歩み始めたばかりの米国経済は、非常に脆弱な回復過程をたどっている。大きな金融危機の後は、どこでも大規模な金融緩和や財政出動が行われる。それで最悪期を脱した後は、回復が想像以上に緩慢なものになってしまう。そのこと自体は、日本経済がかつて身に沁みて体験したことでもある。  あらためて整理してみると、世界経済全体が2008年の国際金融危機を契機に、「長期停滞」(Secular Stagnation)的な状況に突入しつつある。ところが、通常の経済対策は既に散々カードを切った後である。各国政府としては手詰まりになっている。



現在進行中の米大統領選挙においては、クリントン、トランプ両候補が共に「大きな政府」と「反自由貿易」を掲げている。これでは対立軸が成立しないから困るのだが、「いまこそ財政政策を」という声は確実に高まっているようである。

しかるに「インフラ投資はいいとして、何にカネを使うのか」「いつまで、いくらくらいまで使うべきなのか」といった具体的な議論はあまり聞こえてこない。せっかく大統領選挙という機会があるのだから、各候補が「大陸横断新幹線」のような夢のあるプランを掲げて競わせればよいと思うのだが、聞こえてくるのは「メキシコとの国境に壁を作る」ことくらいである。国境に壁を作る事業は乗数効果が低そうであるし、意外と高くつきそうである(米墨間の国境のほとんどは私有地であるとのこと)。何より、米国の威信を高めるような事業とはまったく思われない。

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