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検査機器の革新、研究の進歩により がん、生活習慣病は予知・予防の時代へ

従来、健康診断や人間ドックの目的は、日本人の三大疾病である「がん、心疾患、脳血管疾患」の早期発見、早期治療だった。今や検査機器の進化によりがんだけでなく、心疾患や脳血管疾患に関わりの深い生活習慣病の予知・予防も可能になりつつある。

疾病の早期発見から発症リスクの予知・予防へ


山門 實(やまかど・みのる)
足利工業大学看護学部学部長。日本人間ドック学会副理事長。社会福祉法人三井記念病院総合健診センター特任顧問。医学博士。人間ドック健診専門医。1972年群馬大学医学部卒業。83年三井記念病院腎センター科長、91年同健康管理科部長。94年同総合健診センター所長兼任。2014年4月より現職。日本抗加齢医学会の評議員、日本高血圧学会、日本動脈硬化学会などの功労会員を務める。


がん検診は近年、高精度な画像診断機器や、血液中の成分を分析する機器の開発により、飛躍的な進歩を遂げてきた。

この点について長年、人間ドックの健診専門医として関わり、日本人間ドック学会の副理事長も務める足利工業大学看護学部長の山門實氏が語る。

「がんはCTやMRI、特殊な検査薬を用いるPET検査の画像診断技術の進歩により、かなり小さな腫瘍でも発見できる時代になりました。また腫瘍マーカー検査により、がんにかかるリスクの高い人をスクリーニング(ふるい分け)することも可能となっています」

もともとの目的である、がんなどの疾病の早期発見だけでなく、血液中の物質を測定することで「疾病のリスク」を見定める。とりわけ、がんに関しては「将来、がんになる可能性」を含めて診断を下せる時代になってきたと山門氏は語る。

「私は40年以上内科医を続けるなかで、血液検査をベースに数多くの診察をこなしてきました。そうしたなかで痛感するのが『血液はうそをつかない』ということです」

体に変調が起これば、血液に何らかの異常が見られる。とくに近年では、検査機器の進化によって、驚くほどの精度で見極められるようになったという。

さらにがん以外にも、高血圧症や糖尿病、脂質異常症の生活習慣病についても診断から発症リスクまで、検査でわかるようになってきた。

「これは画期的なことであり、健康診断や人間ドックは新たな時代に入ってきたといえます」

生活習慣病の元となる酸化ストレスの測定も可能に


体内で活性酸素が過剰に発生して酸化度が高まると、血管内で悪玉のLDLコレステロールと結びつき、血管壁を傷つけて動脈硬化を促進する。

高血圧症や動脈硬化の専門医としても知られる山門氏が最近明らかにしたのが、体内の酸化バランスの不均衡と病気との関係である。

食べ過ぎや運動不足によりメタボリックシンドローム(メタボ)になると、動脈硬化が進み、心臓病や脳卒中のリスクが高まることは広く知られている。しかし、その理由は特定されていなかった。

そこで山門氏は「内臓脂肪の蓄積と体内の酸化度の上昇が、体内の酸化バランスを崩し、動脈硬化を促進する」との仮説を立て、それを立証した。

「酸素は体を動かすエネルギーになる一方で体をさびさせ、老化につながる活性酸素を作り出しています。健康な人間の体は睡眠中などに活性酸素を処理する抗酸化能が働き、酸化を防ぎます。この酸化度と抗酸化度の均衡状態を酸化バランスといいますが、この均衡状態が崩れた状態を『酸化ストレス』といいます」


脳や細胞が活動する際には、酸素を使ってエネルギーを作り出すが、一方で正常細胞を傷つける活性酸素も発生。酸化バランスが崩れると、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病を起こす。

メタボの人とそうでない人との酸化度を調べたところ、メタボの人の方が男女ともに酸化度が高く、内臓脂肪量に比例して増えているという事実が明らかになったという。

内臓脂肪の蓄積により、活性酸素の除去能力は低下することが証明されることとなったのだ。この証明に役立ったのが、わずかな採血で、活性酸素の代謝物から酸化度を数値で測定できる最新の測定器だった。

「自覚症状のない動脈硬化は、頸動脈エコーによるチェックが必須でした。それが血液内の酸化度を簡便に測れるようになったことで、血管の形態的な変化が起こる前に、診断さらには予防策まで講じることが可能になったのです」

検査により酸化バランスが悪いことがわかれば、メタボにならないように毎回の食事を腹八分目にする、早歩きなどの有酸素運動を採り入れる、というように食生活や生活習慣を改善することができる。

この酸化ストレスの測定は自由診療で2500円程度。検査項目として採用する人間ドックも増えている。

健康への投資として 人間ドック活用のススメ

がん検診の充実、生活習慣病の発症リスク検査や動脈硬化対策ともなる簡便な酸化ストレスの測定……。人間ドックは、格段の進歩を遂げつつある。

山門氏は、最先端の検査機器による進歩を強調する一方で、人間ドックを受ける際には数値結果だけでなく、専門家である医師の事後指導に耳を傾けてほしいと訴える。

「人間ドックのいいところは、医師が個別の結果を精査し、今後どのような病気のリスクがあるかを、受診者に説明することにあります。この事後指導こそが人間ドックの“メインディッシュ”だと私は考えています」

また、経年受診も重要という。人間ドックで今年測定したコレストロールや血圧の値が正常値の範囲内であったとしても、前年の数値より、高くなっているか、低くなっているかで捉え方が異なってくるからだ。

「正常値だから安心というわけではないのです。悪化していれば、3カ月ごとにチェックする方がいいという助言を行うこともあります」

また最近では高齢社会を反映して、認知症やロコモティブシンドローム(運動器症候群)などの早期診断や、発症リスクの検査を受ける人も増えている。とくにこれらは発症すると治療が困難な面があり、QOL(生活の質)を維持するためにも人間ドックでは早目の検査を推奨している。この二つについては「先制医療」によって病気が発症する前に予防的な治療を行い、発症を遅らせることも可能になっている。

人間ドックを受けるメリットはわかってきたが、実際には何歳ごろから受けた方がいいのだろうか?

「まず心がけるべきは節目検診です。まず20歳から40歳までは5年ごとの受診を心がけるべきでしょう。またがん検診には性差があります。とくに女性の場合は子宮頸がん検診を20歳から、乳がん検診は30歳から、いずれも2年ごとの受診を国では推奨しています。また生活習慣病健診は40歳から受けるといいでしょう」

がんや生活習慣病は遺伝性のものもあるので、家族・親族の既往歴を確認しておくことも重要だ。両親にがんがあればがんの検診を、心臓病であれば心臓ドックを、脳卒中であれば脳ドックを受けておくといいだろう。リスクを見定めて人間ドックの受診を心がけたい。

がんは初回受診で、見つかる可能性は0.25%といわれ、1万人で25人の計算だ。そのうち75%は早期発見で、医療技術の進歩によって治癒する可能性は高くなっている。もし、がんなどの疾病にかかっていることがわかったら、人間ドックの担当医は信頼できる専門医を、責任を持って紹介する。

「健康はなにものにも代えがたい、人間の財産。もし、がんが見つかり、ステージが進行していれば、治療費も莫大なものとなります。人間ドックを健康に対する投資と考えれば、そう高いものではないでしょう」

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