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1.7万字全文掲載『俺たちの働き方改革ナイト』働かせ方改革の虚像を剥ぐ

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9月8日に、気鋭の育児・教育ジャーナリストであるおおたとしまささんと「俺たちの働き方改革ナイト」というイベントを開催した。おかげ様で超満員。しかも、男性が9割強。皆、働き方改革や、イクメン現象に対して曖昧な不安を抱いているのだと確信した。

昨日、東洋経済オンラインに記事が掲載された。サイトの関係で、載ったのはダイジェスト版だったので、東洋経済オンライン編集部、おおたとしまささんの了解のもと、イベントで語られた内容の全文を掲載する。

手前味噌だが、多様な視点がカバーされた超絶良対談なので、ぜひお時間のある時に全文を読んで頂き、シェアして頂きたい。



おおたとしまささんの最新作も夜露死苦!

常見陽平×おおたとしまさ イベント
「俺たちの働き方改革ナイト〜ワーク・ライフ・バランス、イクメン現象の虚像を剥ぐ〜」
『ルポ 父親たちの葛藤 仕事と家庭の両立は夢なのか』発売記念

「ワーク・ライフ・バランス」「イクメン」「女性活躍」「労働生産性向上」「雇用流動化」などという言葉を耳にするようになって久しい。国家が掲げる「一億総活躍プラン」における「働き方改革」のなかでもこれらは主要なテーマとなっている。「働き方改革」によって、労働のあり方、価値観、育児や家事などの生活において、新しい変革がもたらされつつある。しかし、これらの変革は、単に人々の生活を豊かにするためではない。低成長社会、労働力人口の減少などの変化が関連している。これらの変革が、さらに労動者の首を締めつつある可能性があるのではないか?それでは一体どのような働き方が望ましく、そこで国家はどのような役割を果たすべきなのであろうか?育児・教育ジャーナリストおおたとしまさ氏との公開対談の模様をお届けしよう。


●イクメン現象と女性の社会進出は不況の賜なのである

おおた:「東洋経済オンライン」で、「1人ブラック企業化するしかない父親たち」というテーマの記事を3本書きました。よく、「お父さんたちは大変なんだ!」ということを言うと、「いやいや、無駄が多いからだろう!」とか、「労働生産性が低いからだ!」とよく言われるんですけれど「いやいや、ちょっと待てよ」というような記事を3本立て続けに出したら、累計240万PVを記録するという。

常見:注目度が高いテーマだということでしょう。今日のイベントもおかげ様で満員で。しかも、男性比率9割強というのは、みんなが問題だと思っているということではないでしょうか。よい問題提起だと思います。

今はイクメン現象たるものをみんなで煽っているんだけれども、「イクメンってやっぱり“無理ゲー”ではないのか?」っていうことがあって。「僕たちはどこまですごくならないといけないのか?」みたいな問題でもあります。

そもそも、イクメン現象は、実はブラック企業化みたいなものじゃないかと。

おおた:ブラック企業化は、個人個人が、要は、お父さんが自分で会社でも徹底的に働くし、家でも徹底的に働き、一人ブラック企業化しているのではないかというね、そのようなことを書きましたね

元朝日新聞の和光大学教授の竹信三恵子先生は『家事労働ハラスメント』(岩波新書)という本を発表しています。家事や子育てという、お金ももらえないし、誰も褒めてくれないような労働を一気に女性が引き受けていたことによって、日本の男性は、俺たちイケイケだぜという風な時代を謳歌できたんだという。だけどそれって不公平だよねって、男女平等という観点でもそうだし。「女性の社会進出」なんて言いますけれど、今まで女性は社会にいなかったのかみたいなニュアンスがよく言われていて、それってひどいですよねと。誰からも評価されていない仕事を押し付けられているという意味で、この「家事労働ハラスメント」が最初に使われたんですよね。

常見:「女性の社会進出」は賛成ですが、その前に家庭も立派な社会であり、家事労働は労働なんです。

これは「日本的・昭和的フレキシキュリティ」の崩壊ですね。「フレキシキュリティ」というのは、「フレキシビリティ」と「セキュリティ」の合わさったものです。男性が終身雇用で働く。会社の福利厚生もある、年功賃金で上がっていく。フレキシビリティは、女性が柔軟に対応するということです。

主にこれは、女性なんですけれども、家事をしながらパートで働き、家事労働というものを家庭の中で引き受けることによって育児もできる。男性の給料でうめる、と。

おおた:数年前に別の意味で「家事ハラ」という言葉が流行って、炎上しました。

ある住宅メーカーさんが、共働きの、2人で家事をするためのお家を作りましょうというプロモーションのなかで、せっかく旦那さんが家事をやろうと、例えばお皿洗いをしたりとか、洗濯をしたりとか、洗濯物を畳んだりとか、そういうことをしているんだけれども、それを奥さんが「ちゃんとできていないじゃない!」って言っちゃって、旦那さんがやる気をなくしてしまうという。そういう意味での「家事ハラ」という言葉をCMで使ったところ、大炎上してしまったということがあったんです。

元々はそういう社会構造のなかで、女性が評価されない仕事を押し付けられていることを「家事ハラ」と言っていたんですね。

だけど、この低成長時代、景気の停滞時代、労働者の数が減っていく時代において、共働きをする必要が増えていく。男女平等が進んだから共働きが増えていったというよりは、経済的なニーズのなかで共働きをせざるを得ない家庭が増えてきたという文脈が、たぶん正しいと思うんですよ。

常見:女性の社会進出が進むのも社会が苦しくなった時です。アメリカで女性の社会進出が進んだのは、ウーマンリブ運動ではないですからね。「双子の赤字」だと言われた時代に、男性1人の給料で家庭がもたなくなり、女性も働かざるを得なくなった。日本でも、皮肉なことに貧しさが社会を変えるのではないかと見ています。

立命館大学社会産業学部の筒井淳也先生が『仕事と家族』(中公新書)のなかで指摘しているのですが・・・。ざっくり言うと、「高学歴バリバリキャリア層の2人とも稼ぐ共働き」と、「貧しい人同士で結婚してしまった、貧しい共働き」っていうのが現に存在するんですよね。

おおた:筒井先生が指摘しているのは、これから共働きが当たり前の世の中になっていくと、ますますこの学歴格差、経済格差、そして教育格差が進むんじゃないかと。要するに、高学歴の女性は高学歴の男性と結婚するし、そうじゃない人たちはそうじゃない人たちで結婚すると、差が大きくなるわけです。そしてそれが次世代にも継承していくと、ますます格差はどんどんどんどん広がっていって、進むんではないかということを、筒井先生が指摘しているんですよね。

このように、共働きが増えてきて、女性も働くようになってきたところ、中野円佳さんの『「育休世代」のジレンマ 女性活用はなぜ失敗するのか?』(2014年、光文社新書)という本が話題になりました。

女性が今の社会のなかで働こうと思うと、ものすごいジレンマを抱えなくてはいけないという時代になってきた。その一つの理由としては、男性が家事をやってくれないし、育児をやってくれないし、共働きでどっちも働いているはずなのに、どうしていつまでも女性だけがやらなくちゃいけないんだというような、ざっくり言うとそういう風潮が出てきたんですよね。そこで、男性も育児しようよ、家事もしようよと。これがイクメンに対するニーズが出てきた背景です。

僕が皮肉っぽくよく言うのは、「イクメンは不況の賜物である」ということです。不況が生んだものであるというか、そういう言い方もするんですけれども、そうやって、男性でも家事や育児をするイクメンのニーズが高まってきましたよと。そして、これで解決なんじゃないかと思ったとところ、いやいやいやそうではないと。今まで男性が仕事をしていましたが、奥さんも仕事をしているから、なんとか自分だけが楽をするのではなくて、奥さんの負担を僕も分担しなくてはいけない、そこまではわかっている。

だけど、仕事終わって、フルタイムで働いていて、そして家に帰ってきてから慌てて料理作ったりとか、もしくは料理が間に合わなくて皿洗いをしたりとか、子どものお風呂を入れたりとか、帰ってきてからも休む暇がないという風な状態のなかで、疲弊していくお父さんたちというのがいるわけなんですね。

私が、もうかれこれ7、8年くらい完全に個人で、ボランティアで「パパの悩み横丁」というサイトをやっていて、そこには日々お父さんたちからメールで悩みが送られてくるんですね。そこでよくあるのが、「僕は仕事をしていて、家でもほとんどの家事をやっています。それでも、妻からはまだ足りない、世の中のイクメンはもっとやっていると言われます。本当なんでしょうか?」という質問なのです。

かといって、じゃあ女性がやっていればいいのかといえば、そういう問題でもないと。どこにこのしわ寄せを寄せたらいいのってなってくるんですよ。奥さんもつらいし、夫も辛いと。

今度じゃあそれがどこにしわ寄せがいったかというと、中間管理職なんですよ。これが「イクボス」なんですよね。「イクボス」っていうのは、育児に理解のある上司という意味で、最近よく聞かれるようになってきた言葉なんですね。そして、今度は中間管理職が部下の育児をちゃんと理解して、例えば子どもが病気になったらちゃんと帰れるような体制を作って、もしくは育児中の男性社員であれば、早い時間に帰れるような体制を作って、でも成果を落とすなよということを言われているというね。

でも、それ無理だよって。その分1人や2人補充をしてくれるのであれば、やりようがあるかもしれないけれども、今までと同じメンバーで、かつその人たちも早く家に帰れるようにとか、残業をしないようにと言われているなかで、それでも今まで以上の成果を出してくれよというようにと今中間管理職は求められていると。結局このしわ寄せをぐるぐるぐるぐる3人で回してババ抜き状態になっているんじゃないのということで、この本の中では、まず男性の本音をインタビューして、次に奥さんも、会社の管理職もインタビューしています。

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