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日本の将来を救うには女性が「稼ぐ」しかない。

2016年は日本とシンガポール国交樹立50周年の年。

日本はシンガポール建国のわずか1年後に正式に国交を結び、さまざまなサポートを行ってきた国としてシンガポールでの日本人気は高く(特に最近は旅行先としても非常に人気で、リー・シェンロン首相を筆頭に、シンガポール人観光客の訪日ラッシュが続いています)、今年はシンガポールでも文化交流を中心に記念行事が目白押しです。

そんな中、先月末にリー・シェンロン首相をはじめシンガポール政財界の要人たちが日本を公式訪問し、安倍首相らと会談。私も訪問行事の一環として東京で開催された「日本・シンガポールの経済連携が拓く、ASEANの持続可能な成長と社会イノベーション」というシンポジウムを聴講してきました。

■「失われた20年」の間に大きく水をあけられた日本


出典:世界経済のネタ帳

よく知られていることですが、シンガポールの1人あたりGDPは2007年に日本を抜き、アジアトップとなっています。

1980年半ばくらいまでは日本の経済成長の少し後をシンガポールが追いかけていましたが、86年にバブル経済が始まると急速にその差が広がり、バブル崩壊後の90年代半ばまで日本がリード。しかしその後、徐々に差が縮まっていき2007年にはついに逆転。(1ドル80円台の円高期を除き)日本がUSドルベースで90年代後半からほぼ横ばいの状態を続けているのに対し、シンガポール経済は順調に右肩上がりで成長し、2015年時では日本のバブル期以上の差が開いています。

どうしてここまで日本はシンガポールに水をあけられてしまったのでしょうか?

■「資源は人しかない」は日本もシンガポールも同じ

日銀の黒田総裁は、金融の異次元緩和やマイナス金利の導入などの前代未聞の経済対策を行いながら、たった2%のインフレターゲットさえ3年以上たっても達成できない原因を「原油安」と「消費増税後の消費マインド冷え込み」としています。しかし、原油安はシンガポールも同じ、消費税は日本よりずっと早くに7%になっていました。ところが逆に、シンガポールではGDP拡大と同じくインフレも着実に進んでいます。(特に私がシンガポールに移住した2010年以降のインフレ率は非常に高くなっており、日本円で給料をもらってきた身としては生活がどんどん厳しくなったと実感しています)

東京23区程度の面積しかないシンガポールですから、当然、天然資源はほとんどありません。「資源は人のみ」の条件は日本と同じである上に、極端に狭い国土という条件を加味しれば産業育成は日本よりもっと厳しいはずです。それなのにシンガポール経済が順調に成長している理由は何か? 私は「人」という資源の有効利用の仕方に違いがあるのではないかと思うのです。

■「女性活用」するしかなかったシンガポール

アベノミクスでは「女性が活躍する社会」を喧伝していますが、少子高齢化で日本の労働人口が減少する中、「働けるのに働いていなかった」女性を労働市場に投入して経済の活性化を図るのは至極もっともな話で、むしろ遅すぎるくらいの政策です。

いっぽう、シンガポール政府は51年前の建国以来、経済成長を求めるには「女性の活用」しかないことを完璧に理解していました。

というのも、シンガポールでは皆兵性を採用しており、男性が17歳から2年間フルタイムで、その後も予備役で10年以上にわたりパートタイムで兵役を務める社会の中で、経済成長に必要な労働力を確保するには女性を「活用する」他に方法はなかったのです。特に10代後半から20代にかけては、兵役のない女性が先に社会に出ますので、若いうちには同じ年齢でも女性のほうが先に出世するケースが多く、その現象が更に女性の労働戦力化に拍車をかけていったとも言えます。当然、政府の子育て支援や両立支援は手厚く、保育園の整備や外国人ヘルパーの導入など、女性がキャリアを中断せずに働くための環境作りを着々と整備してきました。

つまり、男女の不平等是正や、女性の働く権利の保証などというフェミニズム的お題目とはまったく関係なく、ごくごく実務的に労働力を確保するために、女性が働きやすい、働きたいと思える環境整備をしてきたのがシンガポールなのです(逆に専業主婦世帯をサポートするような優遇政策はごく少数の低所得者層を除きほぼありません)。

■男性と同等に「稼ぐ」女性の存在でGDP拡大

その結果、建国50年後のシンガポール経済がどうなったのかは、上の表に見る通りです。

大企業のトップからスタートアップに至るまでどんな職場にも必ず女性がいますし、性別による昇進差別という話は寡聞にして聞いたことがありません。勢い、優秀な女性の給与はどんどん上がっていきます。

例えば、私が住むマンションの最上階、メゾネットタイプで専有面積が最も広い部屋に、私の夫の女性上司の夫婦が住んでいます。彼女は40代半ばですが、マンションの価格は日本円にして2億円近く。乗っている車はBMWのオープンカーで、COEという車の所有権価格も含め恐らく2千万円は下らないはずです(ご主人の車はベンツ)。

どうしてこんな贅沢ができるかといえば、やはりダブルインカムで夫婦が働いているからとしか言いようがありません。この夫婦の世帯年収は恐らく4,5千万円前後と推察しますが、個人所得の最高税率が22%で2人分の年収があれば高額マンションや車など多少高い買い物もできますし、どちらかが失業したり働けなくなったときのリスクヘッジにもなりますので、貯蓄よりも消費に所得を回しやすい状況ができます。結果、「欲しいものを買う」という行動につながり、GDP拡大の好循環が回っていると思われるのです。

実際に、うちのマンションの駐車場にはベンツやポルシェなどがひしめいていますが、それらの高級車の所有世帯はすべて共働きで、夫と同じくITや金融、不動産業界などで働く妻たちがばりばり稼いでいます。

■超エリート女性大臣のスピーチと日本の若手政治家の落差

前述のシンポジウムでは冒頭に、来賓として出席されたシンガポールのシム・アン上級大臣(文化・コミュニティ・若者省)のスピーチがありました。若干41歳の女性大臣は高校時代に留学して学んだという流暢な日本語を交えながら、具体的な数字や企業名を一つずつ挙げ、今後のシンガポールの経済戦略や日本との提携関係について簡潔かつ詳細に語りました(ちなみに彼女の学歴はラッフルズ女子高から政府奨学金でオックスフォード大学卒業、スタンフォード大学で政治修士号を取得と、絵に描いたような英才教育を受けてきたエリート政治家です)。

あえて名前を挙げませんが、日本側ホスト役として同じくスピーチをされた自民党の若手世襲議員の話にはまったく内容がなく、数字も具体例もない、聞いていて思わず暗澹とするような内容でした。彼のような政治家ばかりになってしまえば、日本の将来はさらに悪くなるとしか考えられません。

「稼げる」能力をもった女性を有効活用して労働生産性を底上げし、その結果、その夫婦世帯で稼いだお金を消費や投資に回して経済を循環させていく。このように政府はそろそろ、「女性活用」がどういう意味をもつのか、ということを「女性が輝く」というような曖昧な美辞麗句ではなく、もっと明確に「しっかりと稼いで消費してほしい」と表明し、そのために女性管理職のクォーター制や子育て支援など具体的な政策を実践していくことを周知するべきではないでしょうか。

本日、専業主婦の扶養控除枠撤廃の動きが廃案になったそうですが、控除枠を103万円を150万円にするというような小手先の改革ではなく、本気で女性に頑張って働いてもらわなければ日本の未来はない、という事実を見据え、この問題について安倍首相をトップとする現政権に本気で取り組んでほしいと思います。

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