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相次ぐノーベル賞、しかし疲弊する研究現場、ポスドク若手研究者は育休も産休もなく家族形成すら困難

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2016年のノーベル医学生理学賞を受賞した東京工業大学栄誉教授の大隅良典さんが、基礎研究の大切さとともに日本の基礎研究への公的援助の貧困と、若手研究者を支援するシステムが必要だと指摘されています。こうした大隅良典さんの指摘にも関連するのですが、私、月刊誌『KOKKO』で「疲弊する研究現場のリアル」を特集したことがありますので、その特集の巻頭で行った座談会の一部を以下紹介します。

▼月刊誌『KOKKO』2015年11月号(第3号)
座談会
悪化する研究環境と
ポスドク若手研究者の無権利

川中浩史 学研労協(筑波研究学園研究機関労働組合協議会)事務局長
     全経済産総研(産業技術総合研究所)労組書記長、産総研研究者
大高一弘 全通信研究機構支部副支部長、情報通信研究機構研究者
加藤(仮名)国立研究機関で働くポスドク当事者(30代)
榎木英介 科学・技術政策ウォッチャー
     近畿大学医学部附属病院臨床研究センター講師
(※司会・企画編集=井上伸)

基盤経費10年で十数パーセント減
日を追うごとに疲弊する研究現場

――今年6月に国公労連と学研労協で開催した国立試験研究機関全国交流集会(※以下、国研集会)に向けて取り組んだ、現場の研究者等へのアンケート(872人回答)で、研究環境が悪化している声が多く寄せられていますね。

川中 産総研も含め各国立研究機関が独立行政法人化されて15年を迎え、基盤となる運営費交付金が毎年軽減され、日を追うごとに研究現場が疲弊しています。それによって産業応用を目的にした外部資金の獲得競争が熾烈になっていて、外部資金のウエイトが高くなるばかりです。

今年4月から法人名が国立研究開発法人と変わりましたが、国研集会のアンケートの中で研究者が最も大事な役割だと認識しているのは、民間や大学では実施することが困難な国民生活に資する基礎研究と応用研究です。研究者としては、それをボトムアップで推進していく役割を目指しています。しかし実際には、研究費が足らない、研究支援部門の職員が少ないため研究をなかなか進められない状況です。その中で5年に1回、研究機関全体の中期計画が作られ、独立行政法人はリセットを繰り返してきました。安定的な研究資金は実際には運営費交付金しかないのですが、この10年間で十数パーセントも減らされている中で、現場の人員が足りないだけでなくコンプライアンス強化など事務的な作業も増えて、研究現場は苦しくなる一方です。

また、研究所の人員構成がかなり高年齢化しています。若手研究者はポスドクや任期付き等の不安定雇用に置かれ、支援部門は派遣労働などの非正規雇用ばかりというのが実態です。将来を担う若手研究者や支援部門の若手職員をきちんと安定した雇用で人材育成をはからなければ国立研究機関の未来はないと思います。

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