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“さわやかな目覚め”は、どうすれば手に入るか?

池田純子=構成 大森大祐=撮影(石川氏)

年々、疲れがたまりやすく、朝、起きられなくなってきた……。そんな人は、帰宅後の過ごし方を見直してみましょう。

帰宅後、疲れをとる最も効果的な方法は?

「1日中営業で歩き回ってくたくた」「会食で得意先に気を使ってくたびれた」……。心身ともに疲れて帰宅すると、睡眠時間を少しでも多くとりたいがために、お風呂はシャワーですませたり、朝、出がけにシャワーを浴びるだけ、という方もいらっしゃるかもしれません。

私が入浴剤メーカーに勤務しているから言うわけではありませんが、疲労を回復させたいなら、睡眠時間を削ってでも、夜は湯船につかったほうがいい。理由は後述しますが、シャワーだけでは疲れはとれません。特に出張やゴルフなどでハードな1日を過ごしたときほど、入浴は絶対。ゴルフ場にもお風呂はありますから、短時間でもつかってください。


睡眠改善インストラクター 石川泰弘氏●温泉入浴指導員。バスクリン広報責任者として勤務する傍ら、疲労回復についての研究を行うため、順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科博士課程にも在籍中。『たった一晩で疲れをリセットする睡眠術』ほか著書多数。

とはいえ、実は、入浴だけでとれるのは精神的な疲れだけ。肉体的な疲れは良質な睡眠がないと解消できません。言ってみれば、入浴は「良質な睡眠のための準備の場所」なのです。ビジネスと同じで、この準備なくしてよい結果はありえません。

そもそも人間の体に体内時計があるように、体温にもリズムがあります。体温は朝の4~5時がいちばん低く、時間の経過とともに上がっていき、18~20時にピークを迎えます。それからだんだんと下がっていきますが、体温をスムーズに下げることで深い眠りが得られます。

睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があることは、ご存じの方も多いでしょう。レム睡眠はRapid Eye Movementの略で、「眼球がちらちら動いている睡眠」という意。眠りが浅く、このレム睡眠中に寝返りをうったり、夢を見たりします。ノンレム睡眠はその逆で、「体も脳も休み、ぐっすりと深く眠っている」状態。ノンレム睡眠とレム睡眠のサイクルは約90分で、眠っている間中、繰り返されます。

「疲労=壊れた細胞」を修復し、活性化させる成長ホルモンが多く分泌するのは、最初の2サイクル(180分)。つまり、疲労回復のゴールデンタイムは、「成長ホルモンが多く分泌される、最初の3時間」なのです。そして、成長ホルモンをしっかり分泌させれば、翌日に疲れを持ち越さなくてすむわけです。

ではなぜ夜に湯船につかる必要があるのか。湯船につかると血行がよくなり体温が上がります。血管も拡張しているので、熱放散しやすくなり、スムーズに体温を下げることができます。

風呂温度、入浴時間を意識しているか?

お風呂につかる3大効果は「浮力」「温熱」「水圧」です。「浮力」によって体が軽くなることで、日中緊張していた筋肉が弛緩します。適度な「温熱」で体が温まり、抱えていたストレス(交換神経)にブレーキがかかり、副交感神経が優位になるため、精神的な疲れを癒やします。また、お湯の「水圧」が心肺機能を高めるため、血流がよくなり、血液にのって食事により吸収された栄養、酸素が体の隅々まで行きわたります。回復への準備ができるのです。

ここで気をつけたいのが、お湯の温度です。冬なら40度、夏なら38度。入って心地よいと感じるぬるめの温度が、最も血流を促し、副交感神経を優位に保ちます。

血液が体を一周するのにかかる時間は約1分。15分つかれば15回程度、血液が循環します。額から汗が出るくらいを、入浴時間の目安としてください。お湯が熱すぎると長くつかっていられないうえ、交感神経が優位になってしまい、リラックスできなくなってしまうので、注意しましょう。

入浴剤は入浴の効果を高めるものですが、使用されている方は、違いも把握しておきましょう。“硫酸ナトリウム”が主成分の粉タイプは体を温める保温効果に特化しています。泡の出る“炭酸ガス”タイプは、お湯に溶けた炭酸ガスが末梢血管に入り代謝機能が高まります。体も温まり、血管が開き血行促進します。疲労回復効果を狙うならこれがお勧めです。乳液タイプは乾燥をおさえるのに特化しているので保湿中心です。自分の体調に合わせて使い分けると、より効果的です。

寝具や照明にどれだけ投資しているか?

お風呂上がりは読書をしたり、日記を書いたりしてリラックスして過ごしましょう。スマホやパソコンは液晶のブルーライトが、眠りを安定させるメラトニンの分泌を妨げるので避ける。カフェインが入ったコーヒーやお茶、冷たい飲み物、寝酒は良質な睡眠を妨げます。ホットミルクやハーブティなどを選びましょう。

照明の影響も大きく受けます。ブルーライト同様、強い光はメラトニンの分泌を妨げるため、白くて強い明かりより、暖色のやさしい明かりがお勧めです。光の強さや色を変えられる照明器具にして、朝晩を使い分けてもいいでしょう。就寝時は、暗い中で物の形がうっすら見えるぐらいの弱い明かりにして、目が覚めても強い明かりはつけないこと。視覚から得る情報は80%以上と言われています。就寝時に視覚からの情報が遮断されれば、脳が休まります。

寝具は、寝返りをきちんとうてることが大事です。寝ている間も動きやすいように、マットは肌と同じ硬さの“等反発”のものがベスト。枕は幅も必要です。高さや硬さを重視しがちですが、幅がないと寝返りのたびに目が覚めてしまうからです。寒い時期は掛け布団をかけがちですが、掛け布団を増やすと重くなるうえ、熱気は下から抜けるので、敷布団を重ねて体の下に敷くほうが温かくなり、よく眠れます。

成長ホルモンが最初の3時間に分泌されるのは先述のとおり。極端な言い方をすれば、忙しくて睡眠時間がとりにくいときには、とにかく湯船につかってリラックスした状態をつくり出し、3時間だけ深く寝る。これだけで体はかなり回復し、翌日は元気に動けます。

残念ながら成長ホルモンの分泌量は、年を重ねるごとに減っていきます。年々疲れがとれなくなってきたと感じている方は、特に入浴を習慣づけること。時間に余裕がある方は、朝の起床時間から90分ごと逆算して、寝る時間を決めると、レム睡眠で目覚められ、気持ちよく起きられます。お風呂で準備を整え、良質な睡眠でしっかり回復してください。

▼疲れがとれる帰宅後のタイムスケジュール
[夜]
●―入浴……就寝1時間前にぬるめに15分
  
●―就寝0分
●―30分
●―60分
●―90分
●―120分
●―150分
●―180分……眠りはじめの3時間で体はかなり回復!

  
  ・
●―270分……あとは90分区切りで起床時刻を決めよう
  ・
  ・
●―360分
  ・
  ・
●―450分

[朝]

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