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デジタル時代の盲点、世間話の驚くべき効果

 私たちがデジタル機器に夢中になって失われたものの1つに世間話がある。スマートフォンの画面ばかり眺める人が増え、よく知らない人と言葉を交わす機会は減っている。

 しかし、世間話に驚くべき効果があることはさまざまな研究で分かっている。2014年に学術誌「パーソナリティ・アンド・ソーシャル・サイコロジー・ブレティン」に掲載された研究によると、コーヒーショップのバリスタなどちょっとした顔見知りとの日常的なやり取りが日々の幸福感に貢献している可能性があるという。

 研究では被験者が「強い絆」で結ばれた人(友人や家族)、「弱い絆」で結ばれた人(知り合い)との日常のやり取りをそれぞれ記録。その結果、「弱い絆」を通じた交流がいつも以上にあった日は、帰属感や幸福感が特に強かったことが分かった。研究者は、金融資産に分散投資するの同様、さまざまな人と付き合いがあれば、人間関係に変化が起きてもその影響を受けにくいのかもしれないとみている。

 同じ14年に「ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・サイコロジー」に掲載された研究では、別の研究グループが知らない人同士のやり取りを観察。シカゴ地域のある駅を利用する通勤者118人に「電車の中で会話を始める」、「会話を一切控え、孤独を楽しむ」、「通勤時間をいつも通り過ごす」のいずれかを無作為に指定した。その後の調査では、見ず知らずの人と会話をするように指示された被験者は、誰とも話さなかった被験者より通勤時間をはるかに前向きにとらえており、充実感の点でもこの2つのグループの間に差がなかったことが分かった。

 この研究の共同執筆者でシカゴ大学ブース・ビジネススクールの行動科学教授、ニコラス・エプリー氏は「知らない人と話しても親しい友達と話したときと同じような効果はないかもしれないが、われわれはその重要性を過小評価している」と話す。

 世間話は人付き合いの潤滑油としても重要だ。タクシーの運転手と世間話をしたばかりなら、道を間違えたからといって運転手に食って掛かるのはかなり難しい。

 ハーバード教育学大学院の心理学者リチャード・ワイスボード氏によると、子どもは大人が親しい人だけでなく、周囲のよく知らない人をどう扱うか見て他人の感情を理解する能力を身につける。レストランの接客係に感謝の言葉をかけたり、郵便配達員に「こんにちは」と声をかけたりすれば、子どもはそれに注目する。透明人間であるかのように扱えばそれも見ている。世間話をすれば、親しい人とか知らない人といった違いを超えて「他人を人間として扱うことができる」とワイスボード氏は言う。

 世間話のコツをいくつか紹介しよう。

共通点を見つける

「How to Wow(人をあっといわせる方法)」の著者フランセス・コール・ジョーンズ氏によると、パーティーで一緒になった人と会話を始めるには「主催者とはどこで知り合ったのですか」と聞けばいい。人脈づくりのイベントでは「こういうイベントにはよくいらっしゃるんですか。これまで役に立ったイベントは?」と尋ねてみてはどうか。

慰めの言葉をかける

 乗っている電車が動かないときや長い列に並んでいるとき、ぐずる子どもを相手にしているときなど、イライラするような瞬間こそ他人に話しかけるチャンスだ。「子どもが寝てくれるまであと何時間?」なんていうユーモアが役立ちそうだ。

一つの話題をじっくり話す

「The Fine Art of Small Talk(世間話という芸術)」の著者デブラ・ファイン氏は、あれこれと色々なことを話すより、話題を1つ見つけてそれを掘り下げるよう勧めている。スポーツや家族、旅行といったテーマなら会話が続きやすい。

自分の無知を認めよう

 世間話は新しいことを学ぶ機会でもある。「What to Talk About(話すべきこと)」の共著者クリス・コリン氏によると、隣に座った人が再生可能エネルギー業界で働いていると言ったら、風力発電の仕組みが全く分からないと認めよう。「率直さは評価されるし、相手も同じように率直な対応をするだろう」とコリン氏は話している。

相手が興味を持つような質問をしよう

「ありふれた世間話が印象的な会話に発展する道は必ずある」とコリン氏は言う。「本当に寒いですね」と話しかけられたら、「これまでで一番寒かった経験は?」と返してみてはどうだろう。

会話は優雅に終わらせよう

「お会いできてよかった」と言って突然話を終わらせるのではなく、「お別れする前に」とか「あと少ししか時間がないので」という言い方をすれば、話を終わらせたいと思っていることをやんわりと伝えられる。ファイン氏からのアドバイスだ。

By JENNIFER BREHENY WALLACE

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