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私にとって売春は搾取ではなく、自立して働くための一つの手段でした

こんにちは!ビッグイシューオンラインの小林美穂子です。

暑い夏ももう終わりですね。今年の夏は短かったように私は感じていますが、皆さんはいかがでしょうか?さて、今日は夏の余韻に浸っているかもしれない皆さんにびっくり水のような記事をお届けいたします。カナダ発、セックスワーカーによるエッセイです。

私自身、「売春」という言葉をタブー視しており、さまざまな背景を見聞きする立場にいるにも関わらず、どうしてもやや複雑な感情が生まれてしまいます。そんな私の偏見やタブーを、作者のジョー・レッドウィッチさんがカキーン!と大空にかっとばしてくれたような、そんな心持になった記事でした。

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セックスワーカーだった雑誌販売者が、新売春法案に異議を唱える。 

「私は何年間もストリップクラブでセックスワーカーとして働いていました。私は自らの意思で意図的にこの仕事を選んだのです。私にとって売春は搾取ではなく、自立して働くための一つの手段でした」

モントリオールでセックスダンサーとして働いていた経験を持ち、現在、※ストリートペーパーL’Itineraireを路上で販売しているジョー・レッドウィッチは言う。
(※ストリートペーパー:ホームレスの人の仕事をつくり自立を応援するために発行される雑誌や新聞)。

彼女のエッセイは、物議をかもすカナダの新売春法案を受けて書かれた。新法案で売春を禁じてしまえば、むしろ恩恵を被るよりは犠牲を強いられる者が増えるのではないかと多くのセックスワーカーたちが危惧している。

ジョーは、この法律は「セックスワークの現実にそぐわない」として、より多くのセックスワーカーたちが「勇気を出して声を上げ、自分の考えを社会と共有してほしい」と願い、社会が売春に対して持つ偏見を跳ね返してほしいと考えている。彼女のエッセイはそうした勇気ある声の一例だ。    
By Jo Redwitch, L’Itineraire vendor

 私にとって売春は搾取ではなく、自立して働くための一つの手段でした   売春については誰もが自分なりの考えを持っています。私は何年間もストリップクラブでセックスワーカーとして働いていました。私は自らの意思でこの仕事を選んだのです。私にとってこの仕事は搾取ではなく、自立して働くための一つの手段でした。でも残念ながら、売春はいまだに偏見の汚名を着せられています。

「売春」は、時代や社会の変化と共に進化する言葉です。にもかかわらず、このパラレルワールド(異世界)について何も知らない一部の人間が判断を下すのです。そうした人々は、メディアなどで見聞きした情報を基準に価値観を形成している場合が多いのですが、メディアの「売春」の描き方というものは、総じて暗くていかがわしい側面に偏るものです。今ならたとえば、家出した若い女性がストリートギャングに搾取される、というような。

物議をかもす「新売春法案」 売春する権利を認める一方で買春は違法

カナダの新売春法をめぐり、セックスワーカーの権利を擁護する団体だけではなくセックスワーカーたち自身からも非難の声が上がっている。

「コミュニティーおよび被搾取者保護法案」が提出されたのは2015年12月。セックスワーカーについては部分的に合法として認められているが、売春に関係したさまざまな宣伝行為や買春行為については違法とされている。

政府の言い分は、この法律によってセックスワーカーは、より安全な労働環境を整備できるというものだが、売春に関する大半の要素が違法とされているために反発を受けている。

男女問わず、性産業で働いている人間の一部には、搾取され、暴力の被害を受けている人々がいることは事実だ。しかしその一方で、自営業者のように、妥当な条件の下で自由に働きたいと思っている人間もいる。

多くの人々は、この新法と、いくらでも広義な解釈が可能な点に不信の念を表している。そうした人々が不安視しているのは、この法律によって、結果的に犠牲者が少なくなるどころか、むしろ増えるのではないかという点だ。

矛盾だらけの新法案。無知と偏見がスティグマを加速させる。

私は、搾取されている状況が現にあること、またそうした事実について世の中に周知させる重要性は承知しています。しかし、常にセンセーショナルな方法で行う必要があるのだろうかと疑問に思っています。

「コミュニティーおよび被搾取者保護法」に新たに追加された条項がセックスワークの現実に適しているとは私には思えません。

無知と偏見はスティグマ(他者によって押し付けられた負の烙印)の燃料になるだけです。無理解という結び目をほどくには、セックスワーカーたち自身が勇気を出して声を上げ、自分の考えを社会に共有してもらう必要があるのです。

Tバックを穿きかえるほどの気軽さで、働く店を変えることもできた

今から20年ほど前、私はお金と自由を得るためにポールダンスをやっていました。毎晩、私たちは自分がまるでショーのスターになったような錯覚を抱いたものです。私は肉体的で芸術的な側面を持つポールダンスが大好きでした。

あなたの想像とは違うかもしれませんが、私たち同僚はお互いにライバルでもあり、同志として結束もしていました。お酒はふんだんに振る舞われ、マリファナの煙が常に漂っていた。

私たちのほとんどは、いわゆるポン引きと呼ばれるような売春斡旋業者とは関わりを持たずに単独で自立して働いていました。仕事の入っている日には「サービスバー」料として店側にまず25ドル支払う必要がありました。その料金を払うことで、私たちはその店で踊ることができるのです。

客は1曲分のダンスにつき10ドルを支払う。そのお金はピンハネされることなく、私たちのポケットにそのまま入りました。

代理業者と契約していた女性もいました。その場合は料金は店から支払われ、その何パーセントかを業者がピンハネしていました。

私たちが共に働いたのは、完全に自由を尊重してくれるきちんとした人々でした。Tバックを穿きかえるほどの気軽さで、働く店を変えることもできた。私がそれほど長く暗いライトの下で踊り続けたのも、そうした自由が心地よかったからです。

私が自分の人生を変えようと思ったのは、ラップダンス(チップを渡されたダンサーが客の膝の上で踊るセクシーなダンス)が合法化される直前でした。法律の改定によりラップダンスはショーとみなされるようになりました。

私は、ストリップクラブで働き始めました。クラブにはプライベートブースがあり、非公式に売春が許されていました。私たちは時給ではなく、サービス料でお金を得ていたので、できるだけさっさと済ませなくてはなりませんでした。まさに「時は金なり」で、そうした環境下では自分独自の技術をつけなくてはなりませんでした。

セックスダンサーとしての仕事。社会にはこのような仕事が必要

私がクラブの娼婦、つまり「セックスダンサー」だったときは、相手を誘惑する術に長けていました。どれだけ素早く相手のことを見極め、どのように相手の話に耳を傾けるか。私はこれ以上はやらないという限界を自分に設け、判断力にも優れていました。しかし何より私が精神的ダメージをそれほど受けずにうまくやれたのは、私が客に敬意を払っていたからです。また、これがれっきとした仕事であることと割り切り、私生活やプライベートな恋愛とはきっぱり分けて考えることを忘れないようにしていました。

この仕事を辞める頃、社会では自分のような女性たちが必要であると私は気付いたのです。客の中には奇妙なファンタジーを持っている人もいて、そういう人たちはその欲求を満たすための場所を必要としている。セックス依存症の人々、誰かと親密な関係を持ちたがらないか持てない人々にも性的な欲求はある。

私は、自分の人生におけるこの部分について話すことを誇りに思っているわけではないですが、自分がしたことを恥じてもいません。売春はきついです。私にとっても、他の多くの人たちにとっても。でも、売春をしたからといって世界が終わるわけでもない。自分の性器で何をしようと自由、という社会にはならないのでしょうか。

稼ぎで家族を養う者、お店を持つ者、老後のために貯金をする者

売春をしている期間、苦悩を目にしたこともありますが、一方でこの仕事の稼ぎで子どもや母親を養ったりするのも見てきたし、老後のために貯金してこの世界から足を洗い、素敵な家を購入したり、宝石店やチョコレートショップ、ブティックを開いたりするのを見てきました。

私なりの意見ですが、売春というサービス業を完全に規制したり、この世から無くすことは不可能です。変えられないものは受け入れるしかないのではないでしょうか。

ジョー・レッドウィッチは、カナダ・モントリオールの地下鉄駅でL'Itineraireを販売している。
Courtesy of L'Itineraire / INSP.ngo

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