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女性を跳ね返す「壁」破るには=サンドバーグ氏

女性が自分にふさわしい役割を求めると周囲の反感を買うのは、性別についての無意識の思い込みのせいだと、サンドバーグ氏は話す。
女性が自分にふさわしい役割を求めると周囲の反感を買うのは、性別についての無意識の思い込みのせいだと、サンドバーグ氏は話す。
Photo: Facebook


By SHERYL SANDBERG

 フリーの映画監督が最近、ある交渉を始めたときの経験を語った。彼女はデータや証拠をそろえ、売り込み方を練習し、準備は万端だった。それでも自分がそのプロジェクトに適格であると単刀直入に言う代わりに、こう切り出したという。「率直に言いますが、私はこれから交渉を始めます。調査によると、その結果(女性である)私に対する印象は悪くなるそうです」

 彼女は正しかった。女性が自分にふさわしい役割を求めると、たいていは社会の抵抗に遭う。そして「偉そう」「攻撃的」と決めつけられる。だから彼女は偏見のスイッチが入る前に、先回りするという解決策を思いついた。それは有効だった。

 女性の社会進出を支援する非営利団体「リーンイン・ドット・オーグ」とコンサルティング大手マッキンゼーは、米国企業132社を対象にした女性の地位に関する調査報告書「Women in the Workplace(職場における女性たち)2016」を9月27日に発表したが、ここでも「野心的すぎる」女性への否定的評価を問題点の1つに挙げている。

 昨年の報告書は、経営幹部職における男女差が解消されるにはあと100年かかると結論づけた。1年後の今も大きな進展はない。それは女性に不利なだけでなく、米国の企業や経済にとっても好ましくない。企業のあらゆるレベルで女性リーダーは依然少数派であり、経営上層部では30%にも満たない。女性は早い段階で「ガラスの天井」にぶつかる。最初の管理職でも男性に比べてはるかに昇進のチャンスが少なく、地位が上がるにつれて一段と形勢が不利になる。この差の主因は自然減でないこともわかった。実際、女性の平均離職率は男性とほとんど変わらない。

 また、想像に難くないが、有色人種の女性ではこうした問題がさらに顕著となる。一番下の管理職で有色人種女性が占める比率は12%であるのに対し、白人男性は45%だ。役員レベルになると、有色人種女性の比率はわずか3%と、白人男性の71%とは圧倒的な差がある。幹部を目指すと明言する女性は、白人よりも有色人種のほうが多いにもかかわらずだ。

 一方、心強い事実も明らかになった。最近は女性も男性と同じくらい頻繁に昇給や昇進について交渉するようになった。女性は求めないという固定観念への挑戦だ。驚くまでもないが、昇進を求める女性は、そうしない女性よりも実際に昇進する可能性がずっと高い。それでも平均すると、女性の昇進の見込みは低く、依然として不利には違いない。

 もちろん問題は、女性の要求に反感を抱きやすい人々の固定観念をどう打ち破るかだ。交渉する女性は、そうでない女性に比べて「威圧的」「出しゃばり」「生意気」といった人物評価を受けることが67%多かった。一方、男性が交渉してもそうした評価を受けにくい。

 こうした反感を買う理由は、性別に関する無意識の思い込みのせいだ。一般に男性は自己主張が強く、自らの利益を守ろうとし、改善を求めて働きかけると思われている。だからそのように行動しても不都合は生じない。しかし女性は自己中心的と思われぬように集団で行動し、協調性や面倒見の良いところを示し、自分よりチームを優先しなくてはならない。だから女性が自分の利益を主張すると、周囲はたいてい否定的に受け止めるのだ。

 問題は「要求」に関してだけではない。女性は仕事を始めた直後から厳しい戦いに直面する。そもそも目上の支援者との接点が相対的に少なく、パフォーマンスに関するフィードバックを得る機会が少ない。私たちの調査結果によると、女性に多いのは、やりがいのある課題を与えられず、自分のアイデアや貢献ぶりを認められにくいという答えだった。その意味では、自分の性別ゆえに昇給や昇進が難しいと考える女性が男性の3倍近くいるのは不思議ではない。

 これは女性だけでなく、すべての人にとって重大な問題だ。調査結果によると、男女平等は個々人にとってと同じくらいビジネスにも有益だからだ。多様性に富んだチームや企業は、より優れた成果、高い売上高や利益を生みだし、誰にとっても大きなチャンスをもたらす。

 企業のリーダーは正しい行動をしたいのだと私たちは信じる。そして多くの企業がこの調査への参加を決めたことは大いに励みとなる。こうした企業の78%が、最高経営責任者(CEO )の優先課題の中で「性別の多様性」がトップ10に入ると回答した。ただ、企業の問題解決への意欲は強いものの、それを実行する段階で苦労しているようだ。性別の多様性を推進するためにすべきことがわかっていると答えたのは、マネジャーの半分にとどまった。また、偏見のある言動をマネジャーがそのつど注意していると答えたのは、社員の4分の1だった。企業の93%が雇用や昇進に明確な基準があると答えたのに対し、その通り実行されていると答えた社員は57%にとどまった。

 この報告書で改めて気づかされるのは、これからの道のりは遠いということだ。

 企業が今すぐ講じるべき措置は、まず進捗状況を把握することだ。大半の企業は雇用や昇進における男女比のデータ取っているが、目標を設定した企業は35%に満たない。明確な目標が存在しなければ、進歩は一段と難しくなる。

 さらに企業はより確固たる論拠を提示し、性別の多様性がなぜ重要なのか、どのような恩恵をもたらすのかを社員に説明する必要がある。性差別をなくすトレーニングに投資するのもよい。女性の日々の仕事内容やキャリアアップに影響するさまざまな決断を下すマネジャーの研修は特に重要だ。また、新入社員から経営トップまで巻き込んで固定観念についてオープンに語り合い、女性がリーダーになるチャンスや、年長者の支援を受ける機会、彼女たちの貢献ぶりの認知度を高めるとよい。

 女性は粘り強く交渉を続けることだ。それが完全にありふれたことだと思える日まで。また、女性がもっと多くを求めるのが当然だと思える日まで。

 一歩踏み出す女性が増えているのは確かだ。職場がそれを押し戻すのをやめれば、私たちはもっと先まで進めるだろう。

 (著者のサンドバーグ氏はフェイスブックの最高執行責任者で、リーンイン・ドット・オーグの創設者。リーンインのレイチェル・トーマス代表が執筆に協力した)

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