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中国人は幸せか? 不幸せか? チャイナドリームの行方 - 中村繁夫

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 今月は北京、西安、宝鶏、香港を3泊4日の弾丸出張で回った。北京では25年以上のお付き合いのある老朋友の新居に招待された。今回は古い友人のチャイナドリームについて書いてみたい。

チャイナドリームの象徴は何か?

 老朋友の李先生は国営企業で最高峰の研究機関の教授だが、今や関連子会社を上場させた中国一流の企業経営者でもある。今回訪問した先生の新居マンションの価値は今や5億円以上ではないだろうか。まさにチャイナドリームの象徴であるが国から安く払い下げられた自宅のマンションは北京の中心部にあり東京でいえば青山のようなロケーションにある。

 仕事場はすぐ近くで職住接近の恵まれた場所である。部屋は5LDKで250平米の広さで寝室が4つあって、広いリビングにキッチンもキラキラ光って素晴らしい。トイレが3つあって、最上階の7階にあるから眺望も最高だ。先生のマンション棟は研究所の一握りの幹部専用である。李先生は今年60歳の還暦を迎えるので、通常ならば今年一杯で退職して後は年金生活者になる予定だったが特別栄誉教授として、さらに5年間は研究機関の経営を行うことになった。こうした待遇は一般職員ではありえないのだが李先生の評価は学術面だけではなく経営者としての実績が評価されたものである。


広いリビング

 昔の国営企業幹部の官舎と云えば狭くて国際比較をすると日本の公務員宿舎と同様に「ウサギ小屋」と形容されても仕方のない代物だった。それが今や様変わりである。政府の指導もあって10年ほど前から福利厚生のために職員の賃貸住宅を次々と建設したのである。その後、長年勤めて一定の条件を満たした職員にはその住宅を格安で払い下げられるようになった。その住宅価格もこの10年で5倍から6倍くらいに値上がりして住宅バブルの結果、幹部職員は全員の資産は膨れ上がったのである。これは日本でも高度成長期には資産インフレで住宅価格がバブルで数倍になったのと同じ現象である。

豪華マンションが支給された背景


幹部マンションの外観

 同時にこの1年ほどの間に定年が近くなった幹部職員には特別に恩給の一部として新築の豪華マンションを払い下げることになったのだ。聞くところによると市中相場の8割引きの格安価格で払い下げされたのだから、まさに「濡れ手に粟」とはこのことである。

 李先生は国営の新材料研究機関の指導者であり特にレアアースの開発技術では中国No.1である。5年ほど前に上海株式市場に子会社を上場させて株価が上昇して企業価値が上がった結果、上場企業としての含み益は等比級数的に膨れ上がった。ところが給与については国営企業であるから国家ルールに従って給与水準を欧米並みに引き上げる訳にはいかない。そこで、福利厚生について「お手盛り」の大盤振る舞いをすることになったのである。日本のように会計監査院のような組織が横やりを入れる訳でもなく、長年の貢献に対して応分の配慮がなされたのである。

 私の多くの中国の国営企業の友人たちは社会主義経済だから残念ながら給料は欧米並みという訳には行かないが、住宅資産に関しては明らかに国際水準を超えていることは間違いない。

中国の金持ちと貧乏人の収入格差は?

 スイスの銀行「クレディ・スイス」の報告2015年によると中国の富裕層の保有資産総額はアメリカに次いで世界第2位の22兆8000億ドルとなったらしい。日本は世界第3位に転落し、19兆8000億ドルと僅差だが中国の後塵を拝したことになる。

 昔の友人がチャイナドリームを実現したことはご同慶の至りだが、僕にとってみるとそのスピードが速すぎることが気がかりである。なぜならば大半の中国人の生活は貧困で一部の富裕層だけがますます金持ちになって行くからだ。僕がこれまで取引してきた中国の友人達は都市部に生活しており特別に選ばれたエリート層である。

 一方、地方では年間に20万件にも及ぶ紛争や暴動が発生していると聞く。その原因は格差社会に対する不平と不満が渦巻いているからだ。中国人民大学の国民の収入差に関する調査によると中国の10%の富裕層が何と80%の財を占めており富裕層と貧困層の収入格差は40倍になっているという。

ピョンピョン、パチパチ、ドンドンで儲けた配慮貿易とは?

 こうした中国の国営企業の富裕層だけが儲かる仕組みを見ていると、僕が中国貿易を始めた1970年代の中国の配慮貿易で大儲けした友好貿易商社の存在が思い出される。中国共産党と深い関係のあった日本の友好貿易商社さんたちは「ピョンピョン、パチパチ、ドンドン」を特別価格で輸入していたのである。この「ピョン、パチ、ドン」を知っている人はかなりの中国通であるが何のことか判るだろうか?

 「ピョンピョン」とはウサギ肉の輸入、「パチパチ」とは天津甘栗の輸入、「ドンドン」とは花火の輸入のことである。どうやら当時は日本の友好貿易商社が配慮物資で大儲けした利益を社会党に献金していたのではないかと勝手な想像をしている。

 僕の前職の蝶理は友好商社ではあったが、当時の社会党系の友好商社ほどのぼろ儲けをした訳ではなかったので、ひとこと言い訳はしておきたい。それでも古典的中国食品の輸入などでは配慮物資の輸入枠の配分を貰っていた。「魚ごころあれば、水ごころ」が中国的な社会習慣だから、それに対して誰も不公平だとは言わないのが中国のおおらかなところである。さて、話が横道にそれたので元に戻したい。

中国人の海外出張の予算は少なかった

 25年前の国営企業の出張予算は国家の規定があったので客先訪問をするにしてもタクシーの利用すらできなかった。宴会の時に李先生の宿泊予算が限られていたので安いビジネスホテルを探したが、なかなか見つからなかった昔話が出てきた。今は懐かしい古き良き思い出である。それでも海外出張に行けるのは一握りのエリートだけだった。当時の中国は貿易を振興して外貨を稼ぐために中国元を安くコントロールする必要があった。中国元の為替レートを国家が安く誘導していたので、日本人にとっては中国出張時のコストは何でも安かったが、中国人の海外出張は厳しく管理されていたそうだ。今や中国人の「爆買いツアー」が有名になって海外不動産まで「爆買い」が流行っているというから隔世の感がある。

 でも、考えてみると昔はみんなが貧困だったから別に恥ずかしくもなんともなかった。我々、日本人商社マンだって同じ経験は沢山やっている。

 国民の不満を助長しているのが一般の中国人が10%の金持ちとの格差がますます開いていくところにある。農民戸籍しか持てない地方の貧困層は大都市で豊かな生活をしている富裕層の暮らしぶりを毎日テレビで見るのだから暴動が起こるのも当たり前だ。

 しばらく前に尖閣諸島を日本政府が国営化した時に中国全土で暴動が発生した。ところが暴動が一段落した後には共産党政府に対する不平不満が爆発した。政府が国民の不満の目を外に向けさせるために日本を目の敵にした反日報道を繰り返しても、最終的には大衆の不満と怒りは格差社会に向かうのである。

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