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先生、「名刺」を渡しましょう

■「教員の多忙さ」という「永遠の問題」

Facebook友達の誰かのつながりから、久元喜造神戸市長のブログへ飛び、「教員アンケート~先生の悲鳴が聞こえる」というタイトルの記事(9月9日)を読んだのだが、教員の長時間労働の原因として、教育委員会への対応、保護者対応、会計処理、研修参加、コンピュータ/情報システム対応、膨大な配布物、部活始動等、たくさんの要因があげられている(教員アンケート~先生の悲鳴が聞こえる)。

市長は「これらの多忙化要因をひとつずつ洗い出し、具体的な解決方策をたてることが求められます」と結ぶのであるが、神戸市の対策はここではとりあえずおいておき、僕はあらためて「教員の多忙さ」という「永遠の問題」について考えてしまった。

神戸市長が教員アンケートから抽出する問題をもう一度見ると、それらは「授業を構成する」という教師らしい仕事ではなく、その他のたくさんの仕事だ。教委対応、保護者対応、会計、パソコン、研修、資料作成、クラブ始動。

授業を行う、言い換えると「知識をわかりやすく子どもに伝える」という「教師の本業」以外に、これだけのことを教師は行なっているそうだ。

だから忙しい。

これら多忙の原因を普通の会社に当てはめていくと、営業(教委・企業回りや保護者対応)や財務(会計・パソコン処理)や総務(会議運営・資料作り)や各「事業」運営(授業やクラブ部活)などになる。これをさらに小さい会社にたとえて言うと、ほぼ「社長の仕事」と重なる。

また、こうした何でも屋さんたちは「ジェネラリスト/総合職」とも呼ばれ、通常は数年単位で各分野を移動しつつ会社の全容を把握していくのであろうが、教員の場合は新卒採用1年目からスーパージェネラリストであることを求められる。

■ジェネラリストとスペシャリスト

だから教員の時間に余裕をもたせるためには、1.普通のジェネラリスト養成のように数年単位で各分野を体験させるか、2.思いきって各分野の「スペシャリスト」に絞り込んでしまうかの2つの方法が考えられる。

手っ取り早いのは2なのだが、職員会議の書類ばかりを生涯作り続けるのであればそれは教師というよりは事務員だ。財務仕事もそればかりではもはや教師ではない。クラブ始動ばかりでは(現在も私立高校の野球部の監督などはそうなのだろうが)プロクラブ監督になる。

逆に、授業だけのスペシャリストははたして「教師」と呼ばれる存在として定着できるだろうか。その場合は「授業師」「学校講師」等の別名で呼んでもいいのかもしれない。

すべてがスペシャリスト化した場合、「教師」と呼ばれる存在がいなくなる可能性もある。

つまり「教師」とは、教育ジェネラリストの別名であり、総合職育成と同じように、30代なかばまでに何年かかかって各分野を体験させ、やがてはミドルマネージャー化していく昇進スタイルが理想のような気もする。

管理職に関しては、校長を格上げして予算と人事権を与えたい。そうすると、なかばブラックボックス化しているように外部からは見える教育委員会も大幅縮小していくことになるだろう。思い切って教委は消滅させてもいいかもしれない。

また、労働組合に関しても、校内組合に限定化して、各校ごとの条件交渉で漸進的に労働条件を上げていってもいいと思う。

まあつまりは、学校が「普通の企業」になったら、「教員の悲鳴」議論はなくなるのではないかという、ある意味「夢想」だ。

現実にはありえないが、 児童虐待や発達障がいも大幅に増加し普通の問題になったいま、教師が新卒でいきなりジェネラリストとして動くことは無理なことは明白だ。

むしろ、現在の先生たちはよくやっている。

■「社会人としてアンバランス」

よくやっているというか、「社会人としてアンバランス」だというのが僕の先生たちに対する感想で、それはたとえば「名刺」ひとつとっても言える。

社会人としては驚く事実なのであるが、ほとんどの先生たちは、外部の人々との初対面時に自分の名刺を渡さない。

それは、現在の学校にはミッションとして職員の秘密主義がある等の明確な理由があるわけではなく、初対面時に「まあ名刺くらい渡さなくてもオッケーだろう、外の人たちは許してくれるだろう」という雰囲気が職場全体に漂っているとしか言いようのない「ゆるさ」からくると僕は想像している。

僕自身は徹底的な「変人」なので、名刺なんてホンネではどうでもいいのだが、日本においては職場慣習として名刺交換が求められるため郷に入れば郷に従っている。だから、両手できちんと名刺交換する演技を行なう。

教員の「名刺の無さ」は、言い換えると社会への甘えであり、学生気分が抜けていないことの証明でもあるが、繰り返すが僕としてはどっちでもいい。だから、不登校支援の連携仕事等で毎日会う、たくさんの「名刺を用意しない先生たち」に対しては別にな~んにも思わない。

が、日本社会はせせっこましい。名刺を出さないだけで内心では怒っている/呆れている人々も大勢いるだろう。

「忙しい」と嘆くことが許されるのは、名刺交換程度の社会人であれば誰でも行なう行為をこなせるようになってからだ、と内心では思う人々も多いと思う。

だから、先生たちはある意味「惜しい」。

先生、初めての挨拶のときは「名刺」を渡しましょう。演技でもいいので。★

※Yahoo!ニュースからの転載

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